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「それは本当か!?」
これまでの出来事を話すと、やはり叔父は私が今までどのような扱いを受けていたのか知らなかったようだ。
「はい。もう何年も王家の仕事を押し付けられていますし、私はいまだに王太子殿下に受け入れてもらえていません。それにすでに別の女性と懇意にしていて、側妃として迎え入れるつもりのようです」
「王家はなんて恥知らずなんだ!何年も前からなら国王陛下も黙認しているということか」
「ええ、おそらくは。国王陛下は王妃様に弱いですからね。それに国王陛下としては持参金さえ手に入れば、私がどう扱われていようとも関係ないのでしょう」
「そんなひどい話があるか!」
「叔父様、落ち着いてください」
国王からすれば私はただの金づるだ。私が父から大切にされている娘であれば、金づるを失わないためにシェザート殿下や王妃を諌めただろうが、父が私に無関心なのは社交界では有名な話。だから国王は我関せずを貫いているのだ。
「……すまなかった」
「落ち着いたのならよかったです」
「そうじゃない」
「……?」
「私がもっと気にかけていればリリアナが辛い思いをしなくて済んだのに……!本当にすまなかった!」
叔父は立ち上がり私に頭を下げた。突然の出来事に驚いたが、叔父が謝る必要はない。そう伝えなければと私も立ち上がり口を開いた。
「頭を上げてください!叔父様が謝る必要は……」
「いや、今さらだが謝らせてくれ。大切な姪が辛い目に遭っていたのに、兄上の言葉を信じて何も知ろうとしなかった私の落ち度だ」
「……父の言葉?」
「ああ。私に会う度に兄上が言っていたんだ。『国一番の存在になれば、間違いなくあの子は幸せになれるんだ』ってね」
「!」
叔父の言葉を聞いて、私はあの日の父の言葉を思い出した。
『これでお前は幸せになれる』
この言葉だけなら、父が私に言い聞かせるために言った言葉に聞こえる。だが父が叔父に言っていたという言葉を聞くと、なんだが違和感を覚えた。
(まるで自分に言い聞かせているような……。いえ、今は関係ないわね)
ふとそんな考えが頭を過ったが、今一番重要なのは叔父に保証人になってもらうことだ。それ以外のことは後で考えればいいだろう。
「リリアナの父親である兄上がそう言うのだからそうなのだろうと安易に思い込んでしまった。リリアナの幸せはリリアナにしかわからないというのに……」
「叔父様。私は王太子殿下と結婚すれば、間違いなく不幸になるでしょう」
「リリアナ……」
「ですがこのまま不幸になるつもりはありません」
「……何か考えがあるんだな?」
「はい。そのためには叔父様の協力が必要なのです」
「私にできることなら協力しよう。リリアナの考えを聞かせてくれ」
「実は―――」




