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無職のおっさん、幼女にTSして悪役令嬢とダンジョン最下層を目指す【完結】  作者: 芥部


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第147話 二人の再会


 恭しく箱を追いかけるマウ族の人たちを見送り、俺はインテからアイテムを取り出す。

 案の定、エト姫から連絡が入った。


『茅原氏、そろそろ頼む』

『了解』


 祠の周辺は無人になっていた。

 隠密行動が解けない程度の小声で返事して俺はエト姫に渡されたグレネードをまだ開いている扉の内側に投げ込んだ。

 このグレネードは一定の範囲に消音結界を展開した後に爆発するという優れもので、爆発の音を外に伝えない。また、その結界により確実に対象物は壊すものの壊しすぎることがない、という二つの利点がある。

 欠点は目視で確認しないと破壊できたかどうか分からんことだな……。


 無事扉とその周辺が爆破され、移動通路として復活させるには大分時間が必要な程度には破壊できた。


 【隠密行動】を展開したまま俺は村の近くまで移動して、祭りの様子を伺う。


 午後四時、まだ太陽は落ちきっておらず、村の広場は明るい。

 露店や楽器の演奏などもあり、日本の祭りとあまりイメージは違わない。


 おタヒは露店のフルーツ飴を食べつつ、牛頭くんとファビエ社長を引きずり回している。


「あっ、次あれ食べましょう! あの白い餅みたいなやつ!」

「僕はもうお腹いっぱいで……」

「エトワールなら後10個は食べるのに」

『おタヒ氏~、私の分も買っておいてくれ~~~』

『仕事をした後にせよエトワール……』


 おタヒが楽しそうに祭り会場を回っているうちに、ひときわ耳に突き刺さるようなラッパの音が響いた。


神子みこ様方のおなりでございます、皆様、膝をついてお迎えください」


 マウ族の人が膝をつき何かをを拝む。


(えー、私もやらないとダメ?! 私皇女なんだけど!?)


 エト姫のスキル【密談】のグループチャットでおタヒが愚痴る。参加者以外には会話は聞こえない。


 おタヒ的にはあんまりやりたくないよな……。しかし、今は諦めてもらうしかない。


(ここは折れてくれ、落ち着いたらうまいもん喰わせてやるし、エト姫の金でいい筆と紙も買ってやる。あと社長も申し訳ないんですけど……)

(しょうがないわねぇ……)

(了承した。気にしないでくれチケン君。姉の無茶ぶりよりはマシだ)

(金ならいくらでもあるからな! 頼むよ!)


 おタヒは渋々周りの人々に合わせてくれた。あとで美味い物をごちそうしようと思う。エト姫の必要な出資を惜しまないところは美点だ。


 音楽の音に合わせて、広場の高い物見台のようなところに二人の少女が並ぶ。

 あの、金髪の聖女と、黒髪の和風巫女の二人だ。世界観が無茶苦茶だが、いいんだろうか……。


「皆様」

「皆々様」


 二人は声をユニゾンさせる。どこかで聞き覚えのある声なんだが、俺は声優オタじゃないからわからん。


「祭りの時を共に迎えられたことに感謝します、皆で祈りを捧げましょう」

「我らが罪を濯ぐため、神の許しを賜るために」


 マウ族の人たちが何度も頭を下げて、祈りの言葉を捧げる。今までになくざわめく村。


 だが、それを見たおタヒの顔色が変わった。そして、グリセルダも。


(あの神子、今殺していいかしら)

(奇遇だな、同じことを考えていたぞ、おタヒ)

(おタヒ氏、グリセルダ氏、止めてくれないか?! まだ違法薬物も人身売買も摘発できてないんだぞ?!)


 いきなりどうしたんだ、あまりにも物騒すぎる。


(……あの女。忘れようもないわ。兄をたぶらかし、他の公達をたぶらかし、私、あの女のせいで十二回死んだのだもの)

(私も見覚えがある……あれは王太子が予言した、『滅びの使者』こと、光の愛し子、ライトナーの養女だ。おそらくはあの女が……)


 ……見覚えがあるはずだ。

 服は違うけどヴェレルソフトウェアのゲーム「ローレンツェン王国物語」と「蘇芳宮すおうのみやの花嫁」のヒロイン二人じゃねえか!


