22 わたくしの気づき
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Side. クラウディア
最近毎夜感じるわたくしを助け出す心地の良い冷たさに、わたくしはそうっと苦しい空間から抜け出した。するとそこには、憎くて憎くて仕方がない義弟の氷のような色彩の冷たい瞳があった。
「………らい、あん?」
「! そうです、義姉上。お加減は」
「………姉上とはよぶなといったはずよ………………」
口が上手くまわらず、舌ったらずになることに舌打ちしたい衝動に駆られたが、疲れ切った身体では、そんなことでさえも叶わなかった。
「じゃあ、………ディア。これで良い?」
「ふんっ、………すきにすれば?」
素直になれないわたくしが虚しくて、悲しくて、とってもムカつく。それに、彼に名前を呼ばれた時、なぜか左胸がぎゅーっと苦しくなった。
そして、無意識のうちに敬語がぶっ飛んでしまっていることに今更ながらに気がついた。そしてそもそも、夜中に義姉の部屋に忍びこむような男に、敬語なんかを使う必要がないことにも気がついた。
「………あなただったのね。わたくしを夢からつれだしてくれていたのは………………」
空虚な声は、わたくしの表情とは似ても似つかないだろう。わたくしは今も微笑みの仮面を脱げないでいる。ふと、わたくしはライアンの表情を見つめた。
「………………」
「………ねぇ、笑ってみて」
「っ、」
やっぱりそうだ。彼は表情が変えられない。わたくしと同じで。
「ふふふ、無理をいってわるかったわね」
「………………」
「風邪がうつるとこまるわ。さっさと出ていきなさい」
「ですが、」
「部屋はあつくてもだいじょうぶ。だいぶ良くなってきているわ」
ーーーあなたのおかげでね。
小さく心の中で付け足すと、ここまできてようやく、わたくしは隣にお父さまが座り込んでいることに気がついた。お父さまがわたくしのお部屋に来ることなど前代未聞だ。
「………お父さま、申しわけございません」
「何がだ?」
「………………体調をかんりできず、申しわけございません」
ライアンのお陰で少しだけ楽になった身体に鞭を打ち、わたくしはお父さまに寝転がったまま謝罪した。身体中にかいている汗がとっても気持ち悪い。今日は少し着飾っていたのが仇となってしまったようだった。
お父さまは怒っているだろう。熱のせいで、視界がまたぼやけてきている。また限界が近くなってきている。早くしないといけない。分かっていても、簡単にはできないものだと、わたくしは遠くなる意識の傍で他人事のように思うのだった。




