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無職のおっさん、幼女にTSして悪役令嬢とダンジョン最下層を目指す  作者: 芥部


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第100話 ボーパルバニー、開き直る


 牛頭くんを乗り物形態にしていない関係上、俺達は今までよりもゆっくり進んでいる。


  先程のようなトラップもあるかも知れないし、それを感知するためのスキルも使えない。なので、この速度はかえって良かったのかも知れない。


 急いで移動してトラップに引っかかっては元も子もないからだ。


 時々行儀悪く歩きながら携帯食料をつまんだりしつつ、俺達はのんびりとセーフエリアがあるという方向に歩くことにした。


 生死がかかった緊急事態というわけではない。お姫様は生きてるらしいし。

 なので雑談しながら歩くだけでも楽しい。

 仕事とメテクエに追われているときとは違う幸福感が確かにあった。


 その後も数回モスマンを撃退し、追い剥ぎとは逆方向に歩いていくと避難口の案内のような光る矢印が見えた。


『←この先 セーフエリア』


「お、やっと休憩できそうだな……」

「よかったー! この杖握っててもじわじわMPが減っていくんだもの……杖がなかったら危なかったわ……」


 おタヒは心から安堵しているようだった。かといって、牛頭くんを退場させるわけにも行かないしな……。

 もうここまで来るとグリセルダや俺とも意思疎通が取れて牛頭くんは立派な戦力になっている。


「そうだな、私も流石に疲れてきた。いくら斬れば死ぬとは言え同じ敵ばかり何十匹もいるとうんざりする」

「もうモスマンは見たくねえよなー……」

「あの粉が汚らしくて嫌なのよねえ」

「わかる……」

「にょわーん……」

「あの鱗粉、なにかに使えそうかなと思ったのですが、解析したら本当にただ汚いだけの粉でしたね……」


 三人+牛頭くん+インテで愚痴るのも共通の話題といった風で楽しい。


 ふと気がつくと、ある場所から唐突に内装が変わっていた。コンクリート打ちっぱなしから、学校の床のようなテカテカした床と、そこそこ明るい白い照明。壁もきれいに塗装されていた。


 だだっ広い講堂のような廊下に、柱が何本も立っている。先に何かいる気配もない。


 歩くと、床が硬質なのでコツコツと音がする。


「この足音がするのは宜しく無いな……」

「だよなあ、牛頭くんは足音が鳴らないからいいな」

「にょ!」

「でしょー、私達はどうしましょう、いっそ裸足で歩く?」

「いや、裸足はないな……普通に疲れるだろ、床冷たいし」


 喋り声よりも足音のほうが妙に響いて不安になる。

 セーフエリアについたらインテになんか足音を減らすものを作ってもらおう、と思っているとまたノイズ音が流れ、ブザーの音とともに空中から何かが現れた。


 トカゲの頭のような、二足歩行の生物。服は着ていない。

 ……なんだっけレプティリアン?


