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無職のおっさん、幼女にTSして悪役令嬢とダンジョン最下層を目指す 1/30完結  作者: 芥部


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第128話 マウマウとナッツとチュー


 声がするのは後方だった。

 振り向くと、有名テーマパークに行く浮かれた人間がもれなく装備しているあの帽子を被った子どものような人物が近づいてきた。


 後方にはヤシの木っぽい林があって木陰がある。


「罠かもしれないけど木陰はほしいよな、行ってみるか……」

「このままだと暑気あたりしてしまうわ……」

「エトワール、何故ここに物売りがいる?」


 グリセルダが真っ当な質問をした。刑務所に物売りがいるってレアだよな。


「まっ…………たく解らない! ガイドブックによれば七層は原生林に囲まれて蚊やブヨ、アブ、ヒルが一杯なのにマダニやなどの致命的な病害虫はいない、マニアックなサバイバルスペースと書いてあるんだけどな……」


 エト姫はため息を着いている。本当にマニアックだな、それ。


「でもそれ、600年前の本なんだろ? 信じるだけ無駄じゃないのか?」

「でも買ったのは三十年前だ。見てみろ、ここに三十年前の日付が書いてある」

「インテ、そうなの?」

「はい、これは三十年前の復刻版ガイドブックですね。一時期本を読むだけで行った気になるというのが流行りまして……」


 全然頼りにならねー本だな、あとテオネリアの流行がインドアすぎる。

 俺達が困惑しているうちに、思ったよりも小柄な物売りの女の子が直ぐ側まで近づいていた。


「こーんにちはー! えっへっへ、お姉さんたちかわいいね~! こんな素敵なビーチでは水着を着たら良いんじゃないカナ? おじさんおすすめの水着があるんだけどなー! えっへっへ!」


 なんだろう、この微妙なおじさんみたいな喋り方のネズミ耳ガールは……。

 もみ手をするネズミ耳ガールの前に、エト姫が立ちふさがる。


「うーむ、君、営業許可証は?」


 エト姫が厳しい顔でネズ耳ちゃんに向かう。


「へっ!? なにそれマウ!?」

「たとえここが刑務所とは言えテオネリア内で商売をしているということは営業許可証と納税証書、販売物品質保証書の三つが必要になるはずだ。また店舗外での営業には勧誘販売制限法による勧誘販売許可証が必要なはずで――――」


 お、エト姫がエト姫らしさを発揮している。いいぞ、俺はこういうエト姫を見るのが好きなんだよ。

 俺達はここはエト姫に任せて見ようということで後ろで待機することにした。ここの法律のこととかなんも知らんしな。


「しらないマウッ」


 ネズ耳ちゃんは困った顔をしている。本当にいかにも初耳だ、と言わんばかりの顔だが、実は手練れの詐欺グループなんてこともあるのかも知れない。まあ無い方に十ペリカ賭けるが。


「知らないでは済まされない、また販売者は販売者であるという腕章やバッヂ、帽子などがわかりやすい場所に装備することが推奨されており、店舗の場所を詳しく告知する義務が――――」

「知らないーっっ! チューッッ! 言ってること難しくてわかんないマウーッ!」


 涙目になったネズ耳ちゃんはしゃがみ込んで頭とネズ耳を抱え、尻尾をプルプル震わせだした。

 エト姫じゃやっぱ駄目か……ゲームのストーリーでもエト姫にファーストコンタクトさせてまともに成功したことなかったもんな。だいたい法律用語の連打にビビられて逃げられる。

