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無職のおっさん、幼女にTSして悪役令嬢とダンジョン最下層を目指す  作者: 芥部


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第12話 失望と希望



「茅原さん大丈夫ですか?」


 技師さんと看護師さんが心配そうな顔をしている。

 医者は慌ててモニターを眺めるが、ホッとした顔をした。


「体調は大丈夫そうですね、心拍数と脳波がちょっと興奮したせいで大きく変動していますが……。顔色が悪いので、ここで終わりにするのが良さそうですね」

「はい……」


 よかった、ドクターストップがかかって。このあとどんな顔でゲームすればいいのかわからなかった。


「お疲れの所申し訳ないですが、やはり臭いや触覚はありましたか?」

「ありましたよ、触覚も最初からありました。ほら、タイトルで花びらが降ってくるじゃないですか。あれ、触れましたもん。ゲーム最初のイベントでも王太子の腕組みの感触とかあったし……」

「臭いはどんなのがしました?」


 俺は少し考えて記憶を思い返す。


「タイトル画面の花からいい匂いがしたのと、マッチョ先輩が臭かったのと、あと最後の革命イベントで硝煙の匂い? なんか花火の跡みたいな臭いがしたのと、お茶の匂いもしたし最後の方のグリセルダの血の匂いとか、とにかく色々してましたよ」


 そう言うと、医師は何かを深く考え込む様子でいた。看護婦さんは笑いをこらえているようだった。


「わかりました、大変貴重なデータありがとうございます。今日はゆっくり休んでくださいね。明日から別のテストになりますが、大丈夫そうですか?」

「大丈夫です」


「よかった。でも、体調が最優先ですから。無理そうなときは看護師に伝えてくだされば1日お休みに出来ますので」

「お気遣いありがとうございます、わかりました」


 それでも俺には渋沢50人ハーレムという目標がある。

 休むわけにはいかねえんだ……。


「では本日はこれで終了ということで……」


 と医者が切り出し、看護師さんと技師さんが検査機器などを片付けに入る。

 俺は、ふと気がついて看護師さんに声を掛ける。


「あの、看護師さんちょっといいですか?」

「なんでしょう? やっぱりお疲れですか?」


「そうじゃなくて。看護師さん、ローレンツェンガチ勢ですよね?」

「まあ……えへへ」


 やっぱそうか。テレ顔をしていてちょっと可愛い。


「グリセルダって救済ルートないんですか?」


 そう質問する俺に、心から残念そうな顔をする看護師さん。


「無いんですよ……他のキャラは全員幸せになるルートがあるんです。用務員のおじいちゃんまで用意されてるんですけど、グリセルダだけはグリセルダ視点のルートも、攻略対象にもならず、エンディングに出てくる場合必ず大体悲惨な最後を遂げてるんですよね……」

「ええ……」


 制作者、グリセルダに恨みでもあるのか?


「グリセルダって誰にも心を開かなくて誰にでも塩対応だから、作中のキャラの殆どに嫌われてるんですよ。そのせいですかねえ。プレイヤーの一部ではマニアックな人気なんですけど……」


 分かる。俺もそっちのマニアだから。


「そうなんですか……グリセルダルート、欲しかったなぁ……」

「そういうのはですね、メーカーにご意見送るといいですよ! 同じメーカーでご意見送られまくったキャラの追加DLCが湧いてきたとかの実績があるんで!」

「なるほど、わかりました! 家に帰ったらやってみます!」


 良かった、一縷の希望が湧いてきたぞ。

 帰ったら治験バイト代でゲーム買ってメーカーにご意見送ろう。久々にメテクエ以外でドハマリするいいキャラだった。


 技師さんと看護師さん、そして医師は片付け終わると頭を下げて出ていった。

 俺は早速、ナースステーション前の談話室でスマホを出して検索してみた。俺以外ここを利用するものはいないのでのんびり出来る。


 SNSや攻略サイトの他に匿名掲示板のローレンツェン解析スレなんかも覗いてみたがデータとしてグリセルダの救済ルートが存在せず、制作者がグリセルダのアンチなんじゃ? とまで言われていた。

 確かにそれは俺も感じる。


 ちなみに誰かがグリセルダアンチな意見を書き込むと『おっ、メーカーのサクラか?』『おめーシナリオライターだろ』とかが定型文のように書き込まれるほど皆の認識も一致しているらしい。


 SNSで検索したら俺の好きな神絵師もグリセルダのファンアートを描いており、俺は拝みながらいいねとリポストをして、さっき作ったグリセルダフォルダにそのファンアートを保存させていただいた。



 検索して皆の感想などを見たが、グリセルダはアンチとファンにきれいに分かれるキャラのようで、どちらの意見もわからんでもない、という感じだ。

 セリフがキツイから嫌いな人の意見もしょうがないと思う。


 などと思いつつ、俺はスムーズにメテクエと他スマホゲーのデイリーを済ませ、相変わらず美味な病院食を米粒一粒残らずに完食した。

 なんとなく足りなかったので追加で売店で買ってきたカップ麺も追加した。


何しろ、グリセルダを探すためにマップの中を全力疾走し続けていたせいか、VRなのにものすごく腹が減っていたのだ……。

 その日は普通に寝た。


 あの辛いエンドを思い出して寝られないかも知れない……と思ったのだが、俺の特技はどこでも快眠できること。

 今日も消灯して暫く経ったら夢も見ずに健やかに爆睡していた。

 

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無職のおっさん、幼女にTSして番外編
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