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35 わたくしは羨ましい

 わたくしには、並外れ、そのせいでまともに生活することすら叶わないレベルの、多すぎる魔力とそれを操作する制御力。そして、少しだけ人より優れた戦闘力と学力、お父さまとお母さまから受け継いだ美しい容姿しか持っていない。

 ライアンは人よりも多い魔力と、並外れた繊細な制御力、そして国王さえも頼り切る暗殺力に、今まで必死に学習に取り組んできたわたくしのことを簡単に追い越していく、優れた頭脳を持っている。他にも、この世のものとは到底思えない美しすぎる容姿も持っているのだから、この世は不平等すぎる。美しい輝きを放つ銀髪に、氷のような冷え冷えとした空色の瞳は、わたくしにいつも嫉妬させる。陽の光に当たっていながら日焼けという言葉を知らない肌は、いつも雪のように白くてとても美しい。ほうっとため息をついた回数は、いくら少なく数えても1度だけではない。もう毎日のように羨んでいる。彼はわたくしの持っていないものしか持っていない。優しい母親に優れた頭脳、身体能力、魔力、容姿、そして恵まれた財力に家名。

 同じ家の子供なのに、わたくしには一切敵わない。そんな義弟が羨ましくて、妬ましくて、苦しい思いが爆発して、わたくしはついつい義弟を馬車の外にほっぽり出してしまった。表向きは、ライアンがわたくしに悪戯(いたずら)をしたからということにしたが、実質のところはわたくしの感情が思わぬ爆発を起こしてしまっただけだ。

 他にも、わたくしの周囲には、たくさんの優れていて羨ましくて仕方がないものを持っている人たちがいっぱいいる。なんでも完璧で、足を掬われる心配が1つも存在していないお父さまに、なんでもそつなくこなす、優しくて人格者なお義母さま。王太子という重圧に一切潰されずに一生懸命に努力し、その努力の結果を必ずと言っていいほどに実らせている王太子殿下。淑女としては失格としか言いようのない王女さまだけれど、頭脳はこの世のものとは思えないほどに明晰で、それでいて斬新な意見を持っているティアラローズさま。嫌がらせをいっぱいしてくる貴族たちにも、それぞれ皆わたくしに持っていないものを持っていて、それが自慢できて、………わたくしにはそれが羨ましくて、辛くて、苦しくて、悲しくて、虚しくて仕方がない。

 わたくしは他人を羨んで、それでいて自分を可哀想だと慰める以外に何もできない、無能だ。わたくしは変わりたいと願っていながらに変われない、愚か者だ。


 わたくしはいつからか、自分を本気で怒ってくれる人を、探していた。


 けれど、そんな人が現れてくれることは一向になくて、皆がわたくしのことを途方に暮れた目で見つめてくる。それが悔しくて、悲しくて仕方がなくて、わたくしはぎゅっとくちびるを噛み締めて、貴族のご婦人と対峙する。ご婦人はにこやかに笑うわたくしを困ったように見つめていて、それに頷くお義母さまに、わたくしは無性にイライラしてしまう。


「ディア、焦る気持ちは分かるけれど、これ以上無茶を続けたら、本当に壊れてしまうわ」


 いつのまにかお茶会が終わって屋敷に戻ると、お義母さまがわたくしと真正面に顔を持ってきて、わたくしの両肩を掴んで優しい口調で諭していく。けれど、わたくしにはその言葉が耳に全く入ってこなくて、それどころか怒りばかりが降り積もっていく。


「………離して。わたくしには時間がないの。次は世界史の時間だから、予習をしなくちゃ………」

「ディア!!」


 お義母さまの手からするりと離れて、わたくしは自分の部屋に向かおうとする。けれど、次はお父さまがわたくしの前に立ちはだかってくる。


「………なんの用なの?お父さま」


 ある時からぱったりと、少しだけわたくしの甘くなったお父さまが、昔のように厳しい視線をわたくしに投げかけてくる。いつからか向けられなくなっていた視線がまたわたくしに投げかけられて、わたくしはぎゅっと怒りに染まっているであろう瞳をお父さまに向ける。


「………お茶にしよう、ディア。これ以上は、」

「時間がないって言ってるでしょうッ!!」


 わたくしの肩に乗ったお父さまの手をパシっと思いっきり叩くと、わたくしの視界がぐらっと揺れた。


「………おべんきょう、しなくちゃ。ちゃんと………、」


 何を呟いているのかすらももうはっきりと分からず、わたくしの身体は床にごっつんとしかけてしまう。幸い、ぎりぎりのところでお父さまが支えてくださったようだが、わたくしの視界はぼやぼやとぼやけてしまってよく見えない。

 わたくしはお父さまに抱かれたまま、ふらっと意識を手放した。



読んでいただきありがとうございます。


………もうちょっとダーク続きます。

気が滅入りそうですが、最後までお付き合いいただけると嬉しいです

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