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姫騎士様と二人旅、何も起きないはずもなく  作者: 踊りまんぼう


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第21話



「……気をつけろ」

気配を感じてレリアが剣を抜く。この大深林においてあまり敵と遭遇してこなかったが、ついに魔物を見かけるようになってきた。

セイの言葉からすると、濃密すぎる魔素の影響で魔物も一部を除いて駄目なのかもしれないと。その分、もし遭遇していたら恐ろしいことになっていただろうとも。

そういう魔素の濃い部分を抜けて、魔物にとってちょうどいい環境になってきたのだろうか。

当然ながら大深林の外縁部に比べて強いであろうことは推測される。

「妖精はやっかいだな……避けたいが捕捉されたようだ。魔法抵抗力の高い防具を装備してるレリアの方が向いているかもしれない」

セイはそういって相手の動きを観察している。ショートボウを手にして妖精の動きに合わせているものの当たる気がしなかった。

そこで魔素で強化された指パッチンによるファイヤースターターの魔法を利用することにしたセイ。強化で特に伸びたのが距離で、何メートルも離れた相手の移動先に視線を向けてタイミングを合わせて指を鳴らすセイ。

「ぎゃっ」

ファイヤーボールのような出現して飛んでいくとかではなくて、いきなり妖精の鼻先に火花が散る。威力は無くても目に入ったら大事だし、軌道ではなく出現なので避けにくい。

目線と指を鳴らすという動作に反応すれば避けれなくはないのだろうが、セイの魔法を始めてみる妖精は見事に火花を浴びて悲鳴を上げた。

目を押さえて高度を下げる妖精。その妖精との距離を一気に詰めて、レリアは剣を振るった。

その魔力をまとってほの明るく光る剣は見事に妖精を捉え真っ二つに切り裂く。

苔むす岩とかで安定しない足場でそんな移動できるんだとセイが感心するほど素早く移動してレリアは妖精に切り捨てていた。

「ととっ……」

さすがに着地は少し態勢を崩す。そこに別の妖精が飛んでくるが、セイが指を鳴らしその動きを牽制する。

その間にレリアが態勢を整えて、妖精を切り伏せる。二体倒したが、妖精達はまだ何体もいる。パーティなのか群れなのか解らないが非常に厄介だ。

「妖精の粉を撒かれたっ。息を止めて対処してくれ」

幻覚作用のある妖精の粉を振りまきだす妖精達。ぎゃ、ぎゃ、ぎゃっとイメージと違う濁音の笑い声でレリアの周りを飛んでいる。

セイは邪魔にならないように移動してショートボウを構える。

粉を自分でも吸い込んでハイになっているのだろうか、妖精は笑いながら停止飛行していた。ので、狙いを定めてレリアに声を掛ける。

「ボウ、撃つぞ!」

「うむっ」

セイの掛け声に妖精もセイの動きに気付いてこれは不味いと移動を開始する。が、残念ながら矢から逃げは出来たが、ふらふらとした動きを捉えられてレリアに切り伏せられた。

「……くっ……」

だが、レリアも少し粉を吸い込んだようで、苦しそうな表情を見せる。

まだ妖精は一体残っている。セイはショートソードを取り出して、指を鳴らし残りの一体を叩き落し、止めを刺す。

可愛らしい見た目の妖精と目が合うが、気にせずショートソードを突き立てる。短い悲鳴と共に妖精は絶命した。

「大丈夫か、レリア」

強引に腕をひっぱり、場所を移動する。

妖精の粉が舞っている所に留まるのは不味いと不安定な足場に苦労しつつレリアを引っ張り出す。

先程は不安定な足場で見事な足捌きを見せた彼女だが、粉の影響かその足取りは怪しい。

「大丈夫、といいたいところだがごらんのざまだ」

大きく息を吸いながらレリアが答える。

「今襲い掛かられたら抵抗できないな。痺れててすぐに対処できない」

どっかりと腰を下ろすレリア。

「大丈夫だ、他の魔物の気配はない……はずだ」

レリアの横に腰を下ろすセイ。緊張から開放されて大きく息を吐く。

「お前に襲い掛かられても抵抗できないな」

横を向いて笑うレリア。

「しないさ」

「しないのか? それは残念だ」

セイの言葉に、レリアは笑いながら言い放った。本気か冗談か解りかねる彼女の言葉に戸惑う。

「どうせするなら、もう少し安全な場所で、だな」

「……それはそうだな。だが、その時は抵抗するからな私は。あくまで今の話をしているのだからな」

妖精の粉の影響が抜けるまでそんな遣り取りをしつつ二人は休息した。



***



「……一体私は何を話していたんだ……」

軽やかな、けれど妙にスケベな方へと誘導する会話をした後にレリアは頭を抱えていた。

次期女王候補が、どこぞのスケベ貴族のような欲に塗れた……しかも自分から誘うような会話をするなんて。

妖精の粉の影響だろうか。

モノクル森の木が妖精には気をつけろと講義してくれたことを思い出したが、こういうことも含めてなんだろうか。

