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ランダムワーク+10分間のエース  作者: 橘西名
ランダムワーク
53/81

49(2/2):振り返るとそこにいた(斗貴&天凛――空&奏)



「仕切り直しだ」


 吹目空は柚木奏との答え合わせを終えて小屋の外へ出ることが出来た。

 どのような問題だったのか話を重ねるごとに忘れていってしまっただろうけど、答え合わせだけはしないといけない。

 まずどんな問題だったろうか。

 二人が考えてきた順序どおりに思い出してみると、


『ここは雪山の山頂。一歩外へ出れば猛吹雪に襲われ五分と持たず凍死してしまうだろう。

 ここから脱出して助かるには対極の位置にある二つの扉のどちらかを通ってもう一つの小屋まで行かなくてはならない。

 その小屋には食料や防寒具、助かるための全てがそこにある。

 そこへいくにはどう急いでも三分以上かかる。

 生き残るためには、正しい扉から抜け出すしかない。

 どちらが正しい扉なのか分かるように二つの扉のわきに一人ずつ、“首を縦に振って同意を示すもの”、“首を横に振って間違いを教えてくれるもの”がいる。

 そのどちらかに一つだけ質問が出来る。

 ただしそのどちらかは正しい反応をするが、もう片方は全く反対の反応をする。

 つまりは正直ものと嘘付き、それがその二人の特性だ』


 それだと少し難しいので簡単にしてみると、


『出口が二つしかない部屋で、門番は嘘つきとそうでないものの二人がいる。

 そして正解の出口も一つ。

 質問はどちらかに一度だけ』


 この場合正解となるのは、言葉巧みに相手を騙してしまえばいい。

 柚木奏てきに言うなら、次のようになるが、少しだけ蛇足しておこう。


「先輩はこうゆう言葉の使い方って知っていますか? “あるいは”と“かつ”というものですけど」

「数学の三角形の合同条件のときに使った証明の言葉だったか? 確か“あるいは”は英語でいうところの“or”に該当して“かつ”は“and”だったな」

「そうですね」

「どうした。あんまり暗い顔をしていると根暗だと思われるぞ」

「いえ、先輩が数学がどうのこうのと長々話していることにイライラしているわけでも、偉そうに話している態度に殺意を覚えているわけでもありませんから。全然」

「あー、悪い。もう少しバカっぽく話すから」

「あたしがバカのことを好きみたいに言わないでください。心外です」

「いやいや、どうも昔からそばにいた人の口癖は治らないな」

「話変えないでください。殺しますよ」

「俺たちの後輩はいつからこんなに物騒になったんだろうな。規格外の猛獣にまたがる少女と、難しいことを考えながらの並列処理で俺をどうにかしてしまいたいと考えているなんて、斗貴とゆっくり話し合ってみたいな。はははっ」

「そんな笑い方をする人は漫画の世界だけだと思っていました。実際に傍で聞いていると――」

「そろそろ話を戻さないか? あまり時間に余裕はないと思うからな」

「だっ、誰がこうしたんですか! あたしはやっぱり先輩のことが苦手みたいです! 一緒にいるのも若干嫌ですっ」

「ほらほら~、かえってこ~い」

「ばばば、ばかにしないでくださいっ」



 柚木が深呼吸を一回してから、再び二人で解答編~。



「つまりはですね。門番をしている人が何も言い返せなくなるくらいのことを一気に言ってしまえばいいんですよ」

「えっと、どんなことを言えばいいんだったかな? 悪い、忘れた」

「バカのフリしないでください。バカは一人で十分です」

「それは斗貴のことだな。間違いない」

「さあ、もう無視しますよ。それでですね。さっき言ったことももう一度だけ繰り返してあげますけど、ある門番の人にこう言うんです。

 あなたは嘘をついていて、かつ、この出口から出られないか、

 あるいは、

 あなたは嘘をついていなくて、この出口からでることができる、

 そのいずれか一方が真であるということは正しいか。

 という感じです。つまりはですね。門番をしている人が何も言い返せなくなるくらいのことを一気に言ってしまえばいいんですよ」

「同じことを繰り返すなよ~。バカじゃあるまい――」





 吹目は昔出会った“言葉足らず”で“世間なんて何も知らない”少女に対してしていたように柚木奏に接したが、どうやらその少女は世界中でただ一人の例外だったようだ。

 そのせいで後輩には嫌われ、手のきれいだった少女は昔と正反対に成長してすごいことになってしまったのも吹目は良く知らないでいる。


 そして二人と、一人と一匹、真相に辿り着いた二人と、真相のカギとなる赤い服を着た少女。

 その全てが一同に会することになる。


 今、赤い服の少女と紫朱音、プラスわんを中心に斗貴と天凛、その反対側に吹目と奏がいる。

 斗貴は自信ありげに見た目小学生低学年くらいの少女に一歩近づいた。


「うわ、ロリコンよ」

「ロリコンね」

「ロリコンかよ」

「……ロリコン?」

「おいちょっと待て――奏、天凛、吹目、桧林がそろって変なことを言うんじゃない!」

「先輩って損な性格していますよね」

「奏の友達が珍しく味方してくれるな。なんだか嬉しいな」

「話は変わりますが、三年の上下先輩って知っていますか? 女子サッカーの日本代表候補で、ウチの学校の空のエースと呼ばれているそうですが、その見た目はとてもかわいらしい人と聞きます」

「あのくらいの身長の女の子がベストだよな!」

「性犯罪者は死んでくださいますか?」

「全然関係ない話じゃないじゃんかよ! 二つも年上の先輩いじめるなよ! しまいには男でも泣くぜ、この扱いに耐えられなくなって男泣きするぜ!」

「男の涙軽いですね」

「うわあああーーーーーん」

「ちょっと、朱音。やり過ぎなんじゃないの?」

「まあ、話を折りそうな人は前もって心を追っておかないとだめじゃない」

「それはそうだけど……」

「「それは賛成」」


 一人の心が折れたところで最終回へ続きます。


本当に次回が色々な意味で最終回です。

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