41.5:会議の前の話です
今までにない様相で生徒会室に会長+あるふぁーが集まっていた。
どうのように“今までにない”なのかと言えば、この話に登場するのが、斗貴たちのいる高校とは別の高校の生徒たちであり、新天地での新しい顔が前ぶりもなく登場するからである。
「メタなことから言いますが、最近の作者しゃんは単発ものを書いていないと思うので、ここで挿入です」
「初登場でいきなり噛んじゃう『霧矢』もかわいいな~」
「……いやなところで帰ってくるんですね、会長」
周りからはよくクール女子と言われることが多い生徒会副会長の城居霧矢。日本人らしい黒髪が女性らしさを出すが、長すぎる前髪で左目が隠れてしまってせっかくの美人なのにもったいないことをしていた。
その正面にいるのは女子高生の平均身長よりずいぶん小柄な生徒会長、加賀谷太陽。その愛らしい容姿から女の子に見られがちだが……その性別は不明。なぜなら、男子ならズボン、女子ならスカートを履いているはずのところに会長は何も着けず、ワイシャツがそのままスカートのようにひらひらしているためである。
「僕はそうゆうことを言う会長も好きだけどね」
「昨日はお昼ごはんを会長に取られて『あんたなんかただのチビだ!』って言っていたとは思えない一言ね」
「――じゃあ、やっぱ嫌いだけどね。あと風紀委員はそろそろ会長を取り締まってよっ」
「耶麻って、よく言っていることを変える人だよね~」
会長を含め、全員に温かい目を送られているのは鷹井耶麻。この場にいる『生徒会長、副会長、風紀委員長補佐』とは一線を画した『ただの女子高生』はその実、狼少女である。
同級生からはあだ名で呼ばれることが多く、――もう誰を呼んでいるのか分からない――鷹井耶麻を呼ぶ人間の数だけあだ名があるんじゃないかとも言われている。
そして耶麻が注意の叫びを上げた方向には、なぜか会長を拝んでいる、風紀委員長補佐の碧宙がいた。通常時はその大きな器から画期的な風紀を正す案を出してくれる優秀な風紀委員の一人なのだが、極度のかわいいもの好きがたまにおかしな行動を取らせてしまう。
本人の見た目は昭和の風紀委員を彷彿とさせるような眼鏡越しの鋭い目つきが特徴だが、世界は自分を中心に回っているなどと盛大な勘違いをする女子高生でもある。
そんな彼女たちの共通点は、幼いころから互いのことを知っていること――つまり、幼馴染なのである。
他校に駆り出された一人をこの輪に加えると、小さい頃遊んでいたメンバーが全て揃うことになる。
「あまりん帰ってこないかな~。霧矢がデレなくて正直つまんないんだよね~」
「すみません会長!」
城居霧矢が、普段出さない声でわざとらしく会長たちの視線を集める。
するとどこから出したのか、ランチボックスが一つ宙ぶらりんになっていた。
「霧矢! それは!」
「はい、会長の今日のお昼ご飯になります。ちなみに作ってきたのは私ですが」
「それをどうするつもり? まさかそこから落としたりしないだろうね?」
城居はランチボックスから一瞬だけ手を離し、すぐさま空いていたもう片方の手で落ちないように受け止めた。その一連の動作の中で小柄な会長が小さく震える様子に、碧はドキドキ、城居はゾクゾクしていた。
「誰だってわが身が大切ですよね?」
会長は城居を睨みつけてからランチボックスを取り返し、小さなジャンプで元の位置に戻った。手の中には大事そうに副会長手作り弁当が収まっていた。
「悪いことをする奴は逮捕しちゃうぞ! 風紀委員! 出番だ!」
「えっ、何がですか? すみません。さっきまでここで起きていたことを忘れてしまったみたいです。昔からよく物忘れをするのが宙ちゃんのわるいところだねえと言われるんですよね」
碧宙、特技は物忘れ。
城居霧矢、好きなことは人で遊ぶこと。
そんな彼女たちが、この学校の常識ある主な学生たちである。
ただの紹介の回になってしまったかもしれません。
いえ、失礼しました。ただの紹介ですね。
とりあえずクリスマスパーティーはロリ(もしくはショタ)会長以外出席しました。会議の内容はそれに関するものだったのかもしれません(時間軸はクリスマス前)。