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無職のおっさん、幼女にTSして悪役令嬢とダンジョン最下層を目指す【完結】  作者: 芥部


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第136話 貴公子の変貌


「俺はお前を殺して王になりたかった」


 ファビエはうつむいてエト姫の問いに答える。


「王になんかなっても寿命は縮まるしろくなことないだろ?」

「それでもなりたかった。だが、国民は皆お前が王になると思っている」

「……そうなの? インテ、答えろ」

「たしかに、エトワール姫即位論はかなり大勢に支持されております」


 エト姫は困った顔をした。


「本当に本当で真実の話なのだが……私はお前が王という貧乏くじを引いてくれるならそれで構わないと思っていた。私は王になりたくない。あんなつまらん仕事反吐が出るね」

「何故じゃあそれを公言しない!」


 絶叫する弟に姉も絶叫で返す。


「してるとも! 私は死ぬまでこの仕事をすると! それなのに勝手に国民がそう決めつけてるだけだ。もし私が王になったとしても、私の代で王家なんか取り潰しにしてやる。だから、やりたいならお前が継ぐべきだと思っていた」


 ファビエはがっくりとうなだれた。同じように姉もうなだれる。


「だが過去形だ。流石に今のお前は王にふさわしいとはいえないし、そもそも犯罪がバレた時点で王家ごと崩壊するだろ。なんでこんな事を……」

「ヴェレルが、お前をここで殺せば俺が王になれると……」

「なるほどね……あのジジイ、絶対尻尾を掴んでやる」


 エト姫はファビエに向き合う。


「お前が他所で商売をしているだけなら見逃せたかも知れない。違法だけども。だが、もう無理だ。私は私の職務に忠実である。その誇りだけが私を支えてきた」


 自らの運命を悟ったのだろうファビエが、うつむきながら口を開けた。


「一つ聞きたいんだが、俺が星間司法庁の試験に落ちたのは何故だ? 点数は足りていたはずだが」

「筆記も実技も基準を大幅に上回っていたよ。特に筆記は全体の上位0.5%に入ってた。ただ、筆記試験でお前が間違った問題、全部禁忌肢だったんだよ」


 全然事情がわからない俺達にインテが解説をしてくれる。


「試験において選択をしただけで落第する選択肢を禁忌肢と言います。これ選択する人間は職業倫理違反を起こす可能性が高くどんなに点数が高くても受からせるわけにはいかないんです」


 エト姫が頷く。ファビエは真面目に落ち込んでいるようだった。よほど星間司法庁に受かりたかったんだろう。どんな職場なのか俺達にはわからんけど。


「そうなんだよね、例えば『本星と外宇宙の星の人間の生命が天秤にかけられるときどちらを重視するか』なんて設問があった時に、本星の人間を重視するような人間は内務庁では許されても星間司法庁では駄目なんだ。そういう細かいところをペーパーテストで弾いているんだよ。もちろん二次面接三次面接でも弾くけどね」


 エト姫は、ため息を着いた。


「ほら、うちにヨシュアって居るだろ。あれなんか禁忌肢は全部正解してるけど他は酷かったね。でも知識なんて後からいくらでも叩き込める。体力もつけられる。でも、元の倫理観だけは中々変えられない。だから、最初で弾くんだ。まさか、お前が最初で落ちるとは私も思わなかったけどね……」


 全然わからない話だったが、エト姫と同じ省庁に勤めたかったファビエは、本当はエト姫のことが好きだったんだろうか。それとも別の理由があったのか。


「……なるほど、わかった。僕には元より何の素養もなかったのだな」


 ファビエは自分を嘲笑うかのように笑った。

 持っている才能が欲しい才能であるとは限らないということなのだろうか。……俺や相互フォロワーの廃人の皆様にとっては間違いなく神なんだが。

 あれ? さっきまでファビエ『俺』って言ってなかった?


