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無職のおっさん、幼女にTSして悪役令嬢とダンジョン最下層を目指す【完結】  作者: 芥部


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第144話 法律と不文律


「じゃあ社長行こうか……」

「嫌だ! 犯罪者収容ボックスでいい!」

「子供サイズに対応してないし、お前も贖罪のために働くんだよ、諦めろ」


 エト姫の言葉にファビエ社長の顔色は髪の色のように青ざめた。


「なんで僕がこんな目に合うんだ……いや身から出た錆だが……」


 ファビエ社長は泣きそうな顔をしている。

 それを見た俺は菩薩のような笑みを浮かべた。なぜなら可哀想可愛かったからである。

 どういう事情かはわからないが犯罪者である可能性もあるから、油断はしてはいけないのだが……。

 だからなのか、グリセルダの視線がかなり厳しい。


「私もついていこう、チケンや村人に何かあってはいけないからな」

「私も行く~!」

「私は留守番かな! アイスキャンディーもらってきて、二十本くらい!」

「エト姫、今度腹壊しても絶対に治療しないからな……」

「姉上は何をやらかしてたんだ……」

「何もしてないぞ、法律に違反するようなことは!」


 自信満々でエト姫は断言したがそういうことじゃないんだよなあ。


 セーフエリアを出て工房に向かう途中、おタヒが嬉々としてファビエ社長に語る。


「エトワールは面白い女ね! モスマンを生で頭から丸かじりしで子供を泣かせていたわ。見世物小屋の化け物でも中々いないほど怖かったけど、あれでも姫なのよね?」


 それを聞いているファビエ社長は更に死にそうな顔になる。


「氷菓子を十本食べて腹を壊して、牛頭くんの腹に顔を埋めて深呼吸をしたら牛頭くんが嫌がって絶叫してたりしてたのに、全然気がついてない様子だったわね……」

「にょわ……」


 思い出したのだろうか牛頭くんが眉間にシワを寄せておタヒのスカートを掴んでいた。


「姉が大変失礼をした、大変申し訳ない……。僕にできることがあれば申し付けてくれ」

「えっ、いいの! じゃああなたの服を選んでもいいかしら!」

「そのくらいでいいのなら……ああ、姉の選ぶような服だけは許して欲しい。あの服を着るくらいなら全裸でいたほうがまだマシな気がするからな」

「あんなの選ぶのエトワールだけよ……」


 おタヒの服はおタヒが選んだものだ。かなり似合っていて可愛い。なので、おタヒが選ぶならまあ大丈夫だろう。


 しかし、あれは既成のデザインから選んだやつだったはずだ。

 大元のデザインを作ったエロデザイナーがどこかにいるのだ。もしやマウ族の、あの素朴な村の人々の誰かが作ったのだろうか……。あまり考えたくはないが。


 夜だったが長老は喜んで出迎えてくれて、残業をしていたマウ族のお姉さんたちがファビエ社長を手際よく採寸する。ファビエ社長は大人しく採寸を受け入れていた。

 意外におとなしいな、俺と違って……。

 俺みたいに女装なんて嫌だー! とか叫ばないのが偉い。


 そして、おタヒがデザインにいくつか注文をいれる。明日の朝には届けてくれるらしい。


「楽しみにしているわね。支払いは何ナッツ?」

「そんな、祟り神を鎮めてくださった皆様からナッツなど受け取れないマウ!」

「いいんだよ、受け取っておきなよ、そのくらい良い服だよこれ」


 そう、本当にいい服だった。シンプルなワンピースだが着やすいし動きやすい。水着も泳ぎやすかったし、肌触りも良かった。着る人への配慮の詰まった服だったと思う。

 なんであんなエロ水着がラインナップにあるのかだけは謎だが……。


「そうだな、貰えるものは貰っておけ、ノルマがあるのであろう? 足りていれば翌月以降の足しにすれば良い」


 グリセルダの言う通りだ。どうせエト姫の金なんだしパーッと使って欲しい。

 そう思って、俺はインテからくるみの大袋や、お得用ヒマワリの種、高級牧草パックなどをガンガン取り出していった。


