51:動物は地震に敏感
これは『10分間のエース』に登場するキャラクターがやりたい放題やっていく話です。もちろん本編とは関係ありませんし、平気で新キャラを出す始末でしょう。こんなのでよければお付き合いください。まず出だしのキャラは20日くらいの更新で登場する人になります。
十有二月学園。
そこには幼馴染を率いるリーダーや相手の動きをコピーしてしまう超人はいるが、いたって普通の高等学校である。
この学校の二年生である永田亜佐美は、女子バスケットボール部のマネージャーをしている。
正確にはプレイングマネージャーという最近出来た呼び方のポジションなのだけど、まだ本編でも語られていないのでここでは細かく書かないことにする。
ようは普通のマネージャーと比べ、試合よりの仕事が多いマネージャーという意味だ。
その亜佐美は、部員の一人が参加している生徒会長室(第三会議室)に招かれていた。
バスケ部の重要な戦力の一人である風見鶏一姫は、亜佐美と同じ二年生。
この学校が二年制の生徒会長制度を導入していなかったら、間違いなく最強の生徒会長ができたであろう文武両道が完璧な友人でもある。
コンコンッとノックをすると中から幼い声がした。
「はぁ~い」
扉を開けると高校の制服を着た子供が二人いた。
返事をした子は何が楽しいのか部屋の中を走り回っていて、もう一人はパイプ椅子にちょこんと腰掛けている。
「お姉ちゃんだあれとか聞いてきそうなのが、なんでここにいるの?」
答えが欲しかったわけじゃないが、亜佐美はそう呟かずにはいられなかった。
「一姫はどこにいるのよ!」
本当なら重苦しい空気が漂う第三会議室がまるで保育園のようだ。
この程度のことに動揺するほど、ぬるい幼少時代を送っていなかった亜佐美は、自分がここへ呼ばれた理由を求めて長机の上におかれている資料を手に取る。
「ふんふん。こっちの静かなのが希望の星と書いて希星。今年の新入生だったのね。それで、まあ、えーと、分かってたんだけどね……部屋の中を走り回っていたのは、現、生徒――」
「おまたせ! ちょっと飼育小屋の動物達が騒がしかったから、大地震でも起こるんじゃないかと防災セットを探していて遅れた!」
「一姫!」
「はい? なに、アサミン」
「生徒会長様が壊れておかしくなってるわよ」
風見鶏は、平然とそれに答える。
「あちゃー、たまに幼児退行しちゃうんだよなぁ。秘密にしていてね、アサミン」
「だからそのアダ名は辞めてって何度も」
「いいじゃない。かわいいよ、アサミン♪」
「もういいわよ。それで、幼児退行会長(元々体は小柄)は置いておいて、そこの一年生の校内案内でもすればいいの?」
「話が早くて助かる。それと渾身の冗談は完全スルーっすか」
「あんたじゃ冗談じゃなしにやりそうだから、わかりづらいのよ!」
半笑いの生徒会長補佐を保育所に残して、亜佐美は希星と外へ出た。
まず軽く自己紹介をする。
「私の名前は永田亜佐美。二年生で女子バスケ部でマネージャーをやってる。ウチのバスケ部は強いからね。興味があったら見に来てよ」
「はわわ。はい、わたしは今井希星です。新入生は新入生なんですけど、今月。えっと、五月から入ったので学校の事はよく分かってないです。いうように言われました」
学校に通うこと自体始めてなような、箱入りのお嬢様のイメージがした。
彼女は前髪が長すぎて表情を隠してしまっているが、実年齢より幼く見える小さな体躯全身を使うように会話の節々で大げさなアクションをするところが可愛らしく思えた。
「まずはどこへいこっか? 教室とか普通に回るのもいいけど、何事も楽しくやっていくのは大事だと思わない?」
亜佐美は笑顔でその子の手を取って歩き出した。