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無職のおっさん、幼女にTSして悪役令嬢とダンジョン最下層を目指す【完結】  作者: 芥部


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第168話 出発の前に


 俺は着替えた服を皆に見せびらかすことにした。何しろ、本当に良い品だったので。

 気分的にはSSR三枚抜きしたガチャのスクショを見せびらかすくらいの気持ちである。

 俺的には最高級に素晴らしいもの、という意味の表現だ。


「どうかな、これ!」

「よく似合っているではないか、我が家の養子にならぬか?」

「素敵じゃない、私の近侍になりなさいよ!」

「チケン様、素敵です! さすがインテの御主人様、最高のお姿です!」

「おー、クラシカルでいいね、茅原氏。似合ってるよ!」


 いつの間にかエト姫もやってきた。エト姫はお世辞を言わない。だから本当に似合っているんだろう。照れるがかなり嬉しい。なんだかんだ言っても、やっぱり推しだからな。

 着替えた俺を、皆が拍手で祝ってくれた。は、恥ずかしい……!


「急いで刺繍した甲斐がありましたわ、お似合いです!」

「そのキラキラのリボン、クリームが縫ったマウ! 昨日のイカ、対魔力性能もあったから使って欲しいマウ!」

「おや、チケンくん、うちの姫よりよっぽど姫らしいね。エトワールも見習いなさい」


 このリボン作ってくれたのクリームちゃんだったのか。何か柔らかくて、首に巻いただけでシュルっと綺麗にリボンが結ばれる便利なリボンだ。すごいな。

 そしておっさん、それ褒めてるか?


「皆本当にありがとう……すごく嬉しい。語彙が少なくてあんまりうまくいえないんだけど、本当に嬉しい!」

「本当に似合っているね、チケン君。僕はここでしばらく手伝っていく予定だからついていけないけど、姉をよろしく頼むよ」


 そうか、ファビエ社長ともそろそろお別れか……。さみしくなるな。しんみりしていると、なんか何処かで聞いたような激しい足音が響く。


 ズザーッっと土煙を立てて現れたのは、八尺様とつむぎちゃんと、ターボ婆ちゃん達だった。


『ポ! 出発する前にもう一度会えて良かった!』

『そうだねえ、チケンの旦那、危険な場所ときいたよ、気を付けておくれ。ま、旦那の速さなら大体の攻撃は躱せるだろうけどね!』

「おねえちゃん! つむぎ、来週お家帰れるんだって!」


 つむぎちゃんが八尺様の腕からとびだしてきて、俺に抱きついた。ほぼ同サイズなので受け止めることに成功。


「本当か!? よかったな。お家に帰ったら車に気をつけるんだぞ! 道路を渡るときはちゃんと左右見てからだからな!」


 俺の言葉につむぎちゃんは、少し照れた顔で答えた。


「はーい、わかりました! 吉田のおねえちゃんが教えてくれたから、つむぎおぼえたよ。ちけんおねえちゃん、づかみたいでかっこいい〜! おタヒおねえちゃんもお姫様みたいだしグリセルダさまもかっこいいし、こうゆうのめのほよーってゆうんだよね!」

「そうでしょう、いい子ね。つむぎは見る目があるわ!」

「正直な良き子供だ」


 ヅカっぽい。そういう見方もあるか……。まあ人それぞれだな。

 それにしても、来週帰れるのか。本当に良かった。もう一人、ターボ婆ちゃんの上に乗っている人がいる。吉田さんである。多分ここに戦闘服の吉田さんがいるから、副運用体の方だろう。


 ひらりとターボ婆ちゃんから降りるさまはかっこいいが、かっこいいんだが、複雑な気持ちになるな……。四つん這いのおばあちゃんにまたがる謎の制服美人……。何度見ても情緒がめちゃくちゃになる。


