55:かずきらら
55:かずきらら
試合というのはすぐに終わって、今井希星は暇になっていた。
そのまま練習を見ていてもしょうがないし、お昼を用意してこなかったから腹ペコりんだ。
何かに助けを求めるように希星は、校舎へ足を運んだ。
十有二月学園では土日でも校舎ないに生徒がいることが多い。
部活で来ている活発な生徒が多いのもあるが、
『一人で分からないこともみんなで協力すれば分かるようになる』
『家だと寝ちゃう。でもテストが近いから勉強しなきゃ』
という積極的な生徒が集まっている。
だから土日でもこれといった許可がなくても、学生証さえあれば自由に出入りできるような校則がある。
自由に出入りできるからといって、使用できる教室は決まっていて、行く当てのない希星は人の声のするほうへ向かって歩いていた。
すると希星のことを知る数少ない生徒に出会った。
「あれ、こんなところでどうしたの?」
「ちょっと、亜佐美先輩に呼ばれて学校へ来ていたんで。教えてもらったものをもう一度見て回ろうかと」
「そうなの? なら一緒にいこうか」
「ええっと、風見鶏先輩は早く部活に行った方がいいんじゃないかと」
「なら会長か桜井さんでもつけようか?」
「???」
「このあいだ一緒にいた小柄な人が会長で、桜井さんは、えーと文学少女を装ったパイルバンカーといった感じの」
「ぱいるばんかー?」
「ごめん、例えが悪いね! 桜井さんは、とにかくどこか変な人なんだよ。でもみんなから慕われているから、いい意味で変なんだと思う」
ハキハキと物をいう風見鶏が、手探りで言葉を選んでいる。
生徒会メンバーだと会長→風見鶏→桜井の順で入ってきていて、一番の新入りが三年生で書記の桜井。
そのため風見鶏も良くは知らないのだ。
「それじゃあ。またね」
風見鶏はユニフォームやシューズなどが入った袋を持って体育館の方へ走っていった。
その後ろ姿は疾風のようにすばやく消えて、すぐに見えなくなる。
人見知りの希星は、通りがかるこの学校の生徒と視線を合わせないように気をつけながら、下を見て歩いていると丁寧な造詣の指輪を見つけた。
この学校の生徒の落し物だと思い拾い上げると、思っていたよりも重量があった。
木の幹のようにリングを周回する溝の部分には金メッキがされていて高級感がある。
これに見覚えがあるような、ここ数日中に見たような気がしたが、思い出せないので拾った指輪は一度ポケットにしまっておくことにする。
あとで先生に渡せば大丈夫だろう。
次に掲示板のプリントに目が行く。
そこには何故か他校の女子バスケ部の部員募集のポスターが貼られていた。
希星は破壊と創造にしか興味がないので……まあ、ぶっ壊しの機会があれば活躍できると思います。
試合描写をすっ飛ばしたのは、こちらの都合でしたので申し訳ないです。
風見鶏と新崎、天野と新崎をぶつけるには、本編の情報が少なすぎるかなぁと。