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無職のおっさん、幼女にTSして悪役令嬢とダンジョン最下層を目指す 1/30完結  作者: 芥部


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第113話 八尺様 VS 5フィート9インチ


 目が覚めると俺はまた二人に挟まれていた。

 そして、二人がご機嫌斜めだった。


「チケン! 今日は一緒に寝ましょうって言ったじゃない!」

「俺は一人で寝たいんだが……」

「我らと一緒がそんなに嫌か?」

「好き嫌いじゃない。二人に挟まれてると体温で暑いんだよ……朝起きて服がじっとりしてるのは夏だけで十分だ」


 そう言うと二人は納得いかない様子をしていた。


「まあいいや、朝飯はもう何か適当でいいか、外に出る前から疲れちまった。この謎のレーションでいいよな」


 俺はインテにレーションを出してもらう。

 駅弁のように温め機能があるので温めてやると、二人は面白がっていた。しかし、食べ始めるとその様子は急変した。


 二人は今までに見たことのない顔で飯を食っている。


「……味が濃いな。そして本当にこう、最低限という味だな……」

「人生で食べたもので一番まずいわ……塩辛すぎるし煮込みすぎてるしそれなのに味は濃いし油っぽいし……」


 しょんぼりした口を、グリセルダが淹れてくれた紅茶と、レーションに入っていた最後の良心のようなクッキーで慰める。

 このクッキーも暴力的な甘さであり、俺には食べるのが辛かった。最後はお茶で流し込むように完食した。


「ほんっ……とうに、お茶が美味しくてよかった! この弁当はもう封印したほうが良いわ、食べ物への冒涜よ!」

「温かいものなのにあんなにまずいのは生まれて初めてだったな……」


 コウモリですら文句一つ言わず食ったグリセルダが愚痴っている。相当だよな……。

 俺は心から深く反省した。


「そうだな、ごめんな……こんなまずいなら普通に作るべきだったよ」

「でも私は何も作れないからしょうがないわね……」

「同じくだ……」


 レーションのまずさに対して語り合うことでまた結束力が生まれたのを見計らい、俺は今日の予定について相談する。


「それで、今日は八尺様に相談してできたらヌシのところまで案内してもらう、って方向でいいか?」

「それしかあるまいな」

「賛成! 昨日エリーゼお婆ちゃんやスカイラインお婆ちゃんとはお話できたけど、八尺とやらとは全然お話できなかったもの」


 俺達は荷物をまとめ、水を補給して外に出た。


 試験官――――名前をエリアキーパーというらしい。そのエリアキーパーに挨拶をすると、外にはターボばあちゃんの群れに囲まれ朗らかに談笑する八尺様の姿があった。


「ポポポポ」

「ヒヒヒ……」

「ポポポ!」

「ヒャヒャヒャヒャ……」


 やっぱ翻訳してもらわないと全然意思疎通できないな。俺達はゴーグルを装備し、翻訳機能をオンにしてもらった。


「おはようございます!」

『ポ……おはよう。休めた?』

「おかげさまで」


 そう言うと、帽子の下でにこりと笑う八尺様。うーん、かなり可愛い。


『おはよう、旦那とお嬢ちゃん達。やっぱり決意は変わらないのかい?』

「そうだなあ。だって、永久にここに居るわけにも行かないからな……」

『ポ……辞めたほうが良い。あのヌシ強い。お前たちでは返り討ちにあいかねない』

「でも俺達は今までヒュドラも倒したし、四層ではクソでかい怨霊も倒してる。巨大カマキリも倒したし、レプティリアンも倒した。実績はあるはずだ。それでもダメか?」


 俺は丁寧に実績を開示した。


『ダメ。これ以上子どもが傷つく。嫌』

「俺、子どもじゃないんだけど……一応これで成人してるし、30歳だし、そう言う種族ってだけなんだけど」

『ダメ、こんな可愛い男の子なおさらダメ!』

「ちょっと八尺とやら、じゃあ女なら良いってこと?!」

『女の子もかわいい! ダメ!』


 うーん、どうも子どもに対して執着が働いているのは俺の知ってる八尺様と同じのようだ。


「俺の国だと八尺様は、子どもとかに取り憑いて殺す妖怪だったんだけど、今ここに居るあなたもそうなんですか?」


 あえて質問してみる。


『ポ……違う。私、ここ守れって言われた。通すなって言われた。過去に負けたの、ヌシの一回だけ。変な男も最近来たけど追い返した』

「ちなみに何年前からここに?」

『ポ……多分、十六年』


 十六年前からなのか。


『ちょっと前ここに子ども来た、あなたくらいの大きさ』


 急に新情報が開示された。なんで子どもが?