「つむぎさんは私吉田が責任を持って日本までお連れしますのでご安心を!」


 吉田さんがいつもの笑顔で朗らかに宣言してくれた。吉田さんがそう言うなら絶対に大丈夫だろう。そんな予感がある。なんせめちゃめちゃ強そうだから……。


『ポ……私達はまだ先みたい』

『ま、王子さまが一緒に旦那を見守ろうって言うから、ここでのんびりするつもりさ』

「そっか、元に戻るにも記憶を取り戻さないとだしな。また会えるといいな!」

『ポ! そうだ、これ作ってきた。よかったらお弁当にして』


 マジックバックから、でかいタッパーみたいなやつと、でかい鍋が出てきた。鍋はまだ熱々で、いい匂いがしている。有り難くインテに収納することにする。


 王太子とメガネ、初見の印象ではクズ王子とド変態だったんだが、どんどん印象が変わっていく。気が利くし、親切だ。

 TSの事を抜きにすれば好感度はかなり高いと言える。本当に欠点がそのくらいしか無い。その欠点が俺にとっては巨大なんだが……。


『レプティリアンのローストと、レプティリアンの芋煮、塩むすびだよ。見てくれは悪いけど味はいいからね。おタヒ姫もグリセルダの姐御もいっぱい食べとくれ!』

「うふふ、作ったものを食べてくれる人が増えましたの! 嬉しいですわ!」

「やったー! あの汁すごく美味しかったもの、嬉しい!」

「あの肉のローストか。さぞかし美味であろうな」


 ヴィルステッド村の村長夫人がそれを見て嬉しそうしていた。どんなに良い作物を作っても肥料にしかならないのは寂しかっただろうからな……。


 これで後顧の憂いはより少なくなった。ゼロにはならないだろうが大量にあるよりはいい。

 つむぎちゃんも婆ちゃん達も八尺様達も、大変かもしれないけど元の生活に戻るための手続きが進んでいる。


 それだけで、ちょっと元気が出る。



 そうしているうちに、戦闘服を着て装備を持った清野さんと吉田さん、そして、着慣れなさ抜群のカハールカさんがやってきた。

 清野さんは警棒のようなワンド、吉田さんはかなり大きいバールのようなもの、カハールカさんは武器らしい武器は何も持っていない。


「武器なんて持っててもしょうがないっすからね……私は生き残って、プラントの中身を検査するのが仕事ッス」

「荒事は俺達でやるつもりだったしな、元々。任せてくれ」


 ファビエ社長が、おずおずと近づいてきて、俺の手をそっと握る。


「君には色々手間を掛けさせた。感謝の念に尽きないよ。最後に一つ、君にスキルをかけさせてくれ。【君の願いを叶えよう】、君が最下層にたどり着きますように」


 ファビエ社長の手から、ブワッと青い光が溢れ、あたりを祝福するかのように光球と花びらのような何かが舞い、魔力が俺に流れ込む。メテクエでの【君の願いを叶えよう】は凄まじいバフ効果を持つスキルだった。5ターンの間攻撃と防御+100%、強化解除耐性80%、毎ターンHPMP回復とかいうぶっ壊れスキルだ。


 本物はゲームのように謎の神様が出てくるなどの派手な演出ではなかった。でも現実にあるスキルだった、ということが俺の胸を熱くする。


 久々に俺はステータスを見て、どういう効果なのか確認する。


「え?! なにこれ?!」


 おかしい。すべてのステータスが+20され(幸運はすでに補正も含めカンストしているので影響はなかったが)そして、レベル25だったはずが、レベル25+10で、合計35になっていた……。それに伴って、HPも200前後だったのが350くらいに、MPも90くらいだったのが160になっていた。


「メテクエでの効果とは違うんだ。これは、僕のレベルを少しだけ分けてあげられるスキルでね。でもこの姿だからレベルが102しかなくて……。本当なら250あるから、25レベルくらい分けてあげられたはずなんだけど」


 レベルって、99より上があるんだ…………。知らなかったそんなの。


「少しだけど足しになるだろう。最下層に着いたら返してくれればいい。どうか、僕の分まで冒険を楽しんできて!」

「はい、有り難くお借りします……!」


 社長は俺の返事を聞いて、穏やかに微笑んだ。

 いつもなら、俺のためにそんな、と固辞していた気がする。

 でも俺は、俺なんて、というのを辞めることにした。


 グリセルダ、おタヒ、エト姫、社長。そして、ここに居る人々。俺の大事なものが大事にしている、俺というものを大事にしよう、そう思ったのだ。



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無職のおっさん、幼女にTSして番外編
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