 テーブルに積み上がったそれは、前回支払った十ナッツを遥かに超え、四十ナッツになった。よしよし、これでノルマが回避できると良いのだが。


「おお、これだけあればしばらくは保ちそうマウ……! ありがたいマウ……!」


 長老は喜んで頭を下げ、残業してたお姉さんたちも嬉しそうにマウマウしていた。夜型の人もいて皆体質に合う時間に働いているという。

 理想の働き方だな……。

 払ったナッツが少しでもこの人たちの救いになれば良いのだが。


 俺達はもちろんアイスキャンディーはもらわずに帰り、エト姫をがっかりさせた。


「なんでアイスキャンディーないの!?」

「夜中に氷菓子を食うな、昨日腹を壊したばかりなのだろう。法律の前に昨日の出来事に学べ。またじいやに叱られたいのか姉上は!」

「ぐっ……それを出すのは卑怯だぞファビエ!」

「法律に違反していないのだから、じいやへの告げ口だってしてもいいだろう。なあ、姉上?」

「確かに告げ口は法律には違反していないがっ……!」


 珍しい。エト姫が自分が普段やる論法で社長にやり返されている。たまにはそういう目にあって、法律だけが全てではないことを学んで欲しい。


 それでもグリセルダの警戒は解けないので、やっぱしょうがないよな。

 まだファビエ社長と混在していた魂の分析が終わってないらしく、それが終わったら全部話してくれる、と約束はしてくれた。


 俺は別に良い作品を作るクリエイターが皆善良であるべきとは思っていない。作品と作者は分けて考えたい。


 でも、あれほど姉を理解した作品を作り、姉と同じ仕事をしようと頑張っていた人間がそんなに邪悪だろうか、という疑問も持っている。 

 

 その夜は俺を心配したグリセルダとおタヒが俺を挟んで結界を張って寝た。やや暑かったが、諦める。二人に挟まれているので風も俺には届かない。

 本来あるはずの興奮よりも諦めが先に来ている。一人寝の時間があるからこそ興奮しエキサイトできるのかもしれない。


 その頃エト姫は離れたベッドで、下着姿でファビエ社長を抱きまくらにして爆睡していた。恥じらいも何も無い。

 せめて毛布とかタオルケットとか被って欲しい。

 ちらりと見えたファビエ社長の、クールながらも諦めきった顔が印象的だった。



 そして、朝が来た。今日は光の柱が復活する日であり、マウ族の祭りの日であり、違法薬物である”アムブロシア”の取引が行われると想定される日である。俺はエト姫に何をするか質問する。


「具体的にどうするんだ?」

「基本現行犯にはやり放題だからねー、そこを狙いたいね」

「社長、エト姫って本当に法律ちゃんと守ってるの?」

「残念ながら守っている……。ただし明文化されてないものについては気に食わないものは一切守っていない。我が姉ながら余りにも恥ずかしい」


 グリセルダとおタヒは朝食を食べつつ渋い顔でエト姫と社長を見つめている。


「……弟のほうがよほど常識人に見える」

「私も同じくよ、罪人のはずなのにね……」

「常識と法律は関係ないからね! ハッハッハ!」

「姫様、それはお褒めの言葉ではございませんよ……」


 エト姫は笑っているが、二人はエト姫のメンタルが犯罪者に近いと言っていることに気がついていない。インテの冷静な指摘も笑い飛ばしていて駄目な方向に器がでかい。


 残念ムードで朝食が終わりつつある頃、ドアをノックする音が聞こえた。



記念すべき72×2=144話になりました、ここまで読んでくださった皆様ありがとうごいます~!

よかったら好きなキャラとか教えてもらえると嬉しいです

(作者はだいたいみんな好きですが)

コメント書くの面倒な人は↓の絵文字とか☆とかポチポチしていってくれるのも嬉しいです!励みになります!

今暖房用エアコン壊れて悲しいのでよかったら何か反応いただけると温まります

心が


今後もよろしくお願いします~!

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無職のおっさん、幼女にTSして番外編
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