19:ゴールデンウィークがいつからなのかわからない
まったくもってわたくし事ですが、ゴールデンウィークの初日がどこからなのかわからないので、予定が立てられない。
だからただ時を過ごしていくだけにします。
それでは、進級した雨宮中心の砕けた話をどうぞお楽しみください。
難か今回は叫んでいる回数がやたら多いです。
『ゴールデンウィークがいつからなのかわからない』
どんなにおかしな学校であろうとも、新入生がいないことはないはずだ。
そりゃあ経済的に入学金や制服代で苦しむ家庭が増えるのも同義だけど、この際些細なこととしておこう。
新入生が考えていそうなことは、
高校に入ったら部活も本格的になって今までやってきた○○部をどうしようかな~とか。
初めての自転車通学。家から遠い分、寝坊したら絶対に遅刻しちゃう、とか。
給食終わったぁぁああーー! やっほう、好きなもん食べれるんだぜ。お昼時に弁当にカレーを仕込んできて“カレーの妖精”ってよばれるのも可能なんだぜ、とか。
まあ、そんなこんないろいろある高校生になりました。
年末はクリスマスも塾にいって頑張ってみて。
大好きなことも我慢して、大好きな人たちともあまり会わないようにして。
お世話になった遥さん、源田さん、榊さん、里佳ちゃん……おまけで斗貴。
柚木奏――今年から立派な高校一年生です。
***
ぞくぞく。
「最近寒いよな」
「そんなことはないですよ。むしろ暑くて暑くて死んでしまい、ます」
「斗貴――それは寒気というやつです。何かフォンなものが近づいている証拠だと思いますよ」
晴れて三年になれた俺と上下と凍山は同じクラスになった。
他の奴らもバラバラというわけではないが、それはまたの機会に。
上下は、上下里佳――サッカー部不動の空のエースであだ名は番長とか貞子とかいろいろ酷いが、みためはかわいいやつだ。
小柄な体に長すぎる髪のせいで、前に下ろしたときに貞子っぽくなるのがあだ名の由来の一つ。それに、試合中はそのモードのはいると何かのスイッチが這いあったように動きが変わるらしい。
実際のところよくわからない。
腕っぷしもやや強いでは済まないので、この学校では番長と呼ばれたりもする。
ストリートファイター的、裏で暴れまわるのではなく。格闘技の公式戦でしっかり表彰などされているのだから、変な勘違いはしてやんないでほしい。
根はとてもまじめでいい子なんだ。
「やはり雪女がとなりにいては全身が凍りついて死んでしまう」
「いやそれはない。ただユキ子が大量に汗をかいているのが少し気になる」
ぽっ、と視線をそらす凍山はよくわからないが、やること言うこと高校生以上で見た目小学生の里香は足をばたばたさせながら机の上に身を乗り出している。
「そういえば奏には会いました? 結構頑張っていたみたいですよ、私たちに内緒で」
「あいつならまったく勉強しなくても、ここくらいなら入れるんじゃないのか? だってあいつは、バカだけど勉強が出来る奴だからな」
「まあ、そうですね」
「いやいや、それはないでしょ……」
自然な流れで会話に入り込んできたのは、珍しき転入生の美少女。
日下部や凍山と同じようで違うところは、ある一人の生徒と交換でこの学校に来たことだ。いわゆる交換留学生国内版、っていうのかね。
「バカ呼ばわりされるのに勉強が出来たら天然みたいじゃない。むしろ天然の入った残念な子じゃないっ!」
見た目も中身も豪快な美少女は、以外にも未発達な部分の多い里香の親戚だった。しかも今少し休学をしている空ともつながりがあるとかないとか。
えらく強気な月花天凛さんである。
「たのもーーうっ!!」
天然の入った声が教室の中を突きぬける。
噂をすれば。
「噂の天然バカがきたのかしら」
楽しそうに口にする天凛。
ちなみに下の名前で呼ぶのは、そうしろと命令されたからだ。
なにも親密な仲なんかにはなっていない。
「ねえ!」
うわあ。
三年の教室に堂々と侵入してきていきなり俺の目の前まで来たよ。
最奥の窓側の席なのに。
「このデカイ女殴っていい?」
「誰のことだよ? ……なんだ、そうゆうことかよ……お前にないものを言っているとは思わなかったぜ」
ちちか。
