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ランダムワーク+10分間のエース  作者: 橘西名
ランダムワーク
26/81

24:車道に飛び出して

四人くらい出てきます。


初登場の村井遥などなど。


久しぶりの更新なので、それなりの文章で書かせていただきました。


 目の前が真っ白になるくらい晴れた空に、めまいがする。


 きっと昨日飲みすぎたせいだろうが、あえてそこは立ちくらみと言っておく。


 自称、バリバリ稼いでいるOL、村井遥はめっぽうお酒に強いと思い込んでいるからだ。





「熱いっすよ。梅雨入りしたのに晴れるな! バカ野郎――ッ!」


 人目のあるなし関係なく自分の意見を言う姿は、朝の通勤時間に滑稽に映る。

 それでも周りが変な目で見ているわけではなく、温かい目で日常の一コマとしてとらえてくれる。



 日常の風景の中を、当然でなしとしているように少年が通り過ぎていく。


 少年がそのまま車道に飛び出すのを村井は咄嗟に止めた。


「ヘイボーイ、こんな晴れた日の朝から何をしようとしているのかな? そりゃあ、人生いろいろあるわよ。あたしなんて昨日の夜から朝までの記憶がないし、頭痛いし日差しは強いし、熱いし……五分後の電車に乗らなきゃ会社に遅刻するし。このあたしのいっていることわかる!?」


「いや、なんとなく」


「そんなあいまいな返事をしないで……まだ君みたいな男の子は本当に幸せなこともわかっていないの。例えば――そう、恋。恋をせずして人は死んではいけないと思うの」


「はぁ……?」


「だから、死んじゃダメ」


「誰がですか?」


「――君」


 歩行者用の信号が青色に変わっても、歩道の前に立つ二人は歩きださない。


「いや、信号無視しようとしたけど、死ぬつもりはありませんでした」


「言い訳はやめなさい! どうせまた私が見ていないところで飛び出してしまうのでしょう? もしくはそこらへんで寝転んで――いままでの生きてきた半生を思い返しながら死ぬのでしょう?」


「『私の前じゃ――――死なせないよ!』みたいな顔で凄い勘違いしてるぞ、この人……。酔っ払いかな? ……厄介事担当は斗貴のはずなんだけどなぁ……」



「危ないっっ!」



 少年視点からみて、酔っ払いに突き飛ばされた。

 車道に突き飛ばされた。

 信号はもう変わっていて車走ってるし、車は急に止まれないし。

 ―――――――死ぬだろ。





「あんたが一番あぶねえよ! 奇跡的に生還して、突っ込み入れる余裕が今の俺にあることが驚きだよ……っていねえし! 殺人未遂の女いないし! おおぉぉぉおおお!!」



 朝の早い時間から叫ぶ男子高校生は、日常の風景に溶け込んでいった。

 そこに村井の姿はない。




 次なる犠牲者は、遅刻するつもりで河川敷を制服姿で歩く女子高生。




 それを見て村井は、


『あの子は――まさか――――本当に!?』


 よくわからない思考に落ちていた。


 完全な酔っ払いは人に迷惑しかかけないことなど、村井自身は知りもしなかった。






「そこの女子高生!」


「うざい」


 即答で女子高生は答える。村井の方を向かないで、その場から逃げるように早足で去っていこうとする。

 だが、村井は女子高生の正面に立ってその肩をつかんだ。


「年上の人に対して『うざい』はないでしょう! こんなにきれいなおねいさんが優しく――」


「うざい、黙れ。ちなみにきれいじゃないし、あんたはお姉さんってがらでもない。酔っ払いに絡まれるなんて最悪。本人が酔っ払っていることにも気づいていないなんて、普通すぎて笑えない、面白くもない、うざい!」


