15 男はみんな狼さんらしい
わたくしはそっと自分の豊かな胸元に視線を落とした。
「………ーーーー」
すると、わたくしの視線の先には、彼に身体に押しつけられてむにゅっと形を変えたお胸があった。
「な、なななっ、なにが言いたいのかしら!?」
「………………」
気づかなかったふりをしようとしたが、わたくしの声は思いっきり裏返った。悲鳴のような声になってしまい、わたくしが自分の胸のあられもない姿に気づいたことが丸分かりだ。
「………ひとまず少しだけ離れて。男はみんな狼なんだから」
「? おおかみさん?もふもふの毛皮もお耳も尻尾もないじゃない」
「そうじゃない。………ーーそうじゃない」
2度言われてしまった。何故男の人は皆狼さんなのだろうか。意味が分からない。
狼さんというのは、大型のイヌ属の哺乳動物のことで、30種類以上の亜種が認識されている生き物のことだったはずだ。
現存するイヌ科の動物の中で最大の動物であり、また他のイヌ科の動物とは、耳やマズル、動物の鼻面・口吻を指す鼻口部、つまり動物の鼻先から奥歯のあたりまでの口元全体を指す部分があまり尖っていないこと、胴体が短く、尾が長いことで区別されている。しかし、狼さんはコヨーテやゴールデンジャッカルなどの小型のイヌ科動物と近縁で、それらの動物との間に子供を産むことのできる交配種を生み出している。
狼さんのもふもふふわふわの毛皮は通常、白色、茶色、灰色、黒色が混ざっているが、とっても寒い地域の亜種はほとんど白であることもある。
狼さんはイヌ属の中で最も、協力的な狩猟に特化していて、大きな獲物に挑むための身体的適応や、より社会的な性質、高度な表現行動などがそのことを示している。狼さんは、夫婦になったペアとその子供からなる核家族、1組の夫婦と未婚の子供で移動する。子は大人に成熟する、もしくは、群れの中での餌の奪い合いに応じて、それぞれの群れを形成するために離れることがある。他にも、狼さんには縄張り意識があり、縄張りをめぐる争いがオオカミの主な死亡原因となっている。
狼さんは主に肉食性で、角を持つ大型哺乳類のほか、小動物、家畜、腐肉、生ゴミなどを食べる。単独の狼さんやつがいの狼さんは、一般的に大きな群れよりも狩りの成功率が高くなる。狂犬病ウイルスをはじめとする病原体や寄生虫が狼さんに感染する可能性もある。
「何を考えているのです?」
「狼さんの基礎情報を思い出していたの」
わたくしの言葉に、ライアンがとっても苦々しい表情をする。わたくしは何か変なことを言ってしまっただろうか。ライアンから身体を少しだけ離したわたくしは、こてんと首を傾げる。
「………それで?狼ってどんな生き物なんだ?」
「ん?狼さん?」
「そう。簡単に教えて」
ライアンはわたくしの身体に擦りっと顔を擦り寄せてから上目遣いに頼んできた。無知な義弟のために、わたくしはちょっとだけ狼さんについてライアンに教えてあげることにした。
「狼さんというのは、大型のイヌ属の哺乳動物のことよ。現存するイヌ科の動物の中で最大の動物で、最も協力的な狩猟に特化しているの。狼さんは主に肉食性で、角を持つ大型哺乳類のほか、小動物、家畜、腐肉、生ゴミなどを食べるわ」
「生ゴミも食べるんだね」
「意外?」
「ディアが言うなら間違いない」
………ライアンには人を疑う心というものが足りないのではないだろうか。この子は、すぐに変な壺とかアクセサリー、偽の宝石を買わされてしまいそうだ。わたくしは人の良すぎる義弟にそっと溜め息をつく。
「ライアン、人の言葉は1に疑い、2に疑い、3・4で確かめて、5で疑うのよ」
「………信じるという言葉が1度も出てない気がするんだが………………」
「人は信用ならないもの。ずっと疑い続けるくらいでちょうどいいわ」
これはわたくしの経験則だ。貴族の間では足の引っ張り合い、蹴落とし合いというのは日常茶飯事。常に周り全てを信用せずに疑い続けるというくらいしないと、すぐにどん底に突き落とされてしまうのだ。誉れ高きローズバート公爵家の人間として社交界を共に背負うことになるライアンには、しっかりとそのことを頭に叩き込んでもらっていないと、わたくしが困ってしまう。
「ディアのことは信じるよ」
「………馬鹿言わないの」
「間があった」
「あっそ、好きに解釈したらいいわ」
わたくしはそういうと、彼の顔を見られなくなってぎゅうっと彼の身体に抱きついた。
「うぐっ、でぃ、ディア………?」
わたくしは彼の言うことを最近疑わなくなってきている。だから、これはその………、お揃いがちょっとだけ嬉しかったとか、そう言うのじゃないんだからね!?ただ、彼がわたくしのことを信じてるって馬鹿げたことを言ってことにムカついただけなんだからね!!




