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8年越しの初恋に破れたら、なぜか意地悪な幼馴染が急に優しくなりました。  作者: 大森 樹


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97 結婚式②

 ついに式が始まる。ハワード侯爵家とスティアート伯爵家の結婚ということもあり、今回の結婚式はなかなか大規模なものだ。


 流石に少し緊張して胸がドキドキしてきた。その時、お母様が優しい微笑みで私のベールダウンをしてくれる。


「リリー、とても綺麗よ。私の自慢の娘だわ。幸せになってね」

「お母様、ありがとうございます」


「姉様、すごく……すごく美しいよ。僕は姉様の弟であることを誇りに思うよ。今日はおめでとう」

「アーサー……ありがとう」


 私は泣いてしまいそうになるのをグッと抑え、笑顔を見せた。二人は会場にいるね、とその場から離れていった。


「大丈夫、心配することは何もないよ。俺が先に行って待ってるからな」


 アイザックは手をそっと握り、私を落ち着かせてくれた。


「では、行ってまいります。お義父様、よろしくお願い致します」

「ああ。頼むよ」


 アイザックはこの時初めてお父様を父と呼んだ。


 彼が会場に入ると割れんばかりの拍手と歓声があがっているのが聞こえる。


「リリー、ここまでよく立派に育ってくれたね。君は私の大事な宝物だ。愛してるよ」

「お父様……私も愛しています」

「幸せな花嫁に涙は似合わないよ。さあ、笑って。私の最後のエスコートだ」


 私はこくんと頷き、お父様の腕にそっと手をかける。


 昔からお父様は格好良くて、強くて、賢くて……いつも私を愛してくれて、守ってくれて大好きだ。


 本当の父親でないと知った時は驚いたけれど、そんなこと関係ないくらい愛情をそそいでくれた。彼が育てる決意をしてくれなかったら、私はここにいないのだ。本当にいくら感謝してもし切れないくらいの愛を貰っている。


 私が式場に入るとまたすごい歓声があがる。エミリーや学校の同級生達……たくさん来てくれている。ザックの両親とジョージの姿も奥に見え、嬉しそうに微笑んでくれているのがわかった。


 お父様と一緒にバージンロードを歩き、ザックの前に着いた。


「二人で幸せになりなさい」


 お父様が掠れた声で小さく呟いた。


「はい」


 私はとびきりの笑顔をお父様に向けてゆっくりと手を離し、ザックにエスコートをしてもらう。二人でしっかりと壇上まで歩いていく。


 お互い誓いの言葉を述べ、彼が私のベールをそっとめくった。


「リリー、愛してる。一生一緒にいよう」

「私もザックを愛してる」


 優しく触れるだけの口付けを交わし、そっと体を離してお互い見つめ合う。彼の熱っぽい瞳に吸い込まれそうだ。


 その瞬間、わーっと歓声があがり「おめでとう」と「お幸せに」と沢山のお祝いの言葉が飛び交う。


 私達は笑顔で壇上を降り、二人で歩いていく。ああ、幸せだ。大好きな人と結婚して、みんなに祝福されることは私の幼い頃の夢だったのだ。こうして結婚式は無事に終わった。


♢♢♢


 私は結婚式が終わってすぐに重たいドレスは脱ぎ去った。ザックは美しいドレス姿の私を堪能したかったのにとガックリしていたがしょうがない……ちなみに()()とはどういう意味なのか考えると恐ろしいので笑顔で無視しておく。


 そんなザックを馬車で慰めつつ、私達の新居へ向かう。


「結婚式は最高に幸せだったけど、綺麗な君が目の前にいるのに触れられないのが辛かった」


 彼はぎゅうぎゅうと私を抱きしめて、チュッチュと沢山口付けてくる。


「ちょ、ちょっと!馬車の中でやめて」

「嫌だ。君が足りない。二人きりだしいいだろ?」


 さっきまでのキリッとしたザックはどこにいったのかと思うほど、今の彼は私に甘えている。そして、急に膝枕して!とごろんと横になった。しょうがないので、よしよしと頭を撫でると幸せそうに目を細めた。


(なんか可愛いかも……)


 ふと幼い頃、よく私にくっついていた泣き虫のザックを思い出した。立派な大人の男になった今もきっと甘えん坊の本質は変わらないのだ。こんな彼の姿を知っているのは私だけだろう。


 でも、昔と違って困るのは甘えながらも「男」を出してくることだ。撫でていた私の手をそっと取って愛おしそうにキスをし、指をペロリと舐めた。


「なっ、何するの」


 私は真っ赤になって慌てて手を引っ込めた。


「リリーが可愛いからつい」

「つい……って」

「夜まで我慢する」


 彼はギュッと目を閉じて狸寝入りをし始めた。夜まで我慢……我慢⁉︎


 ――わかっている。夫婦になると何をするかはわかってはいたが、それが現実なのだと改めて自覚して恥ずかしくなる。それから家に着くまで、私達は膝枕のまま一言も話さなかった。


 ガタンと馬車が停まると彼はパチッと目を開けて起き上がり、私をエスコートして降りた。まだ頬の赤い私を見て彼は「ごめん。君を緊張させるつもりはなかったんだ」と謝った。


「私こそ……その、子どもっぽい態度でごめんなさい」

「いや、俺の方が悪いから」


 家の前に着いたのに、なかなか入ってこない二人を使用人達が不思議そうに見ている。


「行こう。みんな待ってる」

「