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8年越しの初恋に破れたら、なぜか意地悪な幼馴染が急に優しくなりました。  作者: 大森 樹


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98 初めての夜

 私は今、お風呂場に浸かりながらドロシーとアリスに髪のトリートメントをしてもらっている。


「お湯加減いかがですか?」

「すごくいいわ」

「よかったです。お風呂からあがられたら、オイルマッサージとネイルもしますからね」

「ええっ!そんなのいいわよ……」

「だめです。今夜は特別ですよ。それにこれは()()()()()()でもありますから」


 ザックのためだと言われると何も言えなくなる。私は彼女達にされるがまま、ピッカピカに磨かれた。確かにここまで完璧にされると、自信を持って夜に挑めそうな気がしてきたが……なんだかやる気満々な感じがして恥ずかしくなってくる。


「奥様、夜着はどれになさいますか?」


 ズラーっと並べられた夜着はどれも美しいものばかりだ。一級品であるのが一目でわかるほど、どれもレースやフリルやリボンがふんだんに使われている。しかし……どれもかなりセクシーだ。


 今までは割とキュートな物を着ていたのでこれはかなりハードルが高いわ。


「アリス……私本当にこれ着るの?」


 私は恥ずかしくて夜着を前にプルプルと震える。


「もちろんです。ドロシーさん、旦那様のお好みはどれだと思いますか?」

「あー……旦那様はね、つまらないことに好みが王道なんですよねぇ。白とかピンクとかかなと」

「意外性なしですね。じゃあ赤と黒と紫はだめか」

「もう少し後になれば、激しめのも刺激になっていいかもしれませんが、やはり今回は手堅くいきましょう!」

「そうですね!その通りです」


 今夜の夜着は選べない私を無視して、二人で盛り上がって勝手に決まった。色はベビーピンクで大事な部分を隠すように可愛い花の刺繍がしてあるが、ほとんど透け透けという新婚向けの仕様だ。


「奥様お綺麗です」

「これなら旦那様はメロメロですね」


 二人は大満足で頷いている。


「風邪をひいてはいけませんから、ガウンもかけておきますね。では良い夜をお過ごし下さい」


 ドロシーとアリスは仕事をやり遂げた!とばかりにニコッと笑い、さっさと部屋を出て行った。


「ちょっと、待って……!」

「旦那様には奥様の準備は整ったとご連絡しておきますから。では、おやすみなさいませ」


 バタン


 冷たい音と共に無常にも扉が閉まる。


 寝室に一人きりになったことで、緊張して心臓がドキドキとうるさく鳴り響いている。ちゃんとできるのかな。もし、ザックにガッカリされたらどうしよう。


 五分……十分……ベッドでそわそわしながらも、お行儀良く座って待っていたが、なぜか彼が来ない。


 ――来ない。なんで?一緒に寝るのが嫌になったとか?まさかね。


 私はお行儀良く座っているのもだんだん疲れてきて、座ったまま後ろに倒れてぐーっと伸びをする。


 まさにその時、ノック音とともにガチャッと扉が開き「リリー!?」という驚いた声が聞こえてきた。


 うわっ……今、私ひどい格好で寝転がっている!ガウンがめくれて足元も見えてしまっている。こんな姿を見られて恥ずかしい!

