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無職のおっさん、幼女にTSして悪役令嬢とダンジョン最下層を目指す【完結】  作者: 芥部


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第139話 素敵な休日 早朝


 翌朝。俺は二人にダル絡みされている。


「チケン、早く起きよ。朝食を摂らねばならぬ」

「チーケーンー、早く起きなさいよ! お腹すいた!」


 ステータス画面を見るとまだ朝の六時ジャストだった。俺はあのあとエト姫に色々手伝わされて寝るのが一時を回っていた。正直眠い。


「うるへー、俺はまだ眠いんだよ……飯くらいモスマンでもレーションでも食ってろ」

「それを出すのがあなたの仕事でしょ!」

「給料を出してから仕事って言ってくれ、日本円でよろしく」

「日本のお金なんか持ってないわよ!」

「日本円はないがこれでどうだ?」


 グリセルダは金貨をくれた。きれいな刻印がされていて500円玉くらいのサイズだ。ずっしりとした重みがある。


「……これ純金? 混ぜものしてある?」

「純金に決まっている」

「グリセルダお嬢様! チケンはお嬢様のしもべでございます!」


 俺は一瞬で覚醒し膝をつき頭を垂れた。もらえるものがあるなら話は別である。

 まあ、記念に取っておいて絶対使わないとは思うが。

 グリセルダは満足げな笑みを浮かべている。値段分の価値はある笑顔だ。


「あーっ、グリセルダずるい! 抜け駆けするなんて! どうしよう私何も持ってない! えーっとえーっと……あった、これをあげるわチケン!」


 おタヒが渡してきたのはいい匂いのする小さな木の欠片だった。


「これ蘭奢待らんじゃたいっていう香木! すごく高いけどチケンに上げるわ!」

「すっげー! 正倉院から織田信長がパクってきたやつじゃん! さすがおタヒ!」(※)

「ふふーん、そっちの世界でも有名な香木なのね! それで給金は足りるかしら!」


 うおー、持って帰れるかな、持って帰れたら鑑定してもらおう。鑑定はするけどこれも記念品コースだと思う。


「もちろんでございます、おタヒ様! チケンはお二人の下僕にございます!」


 ひざまずくと、二人は満足そうに頷いた。

 俺はもらえる物がもらえるならプライベートは多少は諦める。これがあと一年続くとかならお断りだが。


「で、まずは何をする?」

「朝食を頼む」

「同じく! 前作ってくれたほっとけえきとかいうやつがいいわ!」


 作るのは別にいいけど同じものを出すのもあれだな……ちょっとアレンジメニューでも作ってみるか。

 とはいえ俺のアレンジなので大したことはない。過去に食ったものの中から作れそうなものを出すだけである。


「待て、チケン。インテ嬢、例のものを頼む」

「うん?」

「畏まりました!」


 インテが布の塊を俺に差し出してきた。


「今日一日これを身に着けよ」

「……嫌な予感しかしねえ」


 案の定、着てみるとそれは、夏向けにアレンジされたメイド服であった……。生地が涼しそうなことだけが救いである。グリセルダによって頭にはレースのヒラヒラが装備されとどめを刺された。

 インテさんいつの間にこんな物作ってたんです?

