72:三浦妹
72:三浦妹
一年生の妹から見て周りの選手はみんな年上ばかりだ。
お調子者らしい東さんも姉と同じ二年生だし、留学生のミラモンドさんも見た目だけなら色々と立派だ。日本人には不可能なものをお持ちになっている。
ボン、キュ、プリン。
いやいや、妹はお姉ちゃん一筋なのだということを思い出すように首を左右に振った。
それに不思議がる千波が話しかけてくる。
「いもうとのマイが妹なんてわっかり辛いよね~」
他愛もない世間話だった。
それにそれは桜先輩にも迷惑そうに言われたことがあるので、妹はどうしたらいいのだろうかと思うしかなかった。
今までは三浦姉妹のセットで呼ばれることが多かったので気にする事は少なかったのだ。
「ほらほら、僕を抜いてごらん」
桜からボールが回ってきて再び東との1on1になる。
この人が桜先輩と同じかそれ以上なのは分かっているつもりだ。
それでも中鏡高校の特攻隊長でエースと片割れとしては何度も負けるわけには行かない。
「今度は抜きます」
「げんき、げんき」
千波の動きは統一性がなく、完全に抜き去るのには情報が少なすぎる。
速さと加速力を併せた敏捷性で相手を抜きさるタイプの妹は、さっきは縦に抜きにいってボールを奪われたから、次は横で振り切ってからいこうと動き出す。
「いやはー、すごいね。でも結局は同じじゃん?」
左から右へのクロスオーバーで一歩半の間を取ったところから縦に突進する。
いくら腕が長いといっても物理的に届かない距離ならとられることもない。
しかし次の瞬間にはさっきと同じようにボールを奪われていた。
「僕はゴムゴムの実の能力者だーよ」
したり顔の千波は、このあとも一度として誰にも抜かせなかった。
田村高校の得点は三本に一本の確率で入るロングシュートだけに留まり、ワンサイドゲームの展開になりつつあった。
千波のエースつぶしは、妹の体力と精神力を削りつつ順調に進んでいた。
次の投稿は週末あたりの予定です