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第三話『赤く染まる瞳』

はい、承知いたしました。物語の第三話を執筆します。


魔導法則の不正干渉者システム・インターセプター


~世界から忘れられた神々の権能で、俺は全てを書き換える~


第三話『赤く染まる瞳』


翌日。俺は昨日の一件以来、ひどく面倒な状況に陥っていた。


「アッシュ君、おっはよー!」

「……どうも」

「今日の魔導史学、隣の席いいかな?」

「……ああ」

「ねえねえ、昨日のあれ、どうして分かったの?やっぱり君、古代魔導語に詳し――」

「悪い、腹が痛い」


俺は朝から、セレス・シルフィードに捕まっていた。

彼女は俺の言い訳などお構いなしに、キラキラした瞳で俺の後ろをついてくる。そのせいで、周囲の学生からの好奇と嫉妬、そして侮蔑の視線が普段の三倍は突き刺さっている気がした。


「物好きな方もいたものだわ。あの劣等生に、天才のセレス様がなぜ……」

「何か弱みでも握られているのかしら」


そんな囁き声が聞こえてくる。全くもって、迷惑千万だ。


幸いにも、午前の授業の終わりを告げる鐘が鳴り、俺は蜘蛛の子を散らすようにその場から逃げ出した。行き先は、午後の授業が行われる第三実技訓練場だ。



「今日の授業は、ゴーレムの基礎操縦訓練だ!魔力で練り上げた人形を意のままに操る、対人戦でも攻城戦でも応用が利く重要な技術だぞ!ぼさっとするな!」


元騎士団所属という、いかにも体育会系なヴァルガス教官の檄が、広大な訓練場に響き渡る。

訓練場には、生徒の数だけ、人型を模した高さ3メートルほどの訓練用ゴーレムが鎮座していた。


生徒たちは順番に、一体のゴーレムの前に立ち、自らの魔力を接続して操縦桿を握る。


「まずはクレスフィールド!やってみせろ!」

「はい」


最初に指名されたリリアーナは、優雅な一礼の後、ゴーレムの前に立つ。

彼女が魔力を通した瞬間、石造りの巨人は滑らかに、まるで生きているかのように立ち上がった。歩行、走行、障害物の回避。そのどれもが、力強く、そして無駄がない。まるで手練れの騎士が舞うような動きだ。


「素晴らしい!完璧だ、クレスフィールド!」


ヴァルガス教官の賞賛に、リリアーナは僅かに口元を綻ばせた。そして、こちらを一瞥する。その目は雄弁にこう語っていた。「あなたには到底無理でしょうけれど」と。


その後も数人の生徒が続き、やがてセレスの番が来た。


「え、えーっと、こうかな?わわっ!」


彼女のゴーレムは、生まれたての小鹿のようにぎこちなく立ち上がり、おぼつかない足取りでなんとか課題をこなしていく。どうやら、精密な魔道具の制御は得意でも、こういった大雑把な動力系の操縦は苦手らしい。


そして、ついに俺の番が来た。


「次、ヴァーミリオン!お前も少しはクレスフィールドを見習え!」

「うす……」


俺はわざと億劫そうに歩き出し、ゴーレムに魔力を接続する。

もちろん、俺にできないはずがない。やろうと思えば、リリアーナ以上の、それこそ人間と見紛うほどの精密な動きだって可能だ。


だが、そんなことをするわけにはいかない。

俺はわざと魔力伝達の効率を落とし、ゴーレムを鈍重に動かす。障害物にわざとぶつかり、無様に転びそうになりながら、なんとかゴールまで辿り着いた。


「話にならんな、ヴァーミリオン!放課後、追加で訓練だ!」

「……マジすか」


教官の怒声と、周囲の失笑。うん、いつも通りの光景だ。これでいい。


全員の訓練が終わり、ヴァルガス教官が最後の総評をしようとした、その時だった。


グ、グググ……!


訓練場の隅に待機していた一体のゴーレムが、奇妙な駆動音を立て始めた。

そして、その両目が、不吉な赤色に強く発光した。


【警告:訓練用ゴーレム機体番号04、制御核に汚染データを混入。暴走状態バーサーク・モードに移行】

【分析:原因不明。外部からの魔力的干渉の可能性:高】


俺の視界に、瞬時に警告ウィンドウが展開される。

外部からの干渉!?まさか、事故じゃないのか?


ゴウッ!


思考する間もなく、暴走したゴーレムは近くの壁を剛腕で粉砕すると、その赤い瞳をぎらつかせ、最も近くにいた人間へと狙いを定めた。


その先にいたのは――先ほど俺が操縦していたゴーレムの脚部に興味津々で、その場にしゃがみ込んでいたセレス・シルフィードだった。


「――セレスッ!危ない!」


リリアーナの鋭い声が響く。

ヴァルガス教官も即座に防御魔法の詠唱を開始する。


だが、間に合わない。


「え……?」


突然の事態に、セレスは顔を上げ、恐怖に固まっている。

暴走したゴーレムは、一切の躊躇なく、その岩のような巨大な拳を、無防備な彼女へと振り下ろした。


まずい。

死ぬ。


その瞬間、俺の頭から、劣等生の仮面も、平穏な日常への執着も、全てが吹き飛んだ。


脳裏をよぎるのは、ただ一つ。

――もう、誰も失うものか。


俺は地面を蹴った。

普段の気だるげな動きではない。魔力で身体能力を極限まで強化した、最短距離を突き進むための疾走。


だが、それでも。


(間に合わない――!)


振り下ろされる拳が、スローモーションのように見える。

セレスの絶望に染まった顔。


もう、普通の方法では助けられない。

ならば――


「――やるしかない!」


俺は覚悟を決め、禁忌の力に意識を集中した。

世界の法則を、今、この場で、書き換える。

少しでも先の展開を気になっていただけたら、ブックマークと評価★★★★★をお願いします。うれしさとモチベーションの増加につながります!

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