08:試合開始!
「08:試合開始!」
腕試しがてら、十人で一年生チームと一戦交えた。
初戦だけあってどちらのチームも動きが固く、両チームのサッカー部員だけがうまく動いているだけだった。そのためサッカー部が一人しかいない我がチームは見事に中央から突破され続けざまに二点を失っていた。
「おい、結城。下がって守った方がいいんじゃないか」
「ああ、そうしようと思っていたんだ。代わりに空がトップに入って空の場所に玉梓のどっちかが入れ」
「了解っ。俺が前に出るぜ」
フォーメーションに変更を加え、残り八分間で逆転を目指す。
ドリブル突破できる結城がディフェンスに入ることは最初から考えていたが、最終兵器として三年生チームと当たるまで使わないつもりだった。だが、それよりもかなり格下の相手にてこずっているのではしょうがない。結城もそれに気付いて作戦を少し早めたのだが、新たな発見もそこにはあった。
一年相手なら問題なく結城はボールを奪って一人で中盤まで持っていった。ドリブルだけ突破で三十メートル、三、四人を抜き去った。そして玉梓彼方にパスをして更に前線へ上がっていく。
それに合わせてキック力のある彼方が一直線にボールを蹴り飛ばした。
風に揺れるゴールネットは、不規則に波を打ち。ふわりとネットにからめとられたボールはゴールの中に転がっていた。彼方の蹴ったボールがそのまま相手チームのゴールに突き刺さったのだ。
「よっし、一点返した!」
一番後ろの位置にいる平田宗次がガッツポーズをしてチーム内のムードが一気に変わった。
続けざまにナルがボールを奪い、上がり気味の結城にパスが通った。そこからは結城の本領発揮。まさかの失点で混乱している中をかいくぐるように抜いてゆき。あっという間にゴール前までいってしまった。素人キーパー相手にサッカー部のレギュラーが外すわけもなく同点に追いつき。もう一点結城がダメ押しで叩きこんでその試合はなんとか勝利することができた。
「すごいね、かなちゃん。わたしにはあんなとんでもないこと出来ないかな」
「いや、みはてが彼方みたいになってもらっても……全っ然、嬉しくねぇーな」
「あのくらい楽勝だろ。大抵のスポーツは見てるだけで体が覚えてくるからな!」
「ナイスプレイ! 噂通りの三人組だ!」
十年来の逸材に出会えてテンションの高い結城とナルを含めた三人組が少しだけ仲良くなって一試合目は失点2、勝ち点3を得て終了した。