 俺はジト目でインテを見るがインテは知らんぷりをしてエト姫と防音障壁の中で打ち合わせをしていた。


「馬子にも衣装って言うけど、似合ってるわよチケン!」

「うむ、愛らしい。我らが侍女に相応しき装いだ、さあ、朝食を頼む」

「……おうよ。エト姫は食うのか?」

「美味しいなら」

「多分な」


 俺はため息を付きながらホットケーキを焼くことにした。

 朝だし、全員カロリーとか気にしなさそうだし、胃腸も強そうだし、贅沢に作っていこう。

 ということで俺はホットケーキと並行してカリカリベーコンと目玉焼きを用意し、以前もらったチーズを溶かして牛乳と混ぜたりなどしてチーズソースを作る。


 焼き上がったホットケーキに、カリカリベーコンを添えてチーズソースとメープルシロップ、目玉焼きを乗せてハイカロリーアメリカン朝食セットの完成である。

 俺は朝からこんなもん絶対に食いたくないが、この三人なら余裕で食えるだろ……。


「チケン、やはり料理が上手いのではないか?」

「すごーい! 美味しそうね、いただきます!」

「へえ、茅原氏料理上手だねえ、私も食べよう」


 三人は三枚重ねたホットケーキ、チーズソース、メープルシロップ、ベーコン、目玉焼きのカロリー爆弾とでも言うべき飯を美味しそうに食べている。お茶は昨日長老に分けておいてもらったのがあるのでコップにアイスティーを注ぎ入れるだけだ。


 自分の分は流石に食欲がないので以前作っておいた塩むすびと目玉焼きだけである。俺の胃腸の強さは標準程度なので……。


「茅原氏これもっと無い? あとこれ五皿くらい食べたいんだけど」

「無いね、さっさと食べてやることやってこいよ」

「つれないなー……まあいい、本当にやることが多いからね……あ、そうだ。食べ終わったら昨日のウサギ耳の男性に聴取頼むよ」


 どこまでもエト姫はエト姫だった。ゲーム内でもこういうシーンあったな。

 エト姫は不味くない飯という存在を知り飯にドハマリするのだが、絶対仕事のことは忘れないのである。


 これ、多分ファビエ社長が考えた設定なんだろうな……。

 あまりにもエト姫を分かりすぎている。それなのに、なんであんなに悲しいことになってしまったんだろう……。


 俺は、二人の関係のことは全然わからないけど、少し悲しくなってしまった。

 毎朝の儀式、幸運の祈りをする時に、少しだけ俺は祈った。

 この姉弟にも少しでも幸せが訪れますように、と。おタヒがターン延長のスキルをかけてくれたのでこれでしばらく保つだろう。


「とりあえず長老のところに行くか、昨日のうさ耳の人に話も聞きたいし、ほら、食べたいだろ。アイスキャンディー」

「食べたい!」

「食後のデザートか、良いな」


 俺達はのんびりと長老の家兼工房へと向かった。


「おはようございまーす!」

「おお、昨日の皆様……! どうやら祟り神様を鎮めていただいたと聞いたマウ! 村人を救っていただき誠に感謝マウ……!」


 挨拶すると長老や村の皆さまが出てきて、俺達の前に膝をつき拝む。


「昨日助けていただいた村人マウ! 祠番をしていたら、中から祟り神様が現れてとんでもない目に遭うところを命を救っていただき誠に感謝しておりますマウ……!」

「それで、色々話が聞きたいんだけど、聞かせてもらってもいいかな?」

「どうぞ! 何でもお話しますマウ!」


 グリセルダとおタヒはアイスを食べたらすぐに工房を見に行ってしまったので、俺は一人で事情聴取をすることになった。最も、エト姫のスキル【監視】で話は全部エト姫にも流れている。


 話を色々聞いてみたところ、この村があるのは長老のお祖父ちゃんのお祖父ちゃんくらいからなのだそうだ。

 そして、長老の年齢は二十七歳。老人のようだが、実際老人らしい。

 じゃあ、七、八十年前くらいからあるんだろうか、この村は……。


 マウ族と自称している彼らは、五歳で成人して、大体二十年、長くても三十歳くらいには老衰でなくなるらしい。クリームちゃん大人だったんだ……。

 ただ、老衰まで生きられるものは多くなく、途中祠の祟り神に喰われたり、ノルマが足りなくて生贄にされたり、急に現れるモンスターに襲われたり、楽な生活ではないらしい。


 ささやかな漁や、簡単な農作業などもしているが、足りない分は食料チケットやナッツという独自の通貨……要するに、貰い物の食料で補っているという。


 村人の苦労が忍ばれて、俺は少ししんみりした。


 せめて、この人たちが安心して暮らせるように少しでもモンスターは間引きしていきたいところだが……。


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注)織田信長は蘭奢待をパクっていません。

ちょっと一部をもぎ取ってきただけです。チケンは間違って記憶しています。


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無職のおっさん、幼女にTSして番外編
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