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無職のおっさん、幼女にTSして悪役令嬢とダンジョン最下層を目指す【完結】  作者: 芥部


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第159話 作戦会議


 夕食は大変に良いものだった。ザリガニもペッパードラゴンもヒュドラも皆美味かった。

 グリセルダもおタヒも美味しそうに食べていて、俺も嬉しくなってしまう。それを見る制作側のヴィルステッド村の人々もマウ族の人たちも嬉しそうに見ていてくれた。


 全員がワイワイ楽しんで食べている中、隔離されて一人でクッキーをかじっているエト姫の目は虚無だったが、あえて追求はしなかった。

 あのクッキー、多分五層のセーフエリアにある味のない栄養食だと思う……。

 おそらくお仕置きの一環なのだろう。他所よそ様の家の教育方針なので放っておこう。


 セーフエリアで俺達は今までのことについてと、明日からのことについて話し合いを持つことにした。


「それで、まずどこから話し合うべきなのかなあ」

「じゃあ私、エトワールの上官であるジュスト・ド・スフォーが進行役をしようかな。それでいいかな、皆様?」


 スフォーのおっさんが名乗りを上げると、参加者はみな頷いた。

 参加者は俺、グリセルダ、おタヒ。エト姫、社長、四方さんたち、そして王太子とエミールだ。マウ族の長老ロボロフさんとヴィルステッド村の村長さんとは明日話し合いを持つそうだ。


 まあ、祭りもめちゃくちゃになったし、移動の疲れもあるだろうし、落ち着く時間が必要だよな……。


「まず、あの逃げたあの二人の神子みこについて。あれの中身はテオネリア内務庁の長官ヴェレルで、現在いるのは八層だが、明日の朝にはもう九層に逃げている、そういうことでいいのかな、ディートリヒ王太子?」

「そうだね。八層はあの二人にとってはただの通路でしか無いようだ。さっさと逃げて十一層にある秘密のポータルから逃走しようとしているみたいだね」


 相変わらず王太子はニコニコと穏やかに話すが、王太子が言うならそうなんだろうな……。本当に便利な存在すぎて逆に俺はちょっと怖い。


「八層には何があるのだ、ディートリヒ」

「うんうん、大きな鉄の塊……なのかな? 見えるけど、表現する単語がわからないんだよね……エミール、ちょっと今から思い浮かべるものをテーブルの上に写してくれる?」


 エミールが王太子の目の辺りに手を被せ、軽く手を一振すると、大規模な化学プラントのような広大な空間の画像がテーブルの上に現れた。

 地球よりもすごく未来的な感じがする。透明なパイプをキラキラしたものが通り抜けていき、静寂な空間に時々確認のアナウンスや、何かを排出するような音が響く空虚な空間だった。


「……なんで化学プラントが刑務所にあるんだ?」


 俺の疑問に答えたのはスフォーのおっさんだった。


「君の国にもないかな、懲役刑での刑務作業というやつが」

「ああ……あるな。家具つくったり縫い物したりとか聞いたことある」

「その一環としてのプラントという名目で書類が上がっているね。書類でははマウ族の被服作成作業も刑務作業ということになっている」


 おタヒとグリセルダは解らなさそうな顔をしていたので、俺から説明を入れた。工場なんてないか、あっても手作業が多い世界に住んでいたからしょうがない。


「私達は目下、ヴィルステッド王国とマウ族の村、そしてつむぎちゃんや八尺氏、ターボ婆ちゃん氏らの事件の調査で手一杯になっている。特に逮捕した要人たちに事情聴取をしないといけないしね。そこで当事者に言うのも申し訳ないのだが、引き続き調査をの手伝いをお願いできないだろうか、リーフェンシュタール嬢、おタヒ姫」


 グリセルダとおタヒも元からやる気だったようで、断らなかった。


「構わぬ。もとより我が手で始末するつもりだった」

「同じくよ。殺してもいいのよね?」


 うーん、相変わらず発想が暴だな……。度が好きなければ好きな部分ではあるが。


「積極的に死んでほしいわけではないけども、ヴェレルはそんな生半可な強さのやつじゃないからねえ……。死んだらしょうがない。それに、このダンジョンは特殊な磁場をしていてね。死んだ魂はその層に留まって、救助を待つか復活するか、悪霊になるか、魂をすり減らして消滅するかのどれかなんだ。殺しても魂は回収して復活させ、絶対に裁判の場に立たせてみせる。肉体は殺してもいいけど魂まで滅ぼすのだけは勘弁かな」