『でも、怪我をしてしまった、もう子ども、怪我、見たくない……』

『ああ、あれはかわいそうだったね……』


 エリーゼばあちゃんも知ってる話なのか。しかし、その子どもは普通の子どもなのだろうか? 俺達のような冒険者とかプレイヤーの可能性はないのだろうか。


『だから、ダメ。通さない』


 うーん、ダメか……。こちらを思いやってのこととはわかるが、らちがあかない。できれば説得したかったんだが。



「つまり、私達に力があるのを認めさせればよいのであろう?」


 グリセルダは立ち上がって剣を抜いた。


「八尺とやら、立会をしようではないか。私単体でもこの二人を守れる証明をしよう。エリーゼ嬢や他の仲間と連れ立っても構わぬ。そこまで言うのなら、立て。力を持って己の主張を通せ」


 あー、なるほど。でも、グリセルダ一人で大丈夫だろうか、いや多分大丈夫だと思うんだが。俺も加勢しようかと立ち上がると、グリセルダが止めた。


「大丈夫だ、チケン。そこで見ていろ。巨人退治など数十回とやっている……なんということもない。おタヒもそこで見ているが良い」

「大丈夫なのか?」

「えー。じゃあちょっとだけ術をかけるのは?」

「それだと手加減もできぬ、要らぬ」


 それを聞くと、ちょっとムッとした顔で八尺様が立ち上がった。


「ポ……ポ……生意気な大女……倒す……!」


 自分のことをぶん投げつつも八尺様がかなりのスピードで動き出す。

 長い髪を武器のように操りながらグリセルダに向かう。


 それをグリセルダはギリギリのところでいなし、俺の動体視力でもぎりぎり捉えられるような斬撃で髪の毛を切り落とそうとする。

 いくらかの髪束は切り落とせたが、あっという間に髪の毛は再生する。


 グリセルダが長身とは言え、八尺様は2メートル以上だ。いくらグリセルダがサーベルを持っているとはいえリーチがあまりにも違う。


 グリセルダの攻撃を八尺様は髪の毛でいなし、それでも直撃しそうになると後ろを向いて髪の毛でガッツリガードする。ガード後即その長い手足で襲いかかるも、グリセルダは軽やかに飛び越えていく。


 そういえば、グリセルダ、素早さも結構あったんだよな、力も器用さも。

 明らかに低いのは幸運と魔力くらいだが、それでも学年で十位には入るほどの魔力で、幸運が1なのがネックなくらいだったな。

 いいなー、俺もそう言うハイスペに生まれたかったな。


 アクションゲームの剣士のように、グリセルダは八尺様に軽やかに斬りかかる。やがて、形成は逆転し、攻めかかるグリセルダに対し八尺様は防戦一方になっていく。


 しかし、決め手がなく泥仕合のようなものが続いた。


「……」


 ん? グリセルダが何かを呟いていた気がする。聞き取れない。そんなことはお構いなしに、八尺様が髪の毛と長い手足、そして黒い瘴気を一気に口から吐き出しグリセルダを追い詰めようとする。


「二百年だ、八尺よ」

『……ポ?』

「私は二百年お前のようなものを何度も相手にしてきた。なので、無傷で無力化できると思っていた。しかし、お互い無傷で済ませられるような相手ではなさそうだ、許せ」

『ポ!!』


 自分が甘く見られたことに八尺様が怒りの声を上げる。

 黒い瘴気と髪の毛、長い手足のことごとくを使って襲いかかるが、グリセルダは軽やかに飛び越え、八尺様の後ろに回る。


 ガードしようとする髪の毛をサーベルで絡め取ると、ショートソードを抜き、その足首を一閃する。両の足首から一気に吹き上がる血しぶき。

 グリセルダ、両利きなんだ……すげえな。


 そして、流石に起き上がれなくなった八尺様。

 グリセルダは長く伸びた髪の毛をサーベルで切り落とした。足首から血が吹き出しているせいなのか、髪は再生しなかった。


『ポ……ポ……ポポポポ!』

「まだやるのか?」


 グリセルダは八尺様の首元に、いつでも殺せると言わんばかりにサーベルを突きつけた。




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無職のおっさん、幼女にTSして番外編
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