深層意識……心の奥の願望が表面化したり、理性のたがが外れたり、碌なことが無いと実体験を含めて話してくれてたが、まさかそんなことがあるのだろうか。

「心の奥の願望……」

つまり、セイとそういう会話をしてしまったということは、そういうことを望んでいるということなのだろうか。

思えばここに来てからずっとおかしい。二人きりで頼るものが彼しかいないという状況からそういうことを考えてしまっているのかもしれない。

心の弱さからつい彼に頼ってしまっているということだろうか。

「こんなことでは駄目だな。次期女王としてふさわしくない」

むしろ彼をひっぱっていけるほど逞しくないと国など治められるはずもない。

そう、ふさわしいのは妹……私は駄目だ。

私は男を誘って享楽に耽るのが似合っている。

股間を弄り潤し、股を拡げ男を誘う……それでいいじゃないか。

どうせ、この森から抜けられるはずもない。

処女のまま朽ち果てるより、女の喜びを知るのも悪くない。

そうだ、せっかく男と二人きりなのだ。

他に誰も居ない。

鎧を脱いで、下着も脱いで、生まれたままの姿で抱き合う、それでいいじゃないか……。

王家の者としてでなくただの男と女として自然の中で貪りあえばいい。獣のように声を上げ腰を振ればいい。

女王としてふさわしくない女にはお似合いの末路だろう。

「セイ……お前だってそうだろう。無理矢理女をひん剥いて、犯して、あげく殺すなんて……なんて酷い男なんだ。その女の次は私か? 私も剥かれ犯され、殺されるのか」

横を見ると、セイが知らない女を組み伏せて、裸にして、犯して、首に剣をつき立てていた。

ぎらつく瞳がこちらを捉える。

「ああ、いいぞ。所詮私だ……好きにするがいい」

セイの獣のような瞳に身体を熱くしながら、レリアは鎧を脱ぐべく手を掛けた。



***



「レリアっ!」

セイがレリアに呼びかけた。

彼女からの返事はない。あきらかにおかしい彼女の様子が気になるものの、目下のところ、見逃していたのか新たにやってきたのか解らない妖精との戦いで手一杯で手が廻らない。

「ケケケケケケッ」

レリアのほうに手を伸ばして笑う妖精。

先程レリアと倒した妖精と違う笑い声と、服装も違っている。

妖精の種類ごとに服装が統一されている訳じゃないだろうが、その服装、雰囲気、笑い声とどうやら別のものに思えた。

「レリアっ!」

何度呼びかけても駄目だった。となると、彼女の援護は期待できない。

何とか自分だけで目の前の妖精に対抗しないといけない。

「ケケッ、ケケッ」

耳に届く笑い声はセイを苛立たせる。が、焦っても仕方ない。

セイはショートソードを構えて、指を鳴らした。

「ギャギャッ」

ファイヤースターターの魔法が、妖精の服に火をつけたのか、それとも撒こうとしていた妖精の粉が可燃性だったのか解らないが、運よく、妖精にとっては運悪く身体が火に包まれる。

じたばたと火を消そうともがくものの、ぱっと服に広がった炎は消える気配がなかった。

妖精の羽も火に歪み、飛行魔法を維持できず地面に落ちる妖精。

身にまとった服は燃えて肌が露になっていたがあちこち焦げて痛々しかった。セイはその妖精に躊躇いなくショートソードと突き立てる。

肉を突き刺す感触。喉を潰されて声なき悲鳴が響き、妖精は力尽きた。

先程切り裂いた妖精よりも大きく、肉感的で、より人間に近い感じで、これも魔素の影響なのかと一瞬考えるセイ。

「……」

だが、それよりも今はレリアの方だ。何かの術に掛かったのか、虚ろな瞳で何かを呟いている。

どう見ても正気ではない彼女だが、いきなり鎧を脱ぎ出した。

「セイ……いいぞ」

どうやら、自分を誘っているらしいが、幻覚を見ているのか視点が定まっていない。

近寄ってぺちぺちと頬を叩いても様子が変わらず、こちらの装備を脱がそうという動作をしてきたので、セイはままよとばかりに、気付け薬を口に含み、レリアに口移しして飲ませた。

「げはっ……はっ……がはっ……」

気付け薬を口移しに流し込まれて身体が耐え切れずむせるレリア。呼吸が乱れて、苦しさに悶えるとともにその刺激に彼女が正気を取り戻す。

「げほっ……んくっ……」

揺れていた瞳が、次第に落ち着き焦点が定まってくる。

「わ、私は……」

「落ち着いて、今度こそ大丈夫だから……」

セイはそんなレリアを優しく包み背中を摩ろうとする。

手を差し伸べると、脱ぎかけのレリアの鎧がちょうど脱げ落ちる。

「え……あ……え? セイ……」

正気に戻ったばかりのレリアは自分で脱ぎだしていた状況を把握できずに、セイが自分の鎧を脱がしに掛かってきたように勘違いする。

「お前……」

顔を真っ赤にするレリア。

「違う、違う、そうじゃ、そうじゃない」

セイの言葉にレリアが何が違うものかと食って掛かる。けれど口移しのためとはいえ唇を重ねた後だけにセイも少し挙動不審になってそれが余計に事態をややこしくした。

誤解というか状況を説明するのにしばらく時間が掛かった。



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