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無職のおっさん、幼女にTSして悪役令嬢とダンジョン最下層を目指す【完結】  作者: 芥部


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第151話 新鮮な程効果がある


 時刻は夕暮れ。


 赤い光が世界を満たして何もかもが赤く染まっている。南の島らしい強烈な赤い夕日。

 逢魔が時やら誰そ彼という言葉が否応なく思い起こされる、美しいが不穏な空だ。


(しかし思ったよりもこの村はまずいことになってるな)


 エト姫が深刻そうに呟く。


(まだ何かあったのか!?)

(歩きながら聞いてくれ。さっき記憶消去をするって言ったじゃないか。記憶消去術には特定の薬剤を使うんだが、この犯罪者ども全員それを持ってた。法務官以外使用が禁止されているのに)


(最悪じゃねえか……)


 治安悪すぎるだろ、大丈夫かこの国……。


(やはり内務庁の警察関係者か法務部に横流ししてるやつがいるか、作ってるメーカーにやばいのがいるか……とにかくよくないことになっている)


 犯罪を起こしても記憶が残らず実害がなければ犯罪にならない、ということだろうか。たしかに、加害者も被害者もそれならつづがなく日常を送っていけるし、平和だろう。


 俺個人としてはすごい嫌な考え方だな、と思う。

 でも被害にあった記憶なんて、心を傷つけるだけだろうから無い方がいいんだが……。


 考えされられることが多くて頭が爆発しそうだ。

 最初はただの可愛いケモ耳村だと思ってたのにな……。


(やっぱりあの自称神子(みこ)のせいよ! 根拠はないけど!)

(私も意見を同じくする、エトワール)

(いやー、流石に根拠が無いとなあ……根拠があれば暴れられるんだけどなあ……)


 おタヒとグリセルダの意見にも同意するが、エト姫の言うことも間違ってはいない。

 法治国家で法を守らない法の番人など、いてはならないし、いたら誰も信用しなくなる。

 だから俺達はその確実な根拠を見つけ出さなくてはいけない。

 そう言ってるうちに俺達は『本祭』の行われる場所にたどり着いた。


 本祭では、先程の大臣や犯罪者達も笑顔で参列しており、やはり村の人々を品定めするような醜悪な眼差しで見つめている。まだ何かするつもりなんだろうか……。


「それではお客様に『審判』をいただくまでの間、皆様しばしお待ちくださいませ」


 神子の言葉にホッとしたように村人たちは面を上げた。


(審判って何?)

(最後の審判とかか?)

(全く知らんな……)


 俺達が訝しんでいると、お客様は集団で設えられた特設席に向かっていって、こちらを指さし色々と会話を始めたようだった。


(茅原氏、ちょっと話聞いてきて!)

(へいへい)


 足を舐められるとかじゃなければもういいよ。

 エト姫の言う通りに俺はサクッと隠密行動を発動し、インテとともに広場に一段高く作られた特設席の物陰に忍び込むことに成功する。

 すると、会話はちゃんと聞こえてきた。防音とかしてないのか。助かるけどそれでいいのか。


「いやあ今月もいい体験ができましたなあ」

「あとで映像を見返すのが楽しみで!」

「材料を自分で選べるってのがいいですよなあ」


 ……え? なんか急展開きたぞ。

 お客様達はそれぞれに好き勝手に祭りの感想を述べる。


「そうそう、出来立てほど長く、強く効果が出る気がしますし、材料の良さを見たあとだと肌艶まで良くなるような気がしますよね!」

「いやー正直持って帰りたいくらいですな! 薬にするのが惜しいほどで」

「でもそういう愛らしい子の命ほどよく効く気がします!」


 エロ水着で交わす、邪悪な猥談。いや、猥談に失礼だなこれは……。


「こんな散々にされても、記憶操作薬さえ飲ませておけば何をされたかも気が付かないなんて、なんて愚かなのでしょう」

「私達の寿命となって役に立っている。それぞれに大事な役割があるのですよ」

「今日は俺が選ぶ番だ、迷うなあ! あのウサギの耳の女にするかリスの尻尾の女にするか……」


 俺はあまりのことに衝撃を受けている。人の目がないと、時に人間はこんな会話ができるんだな……。

 そして、それを聞いた神子はニコニコと話を聞いている。


「ええ、そのとおりでございますわ。新しい薬、すぐ作りますからどの子を材料にするか、おっしゃってくださいね」

「ええ、お気に召す薬がお作りできて嬉しいですわ。皆々様の御長寿と健康に寄与できるのですもの、あの者どもも本望でございましょう」


 一見和気藹々と交わされる邪悪な会話。

 聞いているおタヒとグリセルダが爆発寸前になっている。……気持ちは解る。


(やっぱりあの邪教の民全員消しましょうよ、あの神子含めて。はらわたが怒りで煮えくり返りそう!)