 そして慌てて起きあがろうとして、勢い余ってベッドからずり落ちそうになる。


「きゃあっ」

「危ないっ」


 ザックが下敷きになってくれて、私を抱きとめてくれた。


「びっくりした。怪我はないか?」

「ありがとう。あの、ごめんなさい」

「ん?」

「最初は大人しく待ってたんだけど、緊張するから……伸びをしてたの。それを貴方に見られちゃって」


 私は真っ赤になった顔を隠すように、彼の胸にぎゅうぎゅうとくっつく。彼も抱きしめてくれる。


「ドキドキしながら扉を開けたら、君がベッドで猫のようにゴロンと伸びてるから驚いたんだ。ハハッ……なんだか幼い頃のお転婆な君に戻ったようだったよ」

「わ、笑わないで。緊張をほぐそうとしたのよ」

「長く待たせてごめん」

「ううん」


 ザックの胸からもドキドキと心臓の大きな音が聞こえる。私と一緒で彼も緊張してるのだとわかる。その事実が少しだけ私の気持ちを落ち着かせた。


「床は冷えるから」


 彼は私を軽々と横抱きにして、ベッドにそっとおろした。私を見下ろす彼の瞳は熱がこもっているのがわかる。


「これ……すごくよく似合ってる」


 彼は私の夜着をスルッと撫でた。いつの間にか私の着ていたガウンは肌けてしまって()()夜着が見えていた。は、恥ずかしい。私は手で必死に赤い顔を隠した。


「やっ……恥ずかし……」

「可愛いから隠さないで。俺によく見せて」


 彼は私の手をそっと外して、ゆっくり口付けた。好きだ、可愛いと彼は私にそう言いながらちゅっちゅ……と顔中にキスの雨を降らす。そしてガウンはいつの間にか完全に脱がされた。


「リリー可愛い。ずっと、ずっと……君とこうしたかった」

「んっ……ふっ」


 そしてキスはだんだん濃厚になり、頭がぼーっとしてくる。


 ザックはキスをしながら器用に夜着のリボンをスルッと解くと、私の胸がふるんと露わになる。


 その瞬間ゴクッと息をのむ音が聞こえ、彼は真っ赤な頬で私の胸を凝視している。


「そ、そんなに見ないで」

「こんな綺麗な胸、今まで制服の下に隠してたの?」

「恥ずかし……い」

「恥ずかしくないよ。あまりに美しくて驚いた。ああ……好きだ。大好き」


 彼は私の体全部にキスをしていく。恥ずかしい部分までちゅっちゅと吸われて、くすぐったいけど気持ち良くて変になりそうだった。


「こ……んな。やめ……て、おかしくなる」

「おかしくなっていいよ」

「やっ……んんっ」

「君が甘くて酔ってしまいそうだ」


 彼はゆっくりと時間をかけて、私をとろとろに蕩けさせてくれた。


「ごめん……きっと初めては痛いと思う」

「貴方なら痛くてもいいの」

「リリー、愛してる」

「私もザックを愛してる」


 その言葉と共に激しい痛みがズキンときた。あまりの痛さに体が硬直する。


「リリー、ゆっくり深呼吸して。しっかり俺の背中しがみついてて」


 私はあまりの痛さに返事もできず、彼の背中に強く縋りついた。


 私の瞳からポロポロと涙が溢れてくる。彼はそれを見て私の涙を指で拭った。


「焦ることはないんだ。ゆっくり時間をかけよう?今夜はここまでに……」


 体を離そうとする彼を、ぐっと抱きしめる。彼は「無理しないでいい」と私に微笑んだ。


「いや。やめないで!ザックの本当の奥さんにして」


 彼はグッと唇を噛んだ後、はぁはぁ……と息が荒くなった。


「せっかく我慢したのに。もうやめてあげられない」


 急にギラっと彼の瞳が光り、その後は私の全てを彼に奪われた。激しいが優しさのあるその行為に痛みもだんだんと薄れてきた。


「君は痛いのに、ごめん。すご……気持ち……いい」

「いい……の。貴方が私で気持ち良くなってくれるの嬉し……い」

「ああ、リリー……!」


 こうして、時間はかかったが私達は無事に一つになれた。


「好きだ、愛してる」

「私も愛してる」

「……幸せすぎる。まるで夢みたいだ」

「夢じゃないわ」

「愛してる。ずっと、ずっと愛してるよ」


 彼の嬉しそうな笑顔を見たのを最後に、私は疲れて意識を失った。

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