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無職のおっさん、幼女にTSして悪役令嬢とダンジョン最下層を目指す  作者: 芥部


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第15話 退屈な土曜の話

 

 解ってはいたけど、土曜の何も無い病院は大変暇だった。

 とは言え、ナースステーションの前には無料の高速Wi-Fiがあるし、ふかふかのソファもテーブルもある。


 そこは俺以外誰も来なかったのでテーブルに陣取って売店で買った雑誌を読んだり動画を見たりして過ごした。


 なんか、いつもの休日の俺とやってることが変わらん。

 買い出しも掃除もしなくていいので、何なら上位互換まである。


 治験、思ったより環境が良いな……。もっとまずい飯とかうるさい大部屋とか注射とか点滴を想像していた。

 これはあの爺さんが治験だけで生計を立てたくなる気分が分かるわ……。


 これで金をもらえるなんて天国ではないか……。

 そうしみじみしていた時、廊下から足音が聞こえてきた。


茅原ちはらさん、お疲れさまです。休憩中ですか?」


 やってきたのはコーディネーターの四方よもさんだった。


「お疲れさまです。あれ? 今日土曜日ですよね、お休みじゃないんですか?」

「はい、当社は裁量労働制ですので土曜に仕事をするのも自由なんですよ」


 裁量労働ってそう言うもんだっけ? 役所とか病院とか遊園地とか、そう言う感じの平日休みとったのかもしれないけど。


「今日はどうしたんですか?」

「茅原さんの検査結果が素晴らしいという話を伺いまして、少々お話を伺えればと」

「わかりました……あの、あと3分だけ待っていただけますか?」


 そう、思いっきりゲームの途中なのだ。了承を得てとりあえずステージクリアまで進ませてもらい、スクショは取っておいた。


「お取り込み中申し訳ございません」

「いえいえ、ただのゲームなんで……」

「そのゲームを使ってモニタリングしていただいておりますので」


 四方さんは柔らかく微笑んだ。

 そういえばそうだな。


「俺の検査結果ですか?」

「はい、大変素晴らしい適性がございますね。実は隠し要素で嗅覚や触覚モデルも組み込んでいたのですが、感知できたのは茅原さんが初めてでございまして」

「あ、やっぱちゃんとあったやつなんですね。俺の思い込みかなって思ってました」


 俺自身はそんなにイマジネーションのある人間に思えてなかったから安心した。

 思い込みで嗅覚が生えてくるほど繊細な人間だったら生きづらすぎるからな……。


「はい、全部の場所ではないはずですが、嗅覚に影響する箇所がございました。そこでこの調査シートに何かあった場所のレポートを書いていただければと」


 四方さんは大きなタブレット端末とペンを取り出した。有名メーカーの一番高くて一番でかいモデルっぽい。これでメテクエやったら最高なんだろうな……。

 でもこれ買うと、治験で稼げる渋沢が半分近く死ぬ。無理。


 羨ましい気分で画面を覗き込んだが、うーん、書き込むところが多い……。

 困った顔をした俺を見た四方さんはコーヒーを勧めてくれる。


「コーヒー、いかがですか? それとご回答いただけた場合こちらの記念品……ギフト券をお礼に差し上げているんですよ」


 四方さんは自販機で買ったコーヒーを俺に渡し、あの有名なネットショップのロゴの入った封筒を俺の手前に置いた。コンビニで『ギフト用』って書いて売ってるアレだ。


 この人、なぜこんなにも俺の扱いを理解しているんだ……?

 もしかして……俺に好意を……?


 と中学生男子みたいなことを一瞬思ったが、治験バイターで金券貰って嬉しくない人間なんていないか。


 俺、金券だーいすき!



「任せてください」


 俺は俄然やる気になった。金が好きなので。金があるとガチャが引けるので。

 1000円とかでもおはガチャ代の足しになるし馬鹿にできない。

 おはガチャでSSRが出ることも年に2回くらいはあるんだ。


 俺はサクサクとA4の用紙に換算して10枚分ほどにチェックをつけ、ところどころ質問に書き込みを入れて返した。


「ご協力ありがとうございます、こちらは記念品です、お受け取りください」


 四方さんが先程の封筒を丁寧に差し出してくれたので、ありがたく受け取った。


「次回からのテストは、仮想空間で積極的に体を動かすためのテストとなります。なので、本当に体を動かす感覚でのプレイとなります。疲労感などは現実よりは低くなりますが多分発生します。体を動かすのは大丈夫ですか?」


「多分大丈夫です。常識の範囲なら……」


 俺は仕事でも工場の中を動き回ったりしていたし、前職でもまあまあ動き回る仕事だった。

 あと、俺は常にメテクエを最善の体調で遊ぶために週三回ウォーキングをしている。

 これはまあ常識的な範囲の運動だろう。


「運動部とかには入ってなかったのでそのレベルになると厳しいかも知れないですけど」

「大丈夫ですよ、そのへんも考慮に入れてテストをさせていただいております」


 そういえば、最初に書いた書類に学生の頃の部活の記入欄なんかもあったな……。


「それと、もし食事が足りない場合などはお申し付けいただければおかわりも出来ますので看護師にお申し付けください」

「高速でゲームプレイすると、ゲーム内で走り回るせいか腹が減るんですよね。マップ移動が文字通り駆け足なんで……」

「そういうお話も助かります、機器開発の参考にさせていただきます」


「そういや、VRの運動ってカロリーとかも消費されてるんですかねえ」

「それはこれから検査の上調査が必要になりそうです。なにしろ、ここまでVR機器に適応した初めての例が茅原さんなもので」


 マジか。

 カロリーは消費されてて欲しい。見た目はどうでもいいのだが、太ると服を買い替えなくてはいけなくなる。服を買う金は極力減らしたいからだ。万が一メテクエ2が出たら限界まで課金したいからな。

 なんかもう、ガチャのために生きてるような人生だな、俺……。


「VR機器に適応できるのはどういう体質の方なのかなども調査しないといけないので、期間中検査をお願いすることが増えると思うのですがご協力頂けると幸いです」

「わかりました、期間中は頑張ります」


「ご協力感謝します。もう一つお伺いしたいのですが、明日はなにかご予定などは?」

「えっ? 何も無いです」


 治験中だし何も予定を入れてない。四方さんは俺の返事を聞くと鉄の表情筋をわずかに緩めた。


「明日、午前中に追加のテストをしたいのですがよろしいでしょうか」

「いいですけど、なんのテストです?」


「機密ですので詳しくは申し上げられません。ただ、参加していただけますと追加の負担軽減費2万円が出ます」

「お任せください、やります」


 即決。

 そりゃやるよ。内容わからんから何があるか恐いけど……。病院でゴロゴロしててもなにも生み出さないからな。


「ご協力本当に助かります、では」


 四方さんは頭を下げて出ていった。

 どんな検査なのか、やや不安だが大丈夫。渋沢さん二人が俺を励ましてくれている。

 俺、頑張る。






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無職のおっさん、幼女にTSして番外編
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