(あの害虫どもを生かしておいてもろくなことにならないのでは? 害虫は増える前に駆除したほうが良いぞ)

(まだ駄目だ! 余罪があった時に他の人が救われなくなる。そして断言してもいいが余罪は絶対ある!)


 そうなんだよなーおタヒとグリセルダの気持ちもわかるんだが、絶対全員これが初回ってわけじゃないだろうし。

 とはいえこのレベルの犯罪は大体どこの世界でも初犯でアウトだろう。これが許されるとしたら相当なディストピアかアポカリプスの世界だ。


(チケン君、申し訳ないが神子の顔、見えるところに移動してくれないか?)


 社長がそう申し出る。断る理由もないしバレる心配もないので俺は少し場所を移動した。ここからなら神子の横顔なら見られるはずだ。


(……ここでいい?)

(感謝する)

(何かあるのかファビエ)

(後で話す)


 とりあえず、エト姫がいいと言うまで盗聴し続けたが、正直胸糞悪い。


 一応耳に入ってくるが脳に残さないように極力頑張る。

 そして、例の大臣が生き生きとした顔で俺と社長を材料にしたいといい出し吐き気がしたが、気合で耐えた。吐いたりぶん殴ったりすると隠密行動が解除されてしまう。


 人間ってこんなに邪悪になれるものなんだな……。


「指が四本で耳もネズミの形だから人間とは言い難いですからね。法的にも安全です。遺伝子の殆どが人間と一致するように作っておりますし、魂も似せているので効果は高くなっております。安心してご服用くださいませね」

「それはありがたい!」

「今までのようにどこの馬の骨とも知れない材料よりも産地や出自のはっきりとしている材料のほうが安心ですからなあ!」


 指が四本だから、耳の形が違うから人間じゃない。彼らはそう言うが、こいつらのほうがよほど人間に思えない気すらする。


 俺は相手を見かけの違うだけの人間と思ってこの村で過ごしていた。

 そんな相手を材料だなんて、思えるわけがない。


「そうなのですよね、今までの外宇宙産材料では、どうしても自意識という外殻が硬くて歩留まりが悪く、エラー品が出ておりました。それを解決したのがこの自社生産材料でございまして」

「ええ、品種改良も重ねておりまして、皆様のご愛玩やご健康に寄与できることは間違いないと存じます!」


 まるでビジネスマンのような物言いをする神子二人。


「本当に、いい品種改良をされておりますねえ。今日は久々に来たら毛色の変わった仔ネズミが居りましてねえ! 久々に若い日のように堪能させていただきましたよ!」

「お役に立てて何よりです」


 大臣がキモいこと言ってる……。

 まあ九割は夢なんだけどな、それ。でも一割弱は現実で……。


(エト姫、これ録音してるんだよな? ぜってー起訴しろよ)

(当然! インテが立体映像で録画もしてる。余罪を絶対暴いてみせる!)

(録画録音は完璧です、おまかせください!)

(面倒なことしなくても私が今、全員に呪いをかけてもいいのよ?! 多分余裕で七代祟れるわよ!)

(うーむ、それより私が右から物理的に首を刎ねていくからおタヒは左からというのはどうだ?)

(あら素敵ね、グリセルダ!)

(二人共やめてくれー! 余罪を! 余罪を追求させてくれー!)


 遠くからちらりと見ると、ファビエ社長が世にも珍しいものを見るような顔をしている。ストップを掛けるエト姫なんて、めったに見られないだろうからな……。


「では皆様お決まりになったようですね。参りましょう」


 神子の言葉にエロ水着集団は頷き、会場にゆっくりと歩いていった。




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無職のおっさん、幼女にTSして番外編
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