第35話 初めてのパーティーバトル
朝食を食べ終えて俺とグリセルダは本日の行動を打ち合わせする。
詳しい予定は決めない。
どこに何があるか、出口までどのくらいかかるか予測できないからだ。
「下層に行く前に、第三層の洞窟ってあんまり植物とかなさそうじゃん」
「そうだな」
「燃えるものの確保、どうしよう」
流石に、こんな場所の生き物を生食したくない。絶対火は通したい。
「魔石があれば私がどうにかできるが……これだけ倒しても見つけたことはないのだ」
と、グリセルダが言う。えっ、魔石?
そういえばコボルドとかスライムの魔石、俺持ってたな。
「あ、魔石あるぞ。売れるかもと思って取っといたやつ」
俺はカバンの中をゴソゴソあさって拾った魔石を見せた。合計10個あった。
「おお、こんなに……どこで拾った?」
「え、この内7個はグリセルダが倒した敵の山から拾ったやつだけど……」
「私が見落としていたのか……?」
「スライム以外の魔石って心臓あたりにくっついてるから、ちゃんと捌かないと落ちないよ」
「そうだったのか、知らなかった」
そう、俺もあると鑑定に出たからちゃんと捌いて採集したが、知らなかったら探さなかった。鑑定スキル様々である。
「じゃあこれ持っといて」
俺はグリセルダの手の上に魔石をじゃらじゃらと全部のせた。
「お前、これは売れば結構な金になるが、いいのか……?」
「まず生き延びないと。ここじゃ金に変えられないからな」
「ああ、確かにそうか」
グリセルダはバツの悪そうな顔をしていた。そう言う顔も可愛い。
レアだ、スクショしたい。魔石なんてどうでもいいよ、こういう顔が見られるなら。
「魔石があれば相応する魔力を込めれば熱源などになる。燃やすものを探さなくても煮炊きは出来るようになるだろう」
「すげー、便利だ! 魔石って他に何が出来るんだ?」
拾ったは良いものの、鑑定しても『魔石』としか出ないし、おっさんのカバンの本にも何も書いてなかった。魔石をどう使うのか常識的すぎて書かないという感じなのだろうな。
でもそんな常識、俺には通用しないからな! 悪い意味で!
ずっと気になってたのでスッキリした。
「光の魔力があれば怪我の治療なども出来るが、私は光属性は持っていなくてな。あとは、水を出したり、風を吹かせたり、魔力に変換して魔法を使うことも出来る。使い手次第だ」
「便利すぎんか」
「だから高価なのだ」
なるほど……。公爵家令嬢グリセルダが高価だ、というのだから、本当に高価なのだろう。そして、俺には持て余す代物であることが解った。
発動させる魔力はないし、レベルが上っても魔力に振る予定はない。
マジでグリセルダに貢いだほうが効率いいなこれ。グリセルダも喜ぶだろうし。また見つけたら拾っとこ。
そして、お互いのスキルなどについても相談した。ふたりともポイントを余らせまくっている。結局、やはり数回戦ってみてから、ということになった。
このゲーム、少なくともまだ発売されてないから、確実な攻略法が存在しない。地雷だろうがなんだろうが使って試していくしかなさそうだ。
そうして、小一時間ほど経って、俺達は泉を出発することにした。
地図を見ながら洞窟方面出口に向かって進む。薄暗いが、道は硬い石に覆われており、ぬかるんだり滑ったりする心配はなさそうなのが救いだ。
洞窟方面に行くたびに敵が徐々に増えていく。前回はできるだけ【隠密行動】で隠れて動いたが、今はグリセルダがいる。どうやって戦うのが正解だろうか……。
「ギギギギギ!」
「アオーン!!!!」
通路の大分奥、遠くの方から声が聞こえてくる。
「コボルドとゴブリンが群れているっぽいな」
「俺、ちょっと様子見てくる」
「頼む」
俺は隠密で様子を見に行くことにした。
「【隠密行動】!」
わかりやすくスキル名を叫んでおく。スキルを発動と同時にグリセルダの視界から俺が消えたらしく、グリセルダが俺をキョロキョロと目で探していた。
俺は【隠密行動】と【幸運のおまじない】を併用しつつ、角を曲がった先を偵察する。
すると、ちょっとした教室くらいの広場があり、そこにゴブリンとコボルドが大量にいた。10匹以上ずついるから、ちょっとした学校のクラスくらいの頭数がいる。
地図を見るとここは必ず通らないといけないポイントだ。迂回はできない。
俺一人ならスルーできるが、グリセルダもいる。まず相談しよう。
「ただいまー。ちょっとした部屋くらいのサイズの広場にゴブリンとコボルドが10匹くらいずついた」
「ふむ、少し多いな……一匹ずつ倒してもいいが、面倒だな」
「そういえばグリセルダ、取ったスキル何だっけ?」
そういえば、肝心の質問をし忘れていたんだよ。危ねえ。
「【パワースラッシュ】と書いてあるな。3秒以上魔力を溜めて放つと剣の薙ぎ払いでダメージが生まれるらしい。以上、というのはつまり5秒や10秒だと威力が変わったりするのか?」
「あー、それな。変わるけど、それまだ一回も使ってないだろ。熟練度をあげるとタメ時間の影響が大きくなるけど、熟練度が低いうちはおまじない程度だな」
「なるほど、使えば使うほど成長するのか」
「グリセルダは元のステータスが強いから、それでも強いと思うけどな」
パワースラッシュは俺も取ろうと一瞬思ったんだが、ダメージ判定が力、器用さ、魔力だったから俺のステではダメージソースにならなさそうなので止めた。
初期から取れるスキルではあるんだが……。
相談の結果、グリセルダのスキルを上げる意味も含めて数匹ずつ俺がタゲ取りをして、スキルを撃ってみることにした。
パワースラッシュは剣技系のツリーの基本スキルだが、おそらくこれはステータスとスキルレベルを伸ばすことによってロマン砲に化ける可能性もある。
育てておいて損はないはずだ。
打ち合わせ通り、俺は【隠密行動】でギリギリ端っこのモンスターの視界に入る距離まで近づき、そこから小石をぶつけてタゲを取る。
いい感じに数匹だけが怒って俺に襲いかかってきた。よしよし。
数匹に追いかけられているが、第一層で追いかけられた鹿よりは大分遅いので余裕だ。ゴブリンの槍も、コボルドの木剣も俺は身軽に回避していく。
うーむ、これぞ回避タンクの醍醐味だよなあ。
「グリセルダ、今だ!」
「承知!」
後ろにまとまってやってきたゴブリン数匹とコボルドを睨みつけるグリセルダ。数秒して、グリセルダの持つサーベルが光り輝く。俺はタイミングを合わせて、斜め前に飛んで射線を避ける。
「【パワースラッシュ】!」
まばゆい光とともに、剣戟の衝撃波がモンスターたちを襲う。哀れなモンスターたちは射線に合わせて体左右に分かれて地面に倒れ落ちた。
「……えぐい威力だな」
「私も自分で驚いている」
当たったら死んでたな……良かった、回避タンクにして。