「やっぱりあんたを殴る」
「痛いっ! それつねってるから! 地味に聞いてるから!」
「類友ね」
「むむむっ」
天凛が腕組をしながら見下した目で見てきて、凍山はじっと表情の読めない視線を向けてくる。
「ところで、ないとは思うけど。この“天凛”っていう人はときの彼女じゃないよね」
「里佳は知りませ~ん」
「むむむむっ」
「ふふっ」
人それぞれ思わせぶりな態度をとるが、そんははずはないのだから誰か否定してくれよ。
奏は割と短絡的に暴走しやすいんだからさ。
ほうら、拳に力を込め始めたよ。
「あんた――」
咄嗟に頭をガード。自分の席に座っているから他への打撃はないはずだ。
むしろ他の部分を殴るなら、そいつ考えてるよ。絶対咄嗟に逆上して怒りにまかせてないよ。なんて思える。
しかしどこへも怒り100%の打撃は襲いかかってこなかった。
「あんた――わたしをバカ呼ばわりしたでしょっ。外まで丸聞こえだったんだからっ!」
なぜか天凛に向かって奏が叫んでいる。
人見知りをする子なのに珍しいなと思ってしまう。
「私から見れば究極完全に天然バカな一年生ね。上級生に吠えるなんて態度をわきまえなさい」
「デカイからって調子に乗らないでよっ!」
「あなたのは、かわいそうね」
天凛は遊びでこの学校へ来たわけじゃない。
こちらの優良生徒と変えられるくらい。優秀な美少女だが、こいつにも欠点がある。
それも致命的な。
「さすがとしか言いようのない挑発ですね、おねいさまっ」
「里佳のおねいさま発言は慣れたな。理由はわかないけど」
周りが騒がしいのは慣れたものだ。
これでも去年は厄年だったのか、騒がしい連中とつるむことが多くあって。
忙しさと引き換えに楽しさを大量に得た年だった。
それなら厄年ではないのかもしれない。
そうだな。
「……斗貴にはかわいいって言われたわよっ!」
きっといい――いや。待て待て。
「俺はそんな爆弾発言した覚えはねえよ。三年の教室で叫ばれたらこの一年完全に厄年決定だよ!」
「ほら天然天然。とってもおかしな」
「どこがよっ!」
「例えば、大好きな人も前であくせくする感じはかわいくもあり面白くもあるわ。むしろ微笑ましいくらい」
「どこがよっ!!」
徐々に天凛の支配下に奏が置かれていく。
強気キャラでいえば天凛のほうが幾分か上だ。
「もう私の優勢はゆるぎないけどシロクロつけましょうか」
「望むところだあーーっ」
奏、やけだな。
見ていて――――――どうとも思わないが。
「じゃあ自己紹介。私は月花天凛、容姿、学業、武術に関しては敵がいないと自負しているわ。ちなみに相手の心を読み取る特殊能力もある――はい、次はあなたの番」
嘘とも本当ともとれる話にあっけにとられる奏だが、すぐに頭の中を整理して相手を追従する。ここで流れに身を任せなければ、それだけで奏の負けだと思った。
「そうね。わたしは柚木奏、もちろん健康的な美少女で運動を伴わない勉学に関してなら敵はいない。ちなみに、実はもう一人の私と魂を同期させて意識を現実化できる、かもしれない」
負けず嫌いな性格のようだ。
とりあえず、こんな二人が新たな騒ぎを呼び込む予感がするのは気のせいだろうか。
あー、早く帰ってきてくれ空よ。
お前ならこの唯我独尊の天凛も抑えられるはずだ。
そんでもって結城も帰ってこい。
サッカー留学とか洒落たことしてないで早く。そうしないと奏の相手をするやつがいないんだよ。
ああそうだ。ちなみに全く関係ない話だが、今日学校の自販機でリンゴジュースを飲もうとボタンを押したらオレンジジュースが出てきて。そのことをコカの自販機担当に電話したらお金が返ってくるとは思いもしなかったな。
もちろんどっちでもよかったから、百十円儲けたぜ。
ノープランで書いていました。
決めていたといえば、奏と天凛の絡みを試してみたかった、など。
若干人数が減りますが、ややこしさをなくすための処置と思っていただければ幸いです。
空と天凛は合わせた瞬間に、ある種の終わりがきそうなので。きっと会わせません。もし会わせるなら、天凛の過去を書かないと正直意味が分からなくなりそうですので。
まあ、プロットが妄想の粋ですのですべては未定なわけなのですが。