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ランダムワーク+10分間のエース  作者: 橘西名
ランダムワーク
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28:妖精のいる世界02

誰にも伝わらない触りからはじまります~




誰にも伝わらないシリーズは、それほど多くならないようにしていきます。

 双子は久々の登場だった。

 まさかのホームで登場することになるとは思ってなかったが、双子は双子――セットで一人の少女の元へ収まることになった。



「さー! 小さいっさー! あはは、マジだよ!ほんとだよ!」


 隣の未果が引くくらい、彼方が興奮した様子で叫んでいる。


「かなちゃん、きっと何を言っているのかだれにも伝わらないよ~」


 不安な表情で彼方じゃない、もう一人いる人物の方を貞芽という少女は見る。

 そこには同じ顔の二人がいた。



 そしてそこには片瀬貞芽という女の子がいる。



 物語の登場人物の貞芽が知っていなくとも、その物語が完成したあとの時代を生きる二人にとって、貞芽は知り合いだ。




 *関係は多少省く(ほとんど省く、むしろ何も語らない)。




「それにしても小さいな! 小さすぎて踏みそうだぜ!」


「さーちゃんかなりおびえちゃってるから! もうやめよ。かなちゃんは自分で思っているより大きな人で、子供からしたら怖いから!」


「……ぅぅ……」


 ポニーテイルの少女が腰を抜かして、がくがくぶるぶるおびえている様子を彼方が楽しんでいるところで、次のメンバーのいる場所へ移る。







 場所は、古びたアパートの二階。

 そこには、人の生き死にを二次元の世界で学び、淡い恋模様も画面の中で堪能し、人生無二の親友もテキストで心と心を通い合わせた少年がいた。


 そして、その少年がこの物語の主人公である。




 その少年担当は、神谷(かみや)(とおる)(むらさき)朱音(あかね)――三者三様にまったくの初対面だ。


 何かに取りつかれたようにテレビ画面に集中している少年のそばに、二人は突然現れる。

 ユニフォーム姿のまま登場した神谷は、こうゆう状況に慣れていないらしくボケーッとしているが、朱音のほうは慣れたようにむちゃくちゃ面倒臭そうな表情で欠伸をしている。




 家賃が土地代だけで賄われている部屋は、玄関と台所が一緒で、奥の部屋の合計二つ。その間にあるたった一つの戸が、突然開かれる。


 その扉の向こうにもう一人、この物語のヒロイン的な子がいた。


「守られたいかーーっ!」

「うるせーよ」


 少年が視線を外さず、機械的に答える。

 物音がしたら、こうこたえる――といった感じだ。


「夕飯が食べたいかーーっ!」

「そこにある。勝手に食え」

「――――」

「トイレなら外だぞー」



 いまは黙ってしまっているが、戸を引いて現れたのは、透き通るくらい色素の薄い髪と強い青と淡い赤の光彩異色の瞳をした女の子だ。まるで人形が動いているのではないかと思うほど小さな体がさらに小さくなって、かわいそうなくらいシュンとなっているのを見て、朱音が重い腰を上げる。



「こら小学生……女の子を泣かせるんじゃない」

「うるせえ、ババァ」

「口が悪い。親の顔が見てみたいわ。――うざい」



 口に出してから考えるのも変だが、紫朱音は考える。

 最低限の生活しかできないこの部屋は、せいぜい三人が暮らせる程度だろう。

 身の回りの整理整頓すらとれていないのをみると、親はそういうことにうるさくないらしい。もしくは、いないか……。


 そもそも、この家にはこのクソガキとこの子が暮らしているなら、父と母がいても定員オーバー。そう考えるのが普通。ならこの家に子供しかいないのも普通だ。



「顔が悪い。ババァは息が臭い。醜い」

「ほう、いってくれるね」


 軽く喧嘩に発展しそうなところで、少女と一緒に向こう側から出てきた人が口をはさむ。

 それは少女の担当になった平田宗次だ。


「少しは止めてやれよ、神谷」

「なんだ、宗次も一緒か。ならキャッチボールの相手に困らないな」

「……そうゆうことじゃないだろう」


 前途多難な二人の気持ちのすれ違いだった。




 もう一人が顔を出す。

 少女担当の片割れだ。

 そして、おそらく、いや絶対――――この混戦状態をさらに悪化させる、このメンバー最後の一人。



 風の読める女、月花天凛その人だ。


 さっそく天凛は空気を読まない行動をとる。


「底の抜けそうな部屋ね。ジャンプすれば一階に……あら、片足がずぼり。……あらあら、右手もこーんなに」


 一階と二階が天井を穿って繋がった。


「何してんだバ――」

「何かしら? 私を卑下する言葉を口にしたとたん――マメヤローには悲しい運命しかないとわかっているのかしらー? あらあら、そんなに怯えちゃってー。一生懸命やってたゲームのキャラが壁に突撃し続けてるぅ~」


 天凛がゴー・トゥー・ヘルのジェスチャーをしながら陽気なことを言っていた。



 いまだ知り合うのは神谷・平田と少年・少女、朱音・天凛――異色のメンツが揃えられ、残りのメンバーも簡単に紹介する。






 天井を穿って繋がった一階に住むのは、存在感のある凛とした風貌の兄妹。

 物語的には中堅の立場で、出番はそれほどないかもしれないが、見た目は豪華な外国人。

 名前も横文字の二人組のところへは、平田瞬と凍山ユキ子。





 そしてこの物語の結末や重要性を知る日下部は、斗貴たちの家にいた子供たちの、そのまた知り合いのところへ、弓矢、上下里佳とともにいる。


 教会の中で“シスター”と名乗る変なイギリス女と一緒にいる朧音夢と,そのそばに吹目空。





 約十七名がこの物語に参加した。


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