「えっと――」


「さっさと会社にいけ、リストラされるぞ。それに――――うざい」


 『うざい』が特徴的な女の子は、村井が涙ぐむまで言葉で攻め立てる。


 親の葬式でもあったんじゃないかってくらいスーツ姿の女性が泣いているのを見て、少女は少し後悔する。


 酔っ払いが泣いているときほど厄介なことはない。


「泣かない! あんたいい年なんでしょ! ちょっと小娘に言葉の暴力を受けたくらいで泣かないでよ!」


「泣いて……ないもん……」


「あーうざい。マジうざい」


「……うぅ。私、うざくないもん」


「ごめんねっ。それ、私の癖だから! 誰にでも言うから!」


 泣き崩れる+酔っ払い+幼児化。


 うざいというよりは、面倒くさい。


 こんな大人にはならないようにしようと、少女は心の奥底で決意して。


 残酷にも、村井をその場に置き去りにして小走りに学校へ向かった。





 ***


「おはようっ」


 クラスメートに声を掛けられるが、返す気にならない。


「おっはよう」


 朝っぱらから変なのに捕まるし、普通に学校には来ちゃうし。


「おはようっ!」


 とんでもない日だ。


「挨拶ぐらい返しなさいよ! 明らかに無視するんじゃないわよ!」




「うざい……つぎからつぎに……今度はこんなチンチクリンか」


「誰がチンチクリンよ! 自分とクラスの人の名前くらい覚えときなさいよ!」


「興味がない。特に元気ハツラツ、オッチャッパーな奴の名前なんて知りたくもない」


「キーーッ、覚えておきなさい! あんたのクラスの委員長やってる『柚木奏』。前回の全国模試で総合一位の頭のいい奏様のことをね!」


 ふんっ、おもわず鼻で笑ってしまう。


「自慢話なんて聞いてない。別に名前を覚えるつもりもないし、チンチクリンのオッチャパーがどんな奴かなんかに微塵も興味がない!」

「喧嘩売ってんの?」

「じゃあ私は喧嘩売られてるの?」



 いい忘れていたけど、私の名前は『(むらさき)朱音(あかね)』。名前が別の意味で色っぽい――全然嬉しくない名前の高校一年生。

 進学に興味がないのに特進クラスになってしまったストリートミュージシャン。

 夜の私は一味違うぜ。って言ってみたい気もするけど、今は喧嘩を売られたから買わなくてはならない。


 覚悟しろよ――柚木奏。





 ***


 バトルスタート!


 奏はレポート用紙を取り出した。

 そして何かを書き始める。


 朱音は言葉の暴力を始めた。

 しかしミス。

 集中した奏に朱音の言葉は届かない。代わりにクラスメートの一人が真に受けて気絶する。


「これを解いてみなさい!」


 レポート用紙にテストの問題のようなものが書かれている。

 それは因数分解。

 まだ彼女たちのならっていない範囲の問題だ。


 朱音はペンをとる。


「これがなに?」


 バカにしたようにペンで紙を貫く。


 奏は精神的ダメージを受けてしばらく動きが止まった。


「ちょっと頭がよくて、先のとこまで予習しているからってならってもいないところをクラスメートに出すってどういう神経してるの? やっぱ自慢なの、そうよね?」


 奏に追加ダメージ!



 反撃するために奏は拳を強く握り締めて、頭の中を整理する。

 拳を握りしめても、手を出さないのが奏のいいところだ。


 むしろ手を出せば自分が怪我するくらい、奏は運動音痴なので基本的にそうゆう方向へは行かない。



 そんなこと知らない朱音は軽くデコピンする。


「痛いっ……暴力反対! このっ、不良女!」


「あ~ら、甘ったれた家庭で育った奏ちゃんには、こうゆうのはダメなの?」


「……」


 一瞬曇る奏の表情に気づいて、朱音は動揺した! 5のダメージ!




「なに動揺してんのよ、バカ!」


 実質、奏から見て学力の劣る朱音に対して絶対優位の言葉を投げかける。

 同学年で奏に勝てる人はいないのだ。


「バカって言った方がバカだ」


「そんなセリフを吐く方がよっぽど大バカよ!」


 奏は腕を組んで余裕の態度を見せる。朱音に10のダメージ!




