第149話 お客様は神様です
お迎えの儀が終わり、緊張しきっていたマウ族の人々にも少し安心した様子が見られる。
空から現れた”お客様”は皆成人で、マウ族のように小柄な人々はいなかった。
これはグリセルダとエト姫が会場にいたら相当目立ってたな……。
逆におタヒと社長と俺は全然目立っていない。現地民に溶け込んでいる。
お客様は男性も女性もいたが、数人ごとにどんどんあの長老の家で服を買い、着替えてくつろいでいるようだ。
いやー推しのエト姫のエロ水着でも相当きつかったのに、推しじゃない人のエロ水着が割とたくさんおり、視覚の暴力を感じる……。逆に、エロ水着じゃないほうが目立つかも知れない。
(ちょっと! 何よこれ、淫祠邪教の集い?!)
おタヒの言い様もひどいが何も否定できない。エロゲに出てくる悪魔崇拝教団の集いと言われたら俺は納得する。
(うーん、これで私がさっそうとあの水着で乗り込むのはどうだい?)
(やったら俺ログアウトするから)
(弟のことも考えてやれ、エトワールよ……)
比較的社長に厳しめだったグリセルダにまでそう言わせるあたり、法律を守った酷さには定評のあるエト姫だ。
お客様は皆マウ族の皆と交流してるが、マウ族の人たちは柔らかそうな対応をしつつも緊張しているようだ。
「まあ、あなた可愛いわね、お仕事は何を? 何歳?」
「え、えっと、アイロン係で4歳ですマウ……」
「まあ、若いわね!」
多少マシな水着を着たおばさまがマウ族の少年に笑顔で話しかけている。
他の人々も、何か商品を選ぶかのような眼差しでこれと決めたマウ族の人々に声をかけ交流をしている。
マウ族の人々のお客様に対する態度はまるで神仏に恐れおののいているような感じだ。
(茅原氏、ちょっとそのふくよかな男性つけてくれない? 頭に特徴のある人)
(光ってる人?)
(そう)
何故かハゲとか言わないのは不思議だ。まあ事実陳列も時として罪になるからな……。
俺が尾行を指示されたのは、頭髪の寂しい、エロ水着(奇しくもエト姫と同じデザインの色違い)のおじさんである。
あの水着ユニセックスなんだ。知りたくなかった……。
(なんで?)
(そいつ、教育庁の大臣なんだよ……)
(えっ?!)
(エトワールの国は乱れ過ぎではないのか?)
(国教が淫祠邪教なの? 新しいわね)
(公の場でなければ露出はセーフなんだなこれが)
(刑務所は公的な場所説に一票入れるぞ、俺)
(僕も一票いれる。二票目)
エロ水着を着た教育庁の大臣が二人のマウ族の少女を抱っこして気持ち悪い笑顔を浮かべている。最悪の光景だ。
どの面下げて教育を語ってるんだこのおっさんは……。
それにしても女の子が可哀想過ぎる。どうにか助けてあげたい。
(尾行はいいけど、何かあったらどうする?)
(……その時に判断しよう。まだこの時間は誰を間引くか選抜してる段階だろう)
エト姫の言い方はシビアだった。
(昨日エリア中走り回って人口を数えたんだけどね、おそらく、マウ族は繁殖力が高くて食料供給が間に合っていない。げっ歯類を進化元にしているからだろう。それを人身売買で間引いてバランスを取っている。この広さの土地には少し人数が多すぎるんだ。原料にもなって一石二鳥、ということなんだろうが……)
たしかに今までの層に比べても明らかに人口密度が高い。食べ物のレートが妙に高い。食料問題と人口問題があるとすれば納得できる。
それなりの人数がいるのだが、村の広さは歩いて回れるほどだ。自給自足できる広さではない。
「君可愛いねえ……グフフ」
「あ、ありがとうございます……マウ」
エロ大臣の言葉に震える声で答える女の子。クソ、あのおっさんしばき倒してえ!
まるで痴漢を見て見ぬふりしてるようで自分が腹立たしい!
(エトワール、あの豚を斬り捨てに行きたいのだが)
(私じゃあ呪殺する?)
(実害が出る直前まで待ってくれ! 証拠がほしい、もっとあいつをどん底に落とすための!)