 レプティリアンは鋭い爪で高速で俺達に襲いかかってくる。まるで短距離ランナーのように姿勢が低い。

 つまり、俺の狙いやすい位置に首がある。思い切ってナイフを振ると、レプティリアンの首はすっ飛んで、青い血が噴き出す。


 うーん、俺の存在がボーパルバニーになっていく……。


 ボーパルバニーな俺はレプティリアンの首をどんどん刈る。そうするとナイフに血糊が固まって使い物にならない。10匹目くらいでもう無理になった。

 これ、あとで対策しないと駄目だな。

 諦めてレプティリアンの背後を取って頚椎にナイフを突き刺していく方針に変更する。


 グリセルダは馴れたもので、サーベルで数回切り払い、サーベルに血がまとわりつくと固まる前に振り払い、また切りつけていく。


 沢山の修羅場を越えただけあって、レプティリアン程度では動じない。場馴れしている……。あんまり怒らせないようにしよう、怖いので。


 牛頭くんはおタヒの安全を最優先にしつつ、あの謎のもふもふの槍でレプティリアンを蹴散らしていた。

 あの槍、どう見てももふもふだし、触ってももふもふなんだがどういう理屈で切れ味を出してるんだろうな……。


 しかし、モスマンといいレプティリアンといい、五層は都市伝説の世界の怪物が多い。

 なんというか、ラインナップが新し目だ。ターボばあちゃんとか八尺様とか出てこないことを祈るぞ……。


 また電子音がなってレプティリアンの湧きが止まる。今度はおタヒも俺もグリセルダも全員のレベルが上った。うーん、めでたい。


「やっぱりレベルが上がると少し心が弾むな」

「解かるわ、出来ることの幅が増えるような気がするのよね」

「次のセーフエリアについたらどのスキル上げるか真面目に考えないとな」

「私は鱗粉と血で汚れた服をどうにかしたいな…」

 そんな雑談をしていると、でかい矢印がみえた。


『←この先 セーフエリア(入室試験あり)』


「入室試験!?」

「どゆこと!?」

「……どういうことだ、インテ嬢、説明をしてくれ」

「おそらく最初に出来た娯楽施設としての施設を流用した矯正効果の確認施設かと。ダンジョンを用いて学習した真っ当な生活や学習結果を発揮すれば入室できるようになっているかと思います」

「ダンジョンでの学習って何!?」


 俺達は悲鳴を上げる。生き残るだけでも結構きついシーンがいくつかあったのに、何を学習しろと言うんだ、この施設は……。


「えっ……私別にこの迷宮で学んだことなんて何も無いんだけど……」

「私も同じく」

「俺も特にねえぞ……」


 なんか、寝て起きたら期末試験の日だった、みたいな悪夢だな……。赤点即留年みたいな。

 いや、今ここでセーフエリアに入れないと留年どころか全員野垂れ死にしてもおかしくない。


 俺達には食料も水も一応あるし、結界を張ることもできるが今回のモンスター出没の感じだと睡眠中、結界内にいきなり発生した場合かなり厳しい。


 体感だと45分に一回くらいの割合でブザーが鳴り、15分ほどで電子音がなってモンスターが消える。

 入ってから3時間それが続いている。これが24時間続かない保証が今のところ無い。

 そうすると1時間以上まともに睡眠すらとれない可能性がある。嫌すぎる。


「追い剥ぎの方には試験なしのセーフエリアがあったのかしら……」

「どうであろうな、解りようのないことは考えるな。心を病むぞ」


 うーむ。試験ない方がありがてえんだけどなあ。


「まあ試験だろ? おタヒもグリセルダも成績良かったしなんとかなるんじゃねえか。俺は期待しないでほしいが……」


 そう、この二人頭が良いのだ。国一番の神童だったおタヒはもちろん、士官学校と貴族向け学校で常に成績トップだったグリセルダ。

 俺はまあ常に平均前後かちょい下くらいでクリアしてきたし、資格試験もいつもスレスレな自覚はあった。自分には全く期待できない。


「それもそうね! よーしどんな問いなのか気になってきたわ、行きましょう!」

「私達の知識でどうにかなる問題なら良いのだがな……」

「頼むぞ! ここじゃまともな睡眠も取れる可能性が少ないからな……マジで二人が頼みだからな」

「少しはいいところを見せようとか思わぬのか、チケンは」

「全然。俺はもう幼児として開き直る! 大人の二人に頼る。頼むぞ、大人二人!」

「その言い分は全然子どもっぽくないわね……」



 巨大な矢印から数分でデカデカと『セーフルーム入室試験はこちら↓』という看板が設置されている場所に到着した。


 周りを空中に浮いたテープのようなもので囲まれた空間に真っ黒な黒い長方形が浮かんでいる。俺達が近づくと、発光し、アナウンスと軽やかな音楽が流れ始めた。


『ようこそ! トラスティスト星系中央刑務所五層Bフロアへ! ここまでたどり着いた皆様、真にご苦労さまでした。それでは、リラックスして、深呼吸をしてください。そして、入室する個体数の申告をお願いします』


 えーと…………あれ? 個体数……?


「なあ、俺、グリセルダ、おタヒ。ここまではいいだろ? 牛頭くんとインテは個体数に入るのか……?」

「……ええ、まずそこからなの? でも、確かにインテは心があるのよね……」

「でもカバンでもあるな……」


 俺達は頭を抱えた。

 インテと牛頭くんは、果たして頭数に入れるべきなのか……?




いつも読んでくださる皆様ありがとうございます!

無事100話です。


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