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22 ディアの手料理

▫︎◇▫︎


Side. ライアン


 婚約者のディアが手料理を作っていると聞き、俺は完成した瞬間を見計らってディア専用の厨房の中へと足を踏み入れた。作っている最中は普通の料理に見えたのにも関わらず、入った瞬間に見えたのはこの世のものとは思えないものだった。

 ディアはそんな料理を見てショックを受け、かけら2つを持って颯爽と去って行った。おそらく味見をしてみるつもりなのだろう。

 ディアは、


『………えぇ、食べられるわ。食べられるものなら食べてみなさいな』


 と、言った。つまり、食べてみても、完食しても構わないということだろう。俺は炭のように真っ黒になっているのにも関わらず、スライムのようにぽよんぽよんとしている、クズクズになったディア曰く『干し葡萄(レーズン)入りのパン』を1カケラ口に入れた。

 その瞬間、吐き戻しそうになった。正直に言ってまずい。けれど、ディアが作ったと思ったら、それすらも愛おしくて美味しく感じられる。ごくんと飲み込めば、喉にひりつく灼熱が走った。ディアの扱う炎の魔法のような熱さは、とても心地がいい。こんな俺の姿を見たら、皆狂っていると口を揃えて俺のことを罵るだろう。だがそれでもいい、そのくらい俺のディアへの愛は重くて普遍だから。ディアに気づかれたら、引かれて避けられれてしまうだろう。

 俺はそんなことを考えて自嘲しながら、次々にえげつない味のするパンを口の中へと放り込んだ。


 あぁ、幸せだ。


 パンを食べ終わると、激しい腹痛に襲われる。脂汗が浮かんで立ち上がることもできないが、そこまで苦にならない。俺はのびのびと厨房に座り込んで天井を見つめた。

 遠くから、人が近づいてくる気配がする。

 だが、見知った気配に、俺は警戒をやめて穏やかな表情で座ったままでいる。


「ライアンさま、お嬢さまからの贈り物です」


 ディアの侍女メアリー。本名をマーガレット・クロスハートというらしい。今日ディアに告白しようとしてきたいけ好かない王太子殿下の叔母君であらせられるそうだ。それを使いっ走りにしているディアに苦笑しながら、俺は彼女が調合したであろう薬を一気に煽る。

 相変わらず、酷い味だ。


「ん、飲んだぞ。にしても、今日のはまた一段とおいしかったよ。ディアに伝えておいて」


 俺はひらりと手を振って自室へと戻った。


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