エト姫は意図的にグリセルダとおタヒが好む結論を出すように誘導しているようだった。まだ三日くらいしか一緒にいないのに把握が速い。
感心していると事態は急転した。
大臣は毛色の変わったマウ族を発見したのだ。
……俺とファビエ社長である。
マジかよ、俺はともかく社長は勘弁してくれ。
大臣は俺達を見つけると、二人の女の子を地面におろしてにこにこ顔で近づいてきた。うわっ、顔だけじゃなくて腹まで脂ぎってる!
「おや! 可愛い毛色の子供もいるねえ! 品種改良に勤しんでいるという話は本当だったのか。君たち何歳?」
(茅原氏! ファビエ! 話を合わせて! 四つとでも言っておいて!)
(……エトワール、そろそろ斬り捨てに行きたいのだが)
(とりあえずその豚から鏖殺すればいい?)
二人が暴走しそうだ。……しかし、人目がある。
(二人共、もっと目立たない場所に移動してからにしてくれ。せめて。あとエト姫、バイト代倍にしてくれよな!)
(本当に済まない……しかし、茅原氏に手を出してくれてよかった)
(良くないに決まっている。エトワール、まずお前から殺せばいいか?)
(エトワール、適当なこと言ってると呪殺するわよ)
(二人共、とりあえず仲間割れは後で!)
しゃーない、やるか……。俺は、ふるふる震えて弱々しい言葉を発す。
「あ、あの……四歳……マウ」
「同じく……マウ」
あっ、ファビエ社長が話を合わせてくれてる。どうしようめちゃめちゃかわいい、惚れそう……。俺は意外に惚れっぽいのかも知れない……。
「かわいいねえ君たち……! 少しおじさんと話をしようか」
「はい……マウ……」
「わかりました……マウ」
幸い、ファビエ社長も現地民と思われているようだ。身バレしなくてよかった。俺達は五歳児程度のサイズなので、おっさんは軽々と両手に俺達を持ち上げる。
片方の中身は三十路のおっさんなんだ。残念だったな。
(チケン普通に喋るとすごく可愛いわね!? なのにその相手が豚だなんて許せない!)
(そのような豚に媚びを売るな! 我らにも見せたことのない顔ではないか!)
(二人共ちょっと落ち着いて! インテも一緒にいるから!)
二人がめちゃくちゃなことを言っている。演技だよ気がついてくれ。
そして、エト姫がストッパーになってるのは珍しい。今までずっとエト姫は止められる方だったから……。
大臣は俺達を連れて、村の見知らぬ家に入っていく。部屋の中は個室で、大きなベッドが設えられている。キングサイズのベッドだ。マジかよ。明らかにご休憩の場所だろこれ。
大臣はファビエ社長を椅子に座らせ、俺をベッドに横たわらせた。
「ふふふ……本当に可愛いねえ。マウ族の四歳はもう発情が始まっているのかな? どうせこのあと寿命が伸びるんだし、君のことを可愛がらせてもらおうかな……大丈夫、ガマンしてたらいいものを上げるからね」
そしてファビエ社長に向かって更に笑顔を向ける。
「ほら、君の姉妹の姿をよく見ておくんだよ。次は君の番だからね」
「ひっ」
流石に社長もドン引きしている。自分の国の大臣がこのザマじゃなあ……。あまりにもキモい。
でもよかった。俺が先で。社長に何かあったらメテクエ2やコンシューマー版や設定資料集を読む夢が叶わなくなるかもしれない。それだけは嫌だ!
脂ぎった笑顔で俺に近づいてくる大臣。
俺の靴を脱がせて、俺の足をさわり始めた。大臣の息子さんはすっかり水着の中で自己主張を始めている。見たくない。辛い。
まさか治験で貞操の危機があるとは思わなかったな……。
(エト姫、そろそろ俺の貞操がやばいんですけど?!)
(仕方がない、まずエトワールを肉塊にするか)
(チケン待ってて、まずエトワールを殺すわ)
(二人共もうちょっと待って! 物証が欲しい! 靴脱がせただけじゃまだ弱い、このクソ大臣も後で絶対処罰するから!)
「ううっ……怖いマウ……」
一応そう言ってみるが、相手はやる気になっただけのようである。つれぇ……。




