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無職のおっさん、幼女にTSして悪役令嬢とダンジョン最下層を目指す  作者: 芥部


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第30話 屍山血河は何のため


「それにさ、何なの、この死体の山」

「それか……」


 俺はグリセルダに、通路にあふれる死骸の山の説明を求めた。

 おそらく周辺の敵は皆グリセルダが狩ってしまったのだろう。

 お陰で俺はレベリングの相手が居らず正直困っている。理由の説明位はしてもらっても許されると思う。


「私は気がつくとこの上の層にいて、この地下迷宮の最下層に生きてたどり着けという啓示だけがあった。そこで上層を抜けてここに来たのだが……寝られぬのだ」

「ベッドがないから寝られないとか?」


「いいや。私は寝台などなくても寝られる。寝ようとすると虫やネズミは……まだいい。睡眠するたびにスライムが顔に落ちてきて、一睡もできぬのだ」

「あー……」


 そういえばスライムを鑑定した時に出てたな。寝ている人間の顔にくっついて窒息死させるみたいなこと。

 俺はもらった『結界チョーク』のお陰で爆睡できたけど、そんな便利グッズがなければここで寝るのはさぞかし苦労することだろう……。


「偶然だが水辺に群がる化け物共を討伐した際に気がついたのだ。群がる死体がある内はスライム共は寝起きを襲ってくることはない、と」


 あー、なるほど……。


「それに、敵を倒しているうちにたまに謎の光が発生するのだが、そうすると少し空腹感などがマシになるのでな。敵を殺してここに座って仮眠して、を繰り返していたのだ」


 そういやレベルアップ時にMPも全回復してたが、空腹や口渇も状態異常ならそれも全回復するのか。納得だ。


「それ、最近光発生してなかったんじゃないか?」

「明察だな」

「レベルが上がりやすいのは最初だけからな」


 そういうと、グリセルダはよくわからない顔をしている。そもそもこの令嬢、スキルやレベルの概念を理解しているのだろうか。


「時が経つにに連れ光りにくくなってきた、ってことだな」


 ふと、俺はあることを思い出す。そうだ、俺は水汲みもだが、レベリングもしないといけない。


「なあ、この死骸に群がってるスライム倒していいか?」

「構わん。なにか目的でもあるのか?」


「こいつら、食べた相手を経験値として吸収しているんだよ。スライムを倒せば俺もレベルが上がるってわけだ」

「……良くわからんが好きにすればいいだろう。先程の粥の礼にもならぬが」


 俺はグリセルダの言葉に甘えてスライムでレベルを上げることにした。


 モンスター辞典によると、モンスターを倒した後にその死骸を吸収したスライムを倒すと、吸収されたモンスターの1割ほどの経験値が手に入るらしい。


 近くに嬉々としてダンジョンウルフの死体を溶かしているまるまると太ったスライムがいたので、俺はサクッとナイフでコアを刺す。すると、2500もの経験値があった。


 俺は夢中でその辺のスライムを虐殺し、あっという間にふわっと光を放ってレベルが14から16に成長した。


 ステータスはもちろん幸運に振った!


 マゾゲーも悪くないが、こういうぬるいレベリングも悪くない。というか、この状況だとレベリングはぬるくないとやってられない。他がハード過ぎる。


「なるほど、雑魚だと思って無視していたがそのスライムとやらでもその光は出るのか」

「出るんですね、知らなかっただろ」

「そうだな、この迷宮には知らないことばかりがある」


 グリセルダはいい感じに緊張が溶けて、穏やかな顔をしている。学園にいたときの、よらば斬ると言わんばかりの雰囲気が嘘のようだ。


 飯を食ったからだろうか。ただ、返り血が服や顔、髪の毛についている。殺人犯のようでちょっと見た目が怖いな。


 俺はカバンからガサゴソと手鏡と手ぬぐいを取り出してグリセルダに渡した。


「あのさ、容姿の話は失礼だと思うけど、今のあんたすごい格好になってるぞ。俺、あっちの角にいるから顔でも体でも少し拭いたほうがいいと思う。水もあるし」


 グリセルダは渡された手鏡で自分の姿を再認識したようだった。顔や髪にまで黒く固まった血がこびりついている。


「ああ、なるほど……これは我ながら酷いな。チケンとやら、重ね重ね済まない。少し手巾と鏡を借りるぞ」


「俺はそこ曲がった角で本を読みつつ敵が来ないか見張っとくから、終わったら呼んでくれ」


 俺は身長1メートルちょっとの幼女のような姿だが、声と中身はおっさんだ。一応席は外しておくのが礼儀だろう。あと、一応無防備なところに敵が湧いてもアレなので見張っておかないとな。



