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 そんな生活が二年過ぎ、十六歳になった私は学園に入学した。

 貴族子女は十六歳から二年間学園に通うことが義務付けられており、それは王家も例外ではなく、シェザート殿下は一つ上の学年に在籍している。


 学園生活が始まるとさらに忙しい日々を送るようになった私は、シェザート殿下と顔を合わせることはほとんどなかった。会う度に嫌味と文句しか言わない人にわざわざ会いたいと思わないし、学園生活に書類仕事と忙しく、会わないで済むのならむしろラッキーだくらいに思い、シェザート殿下のことはこれっぽっちも気にかけていなかった。


 しかしそれがいけなかったのだろうか、入学してからしばらく経った頃、シェザート殿下に関する驚くべき話を耳にすることになる。



『王太子殿下が男爵令嬢を寵愛している』



 私がこの話を耳にした時にはすでに噂などというレベルではなく、学園内の周知の事実となっていた。

 なぜすぐに私の耳に入らなかったのかというと、私が国一番の富豪であるルーシェント公爵家の娘で、シェザート殿下の婚約者だからと周囲が気を遣ったようだ。周囲の人たちは私を不憫に思ったからだろうが、正直に言えばその気遣いは不要だった。私はシェザート殿下のことが嫌いなので、他の女性と懇意になったとしてもまったく気にしない。むしろ結婚後は側妃でも娶ってくれればいいのにと思っているくらいなのだ。

 しかし知ってしまった以上婚約者の私が黙っているわけにもいかず、一応シェザート殿下に苦言を呈した。



「王太子殿下。あなたは次期国王です。どうか自身の立場を忘れないでください」


「なんだ?俺に説教でもするつもりか?」


「そういうわけでは……」


「はっ!婚約者だからって自分が偉いとでも勘違いしているようだな。偉いのはこの俺で、お前はただ金だけで選ばれた道具にすぎないんだよ!」


「っ……」



 シェザート殿下は私の言葉など聞く耳を持たず、これをきっかけにさらに私を嫌悪するようになった。


 その後もシェザート殿下と男爵令嬢との関係は続いているが、国王と王妃はシェザート殿下を注意することはなく、父が王家に抗議することもなかった。



(私は誰のために頑張っているのかしら)



 婚約者のため?

 家のため?

 国のため?



 あまり感傷的にならない私でもさすがに考えてしまう。どれだけ頑張っても誰からも認められない私が、頑張り続ける必要があるのだろうかと。


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