「勝てない部分で攻めてくるなんて、今朝の酔っ払いよりもたちが悪い」

「負け惜しみ?」

「会社にもいかないで女子高生に絡んでくるOLよりたちが悪いって言ってんの」

「遥さんみたいな人だね! でも、それは話しかけられる方にも理由があるんじゃないの。制服着て、通学路でもないところを歩いている人を見かければ声を掛けるわよ」


「義務教育でもないんだから、毎日朝から夕方まで閉じ込められる必要はない」


「わがままいうなっ」


 奏は辞書を投げつける。


 とっさに廊下を通り過ぎる先輩を盾にして朱音は切り抜ける。


「ぐはっっ!」


 身代わりになった名もなき先輩は想像を絶する痛みを浴びてその場に倒れ込む。


 奏はそれに見おぼえがある。


「あっ。この人、斗貴の親友の人だ。確か休学中で学校内では初めて会った」


「知り合いが大変なことになって、これは大ダメージね」


「いや、別に。どうせ斗貴の親友だし」


 思わぬ反撃にあい、朱音に20のダメージ!


 そして吹目空は腹にダメージを抱えながらその場に沈みこんでいた。

 一日に二度の軌跡は起きなかったようだ。



「どうやらわたしが圧倒的優勢のようね。なら次は――」


「言わせない! 勘でしかないけど、奏の口から次に出てくる言葉は、ある特定の男が出てきて。その人が変態であることを如実に語られそうでうざすぎるわ!」


「モノマネよ」


 ? 状況がわからなくなり、朱音は混乱する。


 朱音は気付いていないが、奏がモノマネするのは、朱音の毒舌なんて話にならにほどの毒女の三年生。言わずと知れた優良生徒のことだ。


 神出鬼没に現れ、人の言うことなど利かずにその場を散らかす。


 それは奏の予想などはるかに超える。


 そして、その場に第三の人物が現れる!



「下級生のゴミどもが吠えるわね!」



 いきなり奏・朱音の二人をゴミ呼ばわりするのは、月花天凛。ちょうど一年の教室に寝ころんでいた吹目が保健室に運ばれた直後に登場した。


 上から目線で、その場の空気を一瞬で変えてしまう。



「朝から酔っ払いに絡まれて情緒不安定の後輩その1に、その子に無視されてついいじけちゃった奏ちゃんね。まったく……お互いの共通の知り合いに振りまわされてこんなことになっているなんて、滑稽ね、ははんっ」



 そこに何かの絆が生まれた。

 唐突に確かな絆が生まれた。


「奏、なにあいつ?」

「ちょっと頭痛い人にも見えるけど、実際、言っていることは当たっているでしょ」

「まるでその場にいたみたいに、言い当てているわね。いえ、情緒不安定ではないけど」

「わたしもいじけてなんかない。遅刻常習犯を捕まえて、更生させるにはどうにかしようと思っただけ」

「そうだったの? 知らなかった」

「……滅多にないでしょ。初めから嫌いな人なんてそうそういないもの」

「じゃあ、別に喧嘩を売ってきたわけじゃないと」

「それはあんたからじゃない」

「……そう」

「……そうよ」




 二人が仲直りしかけていることに、天凛は気付かない。

 これぞ天凛クオリティー。

 風は読めても、その場の空気は読めない。

 人の心を見透かしているようでも、肝心なことは分かっていない。

 ちなみに、前回の模試で斗貴の倍近い偏差値をマークした天凛はよく考えずに行動する。



「さあ、血と肉の争いを続けなさい!」



 考えないから、ずれている。相手の心を分かっているつもりだから、容赦ない言葉をいってしまう。


 その様子を見て、奏と朱音は共有した思いがある。



「無益な争いは何も生まない――」



 それは当り前の教訓で、それでいて斬新なもの。



「けれども――この世に無害じゃない人はいる。目の前にそれがいる。あれとは関わりたくないなぁー」



 単なる感想にも聞こえた。

 そして二人は友となった。





 そして村井は上司にこっぴどく叱られた。


ドラマCD風に自己紹介させてみたかった。



ただそれだけ。

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