「……ここで僕を処刑するか?」

「は? いや。流石にお前の処遇は私だけでは決められない。本星に戻ってお前には苦痛な時間を延々と過ごして貰う必要がある。……ああそうだ、一つ質問が。七層のあの異形の住人たちについて知っていることは?」


 そう聞くと、ファビエは七層の住人たちについて語りだした。


 ファビエ曰く『合法』延命薬の材料として七層にヴェレルが繁殖力の高い動物を遺伝子操作で進化させた合成種族を養殖しているという。

 人間ではないので法的にセーフ、と言う方向を目指しているらしい。


 そして、七層にはヴェレルの”お客様”を定期的に招いて、新鮮な延命薬を接種させたり、愛玩用動物として販売しているという。


 この七層の村人が人間ではない、人権がないだなんて、俺にはとても思えなかった。


「……そのヴェレルって何者なのよ、私達に関係してるらしいけど、気持ち悪いことしかわからないわ」


 おタヒに言われて気がついた。そういえばそのへんは全然説明してなかったな……。

 エト姫が俺に丸投げするので、俺は知ってる範囲のことを答えた。


 ヴェレルはテオネリアという星の内務庁の長官で、この刑務所を私有地のようにしていること。地球でも手広く商売をしていること。そして、ヴェレルはグリセルダとおタヒのゲームを販売した会社を経営していること。


 そこに、エト姫が追加情報を付け足す。


「そして、ヴェレルには外宇宙で他の星の人間を素材として寿命を延ばす薬を作って売っている疑惑がかけられているんだ……まあ疑惑じゃなくて、この様子ではほぼ確だろうが……」


 グリセルダとおタヒは厳しい目つきをしている、それはそうだろう。

 そんな奴が自分の運命に関わるだなんて言われたら……。

 ここから、二人に俺が何かできることはあるんだろうか。


「ふむ……それでどうする。エトワールはその弟を連れて国に戻るのか?」

「まさか! グリセルダ氏とおタヒ氏が何故ここにいるのかを判明させないと。調べさせたところ、グリセルダ氏とおタヒ氏の住んでいた星域は特定できた。もちろん実在してる」


 やっぱりあるのか、ローレンツェンも東の国も。信じられないけれど、王太子やメガネもいたしな……。

 二人を見ると、なんとも言えない顔をしていた。自分たちの存在を改めて確認されるのは奇妙な気持ちだろう。

 存在を確認されるということは、それまで存在しなかったということと同義だからな……。


「しかし、ファビエ」


 エト姫は眉間にシワを寄せていた。


「お前、そんな喋り方するやつだったか? お前本当にファビエか?」

「……どういうことだ」

「お前、礼儀作法は私よりも上だったし、丁寧な言葉で人を罵るのが得意で私をよくキレさせていたものだが、今のお前は言葉が汚すぎる」


 そういえば、ゲーム内でもファビエは汚い言葉を一切使わずに、丁寧な言葉で人を罵るキャラだった。その分、褒めるのも上手いので温冷浴で整うとファンには人気だったのだが……。


「茅原氏、どんな事を言われたんだっけ?」

「えーっと……メスガキが! とかうるさい、死ね! とか チッ、ガキと女かよとか言ってたような……」

「うーん、ファビエはそんなありきたりな罵倒を使うやつじゃなかったんだ。……なあ、お前、誰だ?」


 ファビエ(?)は困惑したように俺達を見つめ返した。


「そういえば、俺は……いや、僕はいつから俺と言っていたんだ……? いや、俺、なんて使ってたのか……?」

「会ったときから言ってたわよ、ほら、五層だか六層で童女を追っていた時に」

「……本当に?」


 おタヒの言葉にファビエは驚愕を隠せない。


「本当だが?」

「ファビエ様、誠にございます」


 インテがダメ押しのように録画した映像を流したが、確かに口汚く罵っている。


「……姉上、僕に何が起きているんだ? どれも記憶にない……」

「それはこれから調べなくてはならないだろうな……。お前が嘘をついている可能性も、全て含めて」 


 エト姫は行儀悪くあぐらをかいて座り込んで、何かを考え始めたようだった。正直パンツ見えそうだからやめて欲しい。

 俺の夢を壊すな。



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無職のおっさん、幼女にTSして番外編
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