 死んでも輪廻転生もできずただ留まるだけの場所なのか……。

 そうでなければヴィルステッド村の人々の説明がつかないもんな。そこでたくましく穏やかに生きていたあの人々のメンタルの強さがすごいと思うが。

 俺なら怨霊になっていたっておかしくないと思う。


「しかし、不思議ね。こんな迷宮誰が作ったの?」


 おタヒの質問に答えたのはファビエ社長だった。


「大昔にエヴォーム卿という大貴族が作ったんだ。エヴォーム卿の娘がある時事故でなくなってね。娘の鎮魂と、持っていた特殊なスキルの保存をかねて、墓としてこの迷宮を作ったんだよ。娘さんは冒険が好きだったんだ。最初は解放するつもりもなかったんだけど、子孫が迷宮を改造したり、お金に困って公開したり、内務庁に売却した結果、今に至るんじゃなかったかな」


 ファビエ社長、幼女の姿になってもちゃんと色々覚えててすごいな。


「王子の言う通りでして。その空間を悪用した結果がこのざまです。皆様には誠に申し訳のしようもなく」

「待て、それは別に良い。それよりも私とおタヒは何故ここに居るのだ? そしてディートリヒ、お前とエミールも何故ここに居る?」


 そう、それが全然わからなかったんだよな。ずっと疑問だった。


「それはね、僕から伝えよう。但し、十一層に着いた時に。お願いだよゼルダ。君ならきっと、たどり着ける」


 王太子が初めて悲しそうな声で喋った。いつもは穏やかで楽しそうな声だったのに、黒いモヤになっても解るほど、沈痛な顔をしている気がする。


 数秒だけグリセルダはためらって、意を決した。


「ディートリヒが言うなら信じよう。おそらく、楽な前途ではないのだろうが」

「そうだね、でも僕は君なら行けると信じているよ」

「ならば行くとしよう。……チケン、お前はここで国に帰っても許されるのではないか。お前は我らに良くしてくれたが、部外者であろう?」

「私は行くわよ! 行ってあの蘇芳郎女をボコボコにしないと気がすまないわ!」


 そう言われた瞬間、俺は少し安心して、すごく悲しかった。上手く言語化はできなかったが。


「……俺は」

「お前には手間ばかりかけさせた。お前には何度も助けられたが……無理は――――」


 グリセルダは珍しく申し訳なさそうな顔をしていた。自分の事情に俺を巻き込むことに、罪悪感があるのだろう。そういえば、最初に出会ったときもこんな顔をしていたな。


「俺と一緒に最下層目指さない? モンスター倒す担当がいると心強いんだよね――――って俺が言ったの覚えてるか?」

「ああ、覚えているとも。忘れもしない。そうだな、そういう約束であったな……」

「だから、俺も行くぞ! 最下層、何があるのかこの目で見て確かめたいしな」

「よかった! 三人でいくならきっと大丈夫ね! 私も化物は倒すの得意よ、任せて!」


 乗りかかった船だ。どこにたどり着くか、自分で見届けたい。頼もしい同行人が二人もいるのだ。きっとたどり着けるはずだ。


 ファビエ社長がじーっとエト姫を見ている。エト姫は珍しく挙動不審な顔をしている。不審な行動ならしょっちゅう見たが、自信なさそうな顔をしているのは初めて見た。


「姉上は?」

「私も行きたい……けど、じいや……あの、行ってもいいかな……」

「晒した恥は行いですすげ、と国王陛下からのお言葉を預かっているよ、エトワール。意味はわかるね?」

「はい! 父上の名に恥じぬよう、全力で捕縛してまいります!」


 ファビエ社長がそれを見て嬉しそうにしている。この姉弟、喧嘩ばっかりしてるけど仲がいいんだよな。俺も見ていて微笑んでしまう。


 方針は決まった。あとはどう実行に移すかを考えていくフェーズだ。

 ……あんまり得意じゃないんだけどな、計画立てるの。



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無職のおっさん、幼女にTSして番外編
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