13:東の太陽と西の月 in 図書館
その他と玉梓などなど。
「13:東の太陽と西の月 in 図書館」
太陽が誰のことかはさておき、西の学校の校庭での一コマから数瞬後。
三人足す、もう三人でテレポーテーションの如く空間移動。
そして別世界のご登場。
ちょっと六人+αでファンタジーの世界をすぎていく。
なお、ナレーションは朧音夢。
とある少女の夢の物語、11歳のたわいもない小事になります。
ここはどこ? というありきたりな前置きは中略し、玉梓双子の舞い降りたのはたくさんの本で囲まれる場所。
乱雑に捨て置かれたものでなく、きちんと棚に整頓されていた。
ここは、少女が思い描いた通り“図書館”でできた世界だったのだ。
「なるようになるもんだねっ、かなちゃん」
「ははは……ホントに……」
彼女たちがここへ来たのは、思い描いた世界のどこかにいる人を探すためなのです。
西サイド。
全く関係のない三人は、偶然にもそのタイミングで彼女らに近づいてしまったため巻き込まれていた。
手をつないでぶっとんだ場所に飛ばされた玉梓双子と朧と違って、散り散りになった天凛とその他二名は慣れない場所でよくあることをしている。
「どこだよー。一人にするなよー」
「あっ! いたいた!」
本棚を隔てて近い場所にいたその他二名は、互いの声ですぐ合流できた。無限に続く図書館のなかでこんなにも早く出会えたのは奇跡に近い。
隊長なる天凛だけが一人っきりで変な場所にいる。
他の人と同じで、不思議な力も超能力も使えない一般人になったばかりの女の子はどこにいるのだろうか。
心配する二人だが、そう、ここにいない人の心配もしていられない。
この二人も一人でなくなりはしたが、図書館側からすれば立派な侵入者なのだ。
つまり、侵入したものは見つかり次第面倒なことになる。
ずっとここへ来るまで大声で人を呼び出していたのだから、警棒や網を持つたくさんのメガネに囲まれていた。
「なになに、ヤバイんじゃない!」
「誰かーっ、助けてくださいー」
助けなんてそんなものは来ない。たった一人の知り合いはスーパーヒーロではないし、むしろそうであったとしても助けに来るような人でないのは重々承知だ。
ならばこの場にいる新たなヒーローを呼び寄せよう。
この場の二人はそう思っている。
「あらあら――」
そこへ一人、片手に本を持つ女性が歩み寄ってきた。
未果はカバンの中から一冊のノートを取り出す。
中身は空白のページで大半が占められていた。
「未果、そのページにはもともとどんなことが書かれていたんだ?」
面白い本があるのかどうか一通り見てから、あきらかに興味を持てない本ばかり。しかたなく本を足元に積んだり、倒したりして遊んでみる。
すぐに飽きが来て、静かにぐちゃぐちゃにされた図書館になっていた。
彼方が本に埋もれながら妹に聞いてみる。
知らなーいという風に楽しそうな顔を未果は向けてきた。
これまた仕方なく、ここへ来てからすぐに姿を消した音夢のことを考えてみる。
前住んでいた所の近くで出会った当時十歳の彼女は、いま同級生になってしまっている。たしか姉とかいたはずだ。その姉は妹に社会的に抜かれていってしまったのだろうか。
少し不思議なことのできる彼女は、“それは特別な生まれ方を自分がしたからだ”という。
どう特別なのか聞いたことはないが、例えば喧嘩が人より強くて、普段暮らしている世界と違う世界のことを知っているという。
とにかく面白い女の子ってことに変わりはないのだけどな。
「誰か来たー!」
「でも天凛じゃないよっ。もっとご高齢だよっ」
メガネがじりじりとその他二人の所へ近づいてくる。
メガネたちはそれぞれに意識の断片が見えず。統合された意識下でのインターフェイスのような動きをする。
誰かの指示を元に、それを実行する。
そうゆう単純な思考しかできない、非常に堅そうな奴らが“メガネ”と呼ぶにふさわしい身なりをしていた。
「あらあら」
二周り年齢の違う女性は、少し離れた所から捕らわれの身になりそうな二人を見ている。
上品な笑い方をして、救いの手を二人に差し伸べようとはしてこなかった。
「残念ながら私は、この端末をどうにかできる命令権をもっていない。それにこれは、人の言葉を理解して“どうこう”できるほど精巧に作られていないの。だから、戦って」
無理です。
二人は叫んだ。
「そうなの? てっきり時空の狭間に潜りこんでくるような能力者なら戦えると思ったのに――本当に本当?」
訳がわかりません!
二人は正直に叫んだ。
もう黒服の手がすぐそこまでのびてきていたから。
マトリックスでいうシーズン3のミスタースミスのように気持ち悪い数の同じ恰好が迫ってきていたから!
「ふーん」
カツ、カツと靴音を立てながらもう少しだけ女性は動いてくれた。
綺麗に整頓された本棚に手を伸ばし、その中から一冊をとりだす。
取り出した本は、誰しも一度は読んだことのある本だ。
大きな旗を担ぎ、おばあさんおじいさんにもらったきび団子を担保に仲間を集める物語。女性はその物語の最後の方のページをめくった。
その本の中で、物語が決まり良く終わってページの都合で空白になったページがそこにある。そのページ大切に思う心を養った女性はそこに手をそっと当てる。
“ハッピーエンドのつづきがあるなら見てみたい”
その程度の考え方で、この人はそれを成せた。
「さあ見ていきましょう。
今まで知りたかったおとぎ話のつづき。
永遠に終わらない幸せをこの手に。
この図書館の司書長と認められた力を……」
司書長の手の本から光があふれ、その光から十代後半の人の影が現れる。
有名な童話のその後を描いた、すこし成長した姿で片手に日本刀、もう片方の手にきび団子を持つ彼が現れたのだ。
「マスターの命令のままに」
若い男性の声で光の存在は司書長に背中は向けながら窮地の二人を救いに駆ける。
邪魔な存在は最低限必要なだけ切り捨て、実害の出る場合のときだけ刀をしまって蹴りで応戦した。
多勢に無勢でこの状況一人で突破するのはやはり困難。
次第に“彼”は傷を負っていく。
武器を持った者に対して自動的に警戒レベルが引き上げられたためだ。
その傷を半分にしたような傷は司書長にも表れ、二つの者の繋がりをあらわす。
これ以上無像のメガネに立ち向かえば司書長なる人も危なくなり、警戒レベルが上がったことでその他の二人も余計に危ない。
メガネでない何者かが彼の下からすくいあげる用に触れた。
「巻き込んだ責任はしっかりとりますので、あなたの力を勝手に貸りさせていただきます」
校庭にいた小さな影がちょうど触れたモノが本へ帰っていったときに二人にも見ることができた。小さな声を上げ、その人に救いの眼を向ける。
「だいじょうぶです。あなたたちには守り通しますし、その後一切の記憶は消させていただきます。それに丁度ここには目的の人もいて、何もかも大成功です!」
小学生程度の背丈の少女は彼がここへ現れた根源たる力を吸収して変換する。
人の力を根源にそれを120%にして彼女が使うというのが簡単にできる解釈だ。
「朧音夢、この手の拳で守りたい人を守ります!」
***
どうしようもなくなったら、あの日を思い出そう。
そこにはきっと誰かが待っていてくれて。
誇りと思える人が、きっとその手を伸ばしてくれている。
君からもらった“それ”が大切なのもそれと同じかな。