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(まさかこんな状況になるなんて……)
先ほど叔父と話していた部屋よりも広い部屋には私と叔父、そして久しぶりに顔を合わせる父がいた。私と父はテーブルを挟んで向かい合わせに座り、叔父は私の隣に座っている。久しぶりの父娘の再会であるが、再会を喜ぶような空気はなく、どこか張り詰めた空気だ。
「……ご無沙汰しております」
「ああ」
「お元気でしたか」
「ああ」
「……そうですか」
これが血の繋がった父娘の会話だ。昔からこんな調子なので今さら気にしていないが、久しぶりに会った娘に対してもこの反応。叔父の勢いに流されここに残ったが、今からでも帰った方がいいかもしれない。
「あの、やっぱり帰りま『兄上!』……叔父様?」
帰ります、と言おうとしたが叔父に遮られてしまい帰るタイミングを失ってしまった。
「兄上のその態度はなんですか?」
「……」
どうやら叔父は先ほどのやり取りに思うところがあったようだ。私としてはこれが普通なのだが、叔父から見れば普通ではないらしい。
(そういえば叔父様が私たちの会話を聞くのは初めてだったわね)
私と父の仲があまりよくないことは当然叔父も知っているが、それでもここまで他人行儀だとは思っていなかったのだろう。
叔父の言葉に対し、父は黙ったままだ。
「兄上!」
「私と父はいつもこんな感じですから気にすることでは……」
「いつも……?私は本当に何も知らなかったのだな……」
「叔父様……」
「……ねぇ、兄上。兄上は本当にリリアナの幸せを願っているのですか?」
「……」
「答えてください」
話の流れが不穏だ。このままでは喧嘩になるのではと慌てて止めようとしたが、あと一歩遅かった。
「ちょっと待っ」
「……当たり前だ。だから王太子殿下の婚約者にしたんだ」
「『国一番の存在になれば、間違いなくあの子は幸せになれるんだ』って、兄上はいつも言ってましたもんね」
「……そうだ」
「今でも本気でそう思ってますか?」
叔父の一言で、部屋の中は一瞬静まり返った。