 本物エト姫なら行けるかと思ったんだが……。


「怖がらせてごめんね、お嬢ちゃんおいくつ? お名前なんかも教えてくれると嬉しいな」


 俺は震えるネズ耳ちゃんの前にしゃがみ込んで話を聞いた。


「あたい6歳、多分。名前はクリーム!」

「俺はチケンっていうんだ。三十歳。よろしくな」

「チューッ?! どう見てもあたいより年下マウ! なのに長老より年上マウ……」


 ずいぶん平均年齢が若い種族のようだ。


「とりあえず、お店連れてってくれる? 買うかどうかは見てから決めるよ」

「ほ、ほ、ほんとマウ!? よかったーっ、これでノルマ達成できるかもマウ!」


 ノルマ、あるんだ……。どんなノルマだか知らないが可哀想に……。


「茅原氏、法律では……」

「まあ待ってくれエト姫。私有地でお店ごっこしてる分には流石にテオネリアでも合法だろ? 最後まで様子を見よう」

「まあ確かに……」

「それに、実際俺達には夏服が必要なんだよ……エト姫、その格好でこのエリア抜けられるのか?」


 そう言うとエト姫も反論できなかった。

 俺はまだ現代日本の夏を体験してるからマシだが、エト姫とグリセルダとおタヒの顔が赤い。汗もダラダラかいている。夏服も日傘も絶対に必要なのだ……。


「チュッチュッチュー! マウマウマウー!」


 楽しげなクリームちゃんの先導で、俺達は木陰の村に到着する。


「木陰に入るだけで大分涼しいわね!」

「ああ、風が爽やかで涼しいな」


 おタヒとグリセルダがホッとした顔をしているが、いまいちエト姫は納得してない模様だ。まあしょうがないよな、でもそもそもこの人たちがテオネリアの国民かすらまだわかっていない。

 必殺技の『主文後回し!』はまだ出すべきタイミングではないと思う。

 メテクエのエト姫(初代)の必殺技がそれなんだよな……。今思うとすごい名前の技だな。誰が作ったんだろう……。


「ほっほっほ、いらっしゃいマウマウ……お客さんですかな?」

「うむ、我らはテオネリア星間――――」

「はい!! そうです! 夏服を見に来ました!!!!!!!」

「いらっしゃいませ、わしは長老のロボロフと申すマウ、若い人は元気じゃのう」


 名乗りを上げようとしたエト姫をクソデカボイスで誤魔化していく。おじいさんは聞き取れなかったのか、無事にやり過ごすことができた。

 エト姫がここで査察なんか始めたら住民が恐怖するからな……。


 エト姫は不服そうな顔をしている。が、俺は知っている。砂浜の砂がブーツの中に入ってジャリジャリして今すぐにでも脱ぎたいことをな……!

 だって足をモジモジさせてるからな。せめてサンダル買ってから事情聴取しようぜ。


「しかし素敵なご商売ですねえ、ちなみにお支払いは何を使えば?」

「ここでの通貨はナッツになってるマウ。紙のお金でもいいマウよ」

「ナッツ……?」


 紙幣はともかく夏だからナッツなのか……?

 と思ったがもしかして、ピーナッツとかくるみとかの方か……?


「金貨ではだめか?」


 カバンからじゃらりとナチュラルにでけー金貨を取り出して並べるグリセルダ。


「駄目マウ。こんなのかじっても美味しくないマウ」


 かじる。


「テオネリアの共通データクレジットでは?」

「駄目マウ。こんなん腹の足しにもならんマウ」


 なるほどわかった。


「インテ、ちょっとカバン開けて」

「畏まりました!」


 俺はゴソゴソとカバンから食料を取り出していく。

 生米。干し肉。アーモンドチョコ。チョコレートバー。料理用のチーズ。ナッツ入りクッキー。どれか一個くらいヒットするだろ……!


「これの中でナッツに相当するものはありますかね!」

「うひょー! これは高級な白ナッツマウ! あ、これも茶ナッツ! これ、黄ナッツマウ! すごいマウ! おおナッツ持ちのお客さんだチューッッ!」


 生米と干し肉とチーズがナッツ認定されたようだ。一安心だ。


 詳しく話を聞いてみると食べ物との物々交換、それの単位がナッツということらしい。たまにお客さんが着てナッツを置いていき、その分だけ服などを買っていくらしい。


 こんなところに客が来るのか?



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無職のおっさん、幼女にTSして番外編
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― 新着の感想 ―
揚げ足取り感想でスミマセン、マダニを昆虫扱いとは……厳密と虫食を愛するエト姫様、ぬかったナ!? しかし、次話も含めて、本当にポンコツなクールビューティー?たなぁ、もっとやれーw
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