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41 わたくしは尋ねる


 また、しばらく時間が経った。

 最近は、ちょっとだけ周囲の温度が涼しくなったかのように感じるが、実際の時間経過についてはわたくしには綺麗さっぱり分からない。けれど、まだ身体が重くてだるくてしんどくて、瞼がちっとも開いてくれない。なんともまあ難儀なことだ。このままでは、わたくしのお勉強や社交、その他諸々の後継者教育の一環で必要なもにの遅れがどんどんどんどん大きくなっていってしまう。

 分かっていても目覚められないということの苦痛を味わいながら、わたくしは今日の幸せな夢を堪能する。最近は、お父さまの雰囲気がまあるくて真綿のように柔らかくなってきた気がするのだ。

 まあ、100%多分、わたくしがどんどんお父さまを理想的な父親というものに夢のお父さまを作り替えてしまっているだけなのだが。

 そんなことまでしてしまうとは、なんともまあ情けのないことだ。

 わたくしって、こんなに弱い人間だったのね。


『………クラウディア、今日初めて料理をしてみたんだ。俺はお前同様に、料理へのセンスが壊滅的らしい。唐揚げを作ろうとして、変な気体を発生させるタコのような、紫色のグジュグジュが完成してしまった。お前が目覚めるまでには、料理上手なパパになっておくから、目覚めたら俺の料理を食べてくれ。我が愛娘』


 ………なんとなく想像がついた物体について考えながら、わたくしは心の中で口を開く。最近は、この作業への抵抗がなくなってきてしまっていて、遠慮なく心の中で思うままに発言している。もう、そのくらいしか救いがないのだ。お勉強をほっぽり投げて、周囲から逃げているわたくしには、こうやって言い返すしか精神状況を保つようにできないのだ。


(………余計なお世話でしてよ。わたくしのお料理ネタを出したいだなんて、変なお父さま。………それにしても、お父さまにもちゃんと得意、不得意が存在していたのね。意外すぎるわ。お父さまはなんでも1回でこなすことのできる完璧超人だと思っていたもの)

『……クラウディアにもちゃんと、俺と似た部分があったのだな。お前は色彩以外全てクロエ似かと思っていた』


 ため息のように紡がれた言葉を聞きながら、わたくしは苦笑する。


(お父さま、………そんなにわたくしは、お父さまの愛した、いいえ、愛しているお母さまそっくりですの?)


 誰も返事はくれない。

 心の中で体育座りをして首を傾げると、周囲にいる小さな妖精さんのような小人たちが、こくこくと愛らしくふんわりと笑って頷いている。いつからかわたくしの夢の中に住み始めた、(あい)らしい、そして(いと)おしい住人。けれど、彼らはたまに恐ろしい行動をするから、わたくしは彼らから視線を外すことができなかった。本当に、なんで彼らはわたくしの夢の中に侵入してきているのだろうか。そもそも、彼らはわたくしの夢の世界への侵入者であっているのだろうか。

 わたくしがしみじみと考えていると、お義母さまの声が聞こえた。


『ディア、今日は新しいお花の株が手に入ったの。珍しい品種らしくて、商人さんもとても嬉しそうになって話していたわ。早くディアと一緒に観察したいわ。とっても可愛らしい花弁を持っているのよ』


 少しだけ空元気の度合いがアップしたお義母さまの声を聞きながら、わたくしはクスッと笑う。


(………お義母さまの可愛い当てにならない気がするわ………………。お義母さまってば、人喰い花の花弁を見て可愛いって言った前科があるもの。ちゃんと一緒に見に行ってから可愛いか、わたくしの目でどうか判断するわ)


 この前、お義母さまは、貧民街にいる人間の子供を噛み殺していた狂犬を、ばくっ!!と食べたというか丸呑みした人喰い花を見て、可愛いと評したのだ。よって、わたくしは最近お義母さま曰く『可愛い!!』というものはあまり信用しないようにしている。まあ、当然の反応だろう。お義母さまは狂犬を丸呑みする人喰い花を可愛いという人なのだから。

 どのくらい考え込んでいたかは分からないが、気がつけばメアリーがわたくしのそばにいた。


『………クラウディアお嬢さま、今日も私は王城に行ってきました。今日も今日とて、私の可愛い甥っ子はうざったくて、クラウディアお嬢さまにたくさんのお見舞いのお品を用意していたのですよ?本当に、クラウディアお嬢さまは愛されていますね。私、自分のご主人さまがこんなに美しくて、優しくて、非の打ち所がないご主人さまで、とっても鼻が高いんですよ?今日も、たくさんの人たちがクラウディアお嬢さまが早く元気になりますようにと、お祈りをしていたんです。王城では、みんながクラウディアお嬢さまが復帰して、その優れた頭脳から繰り出す聡明で的確な意見を待っていますよ』


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