 実在したのかよ……。

 二人はすっかり戦闘態勢に入る準備をしている、俺もエト姫もまだ準備が何もできていないのに。


(二人共、ちょっと待て、まだ駄目だ!)

(何故だ、今すぐこの手で殺したいのだが)

(どうしてよ! 絶対今殺したほうが世のためよ!)


 やはり二人は頭に血が上っていた。

 何十回も苦しみ抜いて自分が死ぬ原因を作った人間だ。憎くないわけがない。


 しかし、まだ何故そういうことになったのか、という原因追及が終わっていない。

 マウ族の人たちの保護もできていない。

 そして何より、一瞬で死んでそれで終わりだなんて、何の解決にもならない。


 殺してスッキリしたいのは解る。

 スッキリすることは大事だが、それよりも大事なことがあるはずだ。


(考えてみろ。あいつらが一番嫌がることを。ここで死んで悲劇のヒロインとして祭り上げられたら、今まで通り謎の手段で復活して喜ぶだけだろ)

(……ああ、なるほどな)

(そうかも知れないわね)


 俺はゲーム中、ずっと感じていたのだ。

 ヒロインの自己陶酔を。


 自らを善行とイケメンという美しい花で飾り立て、その引き立て役として貶められている悪役令嬢ふたり

 ここで神子が死んでも、悲劇のヒロインとして自己憐憫に浸り、更に自分が悲劇のヒロインであるという認識を深めるだけだ。


 本当にゲームの中だったなら問題はないだろう。

 だが、二人にとっては現実だ。

 自分の仇で、おそらく何回か巻き添えになった自分の周辺の者の仇。たくさんの生き死にが関わっていて、俺が止められるようなものではない。


 でも、まだそのタイミングではない。


(手を下すにしてもあの二人を引きずり落として法の裁きを食らわせてからだって遅くないだろ!)

(……そうね、頭を冷やさないと。私が受けた苦しみの分、絶対にやり返してやるわ!)

(何故あのような行動を繰り返したのか、知らねばならぬな)


 尋問の苦痛、石打、斬首、絞首刑、服毒、脱水に餓死、水死、獣の餌。フィクションでも唖然とするほどの苦しい最後を何度も何度も迎えた二人。


 その原因を究明しなければならない。

 そして、おそらく、今殺したとしてもまた復活する。何十回もグリセルダが死を繰り返したように、あの二人は生を繰り返している。


 俺は別にあの神子に何の感情もない。

 だが俺はグリセルダとおタヒの味方でありたい。二人の気が済むように、神子に法の裁きが下ってほしいと心から願っている。


 ひとまず俺達は祭りの様子を伺い続けることにした。

 俺は隠密行動を解いて、おタヒの横にしれっと移動する。


 他の村人に紛れて頭を下げるおタヒとファビエ社長。もちろん俺も頭を下げる。

 ちらりと顔を覗き込むと、おタヒはいつもの表情豊かな顔から表情がすべて失われており、ファビエ社長は逆に冷や汗をかき、ものすごく顔色が悪かった。


「皆様、それでは”お客様”がいらっしゃいます! ”お客様”をお迎えし、共にひとときを楽しみましょう!」


 神子の言葉にマウ族の人々が盛大に拍手をし、俺達も一応合わせて拍手をする。気持ちは一切こもっていない。


 空に浮いたボックスから、メテクエの一般モブのようなソシャゲっぽい服を着た人々が次々に現れた。地面に降り立ったその人々は、マウ族の人々にもてなされ、設けられた宴席で楽しげに振る舞っている。


 冷たい飲み物や酒、前回の夕食会とは比べ物にならないほど豪華なメニューが並び、箱から出てきた人間たちは皆楽しそうにしていた。

 箱からは他に、食べ物やチケットなどが舞い落ちてきて、皆我先にと拾い上げている。

 豆まきみたいだな……。


(やはり犯罪者収監経路を悪用していたのか。ヴェレルにとってはほとんど私有地のようなものだからな、ここは……)


 収容者ボックスを見てエト姫は苦々しく呟いていた。たしかに収監する時通る道はあるか。


(あの箱再利用できないの?)

(内務庁のものだからな、おそらくこちらからはコントロールできない。ファビエに作ってもらって助かったよ)


 エト姫のスキル【密談】で俺達は話し合っていたのだが、ファビエ社長が厳しい顔をしていることに、まだ気がついていなかった。



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