64:たむこう(三浦姉妹)
田村高校(通称:たむこう)東北代表(福島県)
全国ランキング2位
次世代の日本代表エースの三浦姉妹
三浦司:冷静沈着。女王様気質。好きなものはかっこいい男子と妹属性を持つ女子、それと焼きそばパン。三年生でキャプテン。SG。
三浦妹(まい。妹じゃなくてマイ):司の妹。二年生で副部長。SF。お調子者だがメンタルが豆腐。姉との一戦を超えることを夢見ているのは秘密だ。
久世桜:九州地区出身の元千駄ヶ谷中のガード。常識はあるが、姉妹の横暴に耐えかねて自らも暴走する。その際のたむこうバスケ部はカオスだ。
というのを前提で書き始めています。
64:たむこう(三浦姉妹)
女子バスケ界で新鋭と呼ばれているのは、一昨年が高円寺高校で、去年が田村高校、今年は十有二月学園と言うところが候補に上がっているらしい。
東京都代表の高円寺高校は、千駄ヶ谷中のダブルエースが二人とも進学した高校でその二人――中村八重と野田佳澄を中心に強くなった高校だ。
その年の全国大会でベスト8に入り、翌年には全国優勝を遂げて全国ランキング一位。
東北代表の田村高校はそこへ通う学生たちからは“たむこう”と呼ばれている。
なんといってもこの高校にいる三浦姉妹というのが飛びぬけた実力をもっていた。
次世代の日本代表エースと呼ばれ、残念な結果に終わった代表戦では唯一アメリカ代表をぶち抜いた三浦ドライブは姉妹ならではのドライブらしい。
三浦司と三浦妹。
その二人は世界的に注目されている。
***
一年を通して少し肌寒い田村高校には小さなバスケ部がある。
去年の全国大会準優勝から成績を落とさず一年が過ぎた頃には全国ランキング二位という地位まで上り詰めたが、普段の部活風景を見る限りだとそれは大げさすぎると思う。
将来の日本女子バスケ界を背負う選手?
今年の優勝候補?
プロ顔負けのドライブ?
ははん、そんなことはもっと人を良く見てから行ってほしい。
たむこう三年の久世桜はそう思っていた。
三年間特進クラスで司と同じ桜は、ちょうどその姉の方と話していた。
「わたし、三浦妹。三浦いもうとじゃなくてマイだよ。よろしくねん♪」
はじけている受験生を前に桜は冷静を通り越して無になった。
もちろん目の前にいるのは姉の司の方で、一学年下の妹のマイの方ではない。
「いや、あんたは司だから。姉のほうだから。ついに気が狂ったのか」
将来のなんたらが、こんなのと知れば誰も夢を見ないはずだ。
桜は心底そう思う。
「違うのよ。昨日の夜に家で突然そんなこと言い出して、心配になって……」
「姉のほうが静かになるのは今までにないパターンだな。昨日何かあったんじゃないの?」
司は唸りながら昨日のことを思い出していく。
「昨日あった事と言うと――わたしはかわいい妹属性の女子が好きだから、マイももうすこしそれらしくならない? っていったのと」
「はいはい、ストップ。どうしてそうなった。実妹とそういう会話になる流れがすでに何かあるよ!」
桜の言葉は耳に入っていないようで、司は話を続けた。
「もう、首輪をつけてわたしのペットになるしかないじゃないかという結末を経て」
「どこの女王様よ!」
「そんで、マイが部屋に閉じこもった以外は特に何もなかったと思うけど?」
全てを言い切っても妹の奇行の原因がわからないような顔をする姉はとても滑稽だ。
あまりに滑稽すぎて一昔前の悪役がやるような高笑いを上げたくなる。
あーはっはっはっ、あーはっはっはぁ……。
「あるだろ。いろいろあっただろ……」
一応、たむこうバスケ部の部長である司の立場を考えて、部員が来る前の部室できっちり謝罪をさせた。
マイが司に対して「いいって、いいって」と言おうが、調子に乗った司が悪いのには変わりない。
「ごめんなさい」
司の謝罪の言葉は、どこか信用ならなかった。
たむこうのエースガードである久世桜はそう思った。
次回投稿は20日(翌日)です。