73:三浦司
73:三浦司
試合が相手のペースになっていることより、妹の消耗が一番の問題だった。
中鏡高校の攻撃はあの奇妙な守備からのカウンターというのが多い。
それは攻撃で桜がミラモンドさんのマークから外れたときに、ミラモンドが一人で決めているからだ。
結局のところ、長身のミラモンドさん相手に日本人の低身長でも止められる選手が桜以外にいなかった。
それに併せて、攻撃が一瞬のうちに全部決まるため、その分こちらの攻撃に回せる時間と回数が通常の試合より多くなっているため妹の消耗も一段と加速した。
この流れを断ち切るためには、全国最強中学出身の東千波を止めなければならない。
田村高校は、試合終盤にある奇策を放り込んだ。
***
田村高校が最後のタイムアウトを使っている間に、東の元へ申し訳なさそうな顔をしてミラモンドが立ち尽くしていた。
「試合は勝ってて、押せ押せムードなんだからテンションが下がる顔はしないでよ~」
「でもサ、ちなみーは半分も楽しめてナイカラ。ワタシがもっとパスをとれればそんなことナイノニ」
東千波のバスケを知っている彼女だからこそ、この試合で東が全力を出して試合で楽しめていないというのが分かった。
まだチームメイトになって日も浅く、練習も数えるほどしかしていないから東の全力のパスを捉えることがミラにはまだ出来ない。
そのパスはフランスでも見たことがないような、大きな弧を描いてコートの外から食い込んでくるようなパスだ。
「別に、八重や佳澄くらいしか取れなかったパスだから気にしてないし。それよりも僕は、向こうが何か奇策にでるんじゃないかって思って、わくわくするよ」
「のぞむトコロ!」
タイムアウト明けの田村高校の奇策は、姉妹らしいものだった。
ゆっくり更新していくと思います。