 水音と衣擦れの音が聞こえるが、鉄の精神で聞かなかったことにする。


 気を紛らわすために予習としてモンスター図鑑を読む。

 この下層には大トカゲや、巨大な蜘蛛とかがいるらしい。一番嫌なのは蜘蛛だな。

 巨大な蜘蛛の何が嫌かって、巣を貼る糸が透明で、しかも光沢がなく目につかないらしい。流石に完全回避出来ても、うっかり糸に絡め取られたら一巻の終わりだからな……。


 三層で他に要注意なのは四層に続く入り口辺りにいるらしい、アンデッドナイトらしい。なんかすごい確率で人が死ぬとか書いてある。

 二層の出口にも巣を作るオオカマキリみたいのがいるみたいだし。


 

 うーん、【隠密行動】と【幸運のおまじない】以外にもそろそろスキルを取ったほうがいいかも知れない。


 ターンアンデッドとか使えれば強そうだが、スキルツリーを辿ってみると賢さと魔力と幸運が必要っぽくて前提スキルも多い。あまり俺向きじゃないな。

 どんなスキルにするべきか……。


 スキルツリーを見るついでに時間を見ると、もう13時だ。あれから一回も清野さんや吉田さんからの連絡はない。これはまあ、一週間立てば結果は分かるだろう。


 あきらめてゲームに集中するか……。

 このゲーム割と楽しいし、気になる人物グリセルダもいるしな。


 そういえば三層に行く前に燃やせるものの確保もしなくてはいけない。洞窟の中に可燃物がなかったら辛いし。

 なんか枯れたツタとかあったら拾いたいところだ。あまりにも本格的VRダンジョンすぎるのも考えものだな。


 俺はもうちょっと簡便な、モンスターを一狩りしに行くアレとかくらいの本格さを期待していたのだ。もし、ゲーム会社になにか言う機会があればこういう無駄にリアルな本格さは要らないって伝えたい……。


「チケン、居るか?」

「ほーい」


 どうやら身支度が終わったようだ。

 本を仕舞い泉の前に行くと、俺の記憶の中にあるグリセルダがそこにいた。軍服やマントの返り血まではどうしようもなかったようだが、顔や髪は整えられていた。


「見苦しい姿を見せて済まなかった」


 そう言って、きれいに洗われて畳まれた手ぬぐいと手鏡を返してくれた。手ぬぐいはすっかり乾いていた。


「この量倒して返り血なしは無理だろ。しょうがない」


 ダンジョンウルフだけで20匹以上積み上がっている。これで血を浴びないようにするのなら魔法や罠、毒餌なんかが必要になるだろう。


「貴公は何故こんな場所に?」


 二人称が賊から貴公にレベルアップしている。ちょっと嬉しい。


「仕事だよ」

「……こんなところに仕事などあるのか?」


 嘘みたいだよな。仕事バイトなのは真実なんだが……。


「ここで一週間過ごすってだけの仕事だよ。それと一層で出会ったおっさんに頼まれたことがあるから、せっかくだし最下層に行ってみるつもりだよ」


 グリセルダは怪訝な顔をした。


「一層に人などいたか? 誰も見なかったぞ」

「草原のなんもないところに黒いモヤの亡霊のおっさんがいたの見なかった?」

「草原? 第一層はこの迷宮と似たような迷宮だった。ただ、石の材質が違うな。ここは灰色だが第一層は白かった」

「マジか」


 あれ? 出発地点がランダムなタイプのゲームなのか。じゃあ誰かとプレイしてもすれ違いとか普通にありそうだな……。




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無職のおっさん、幼女にTSして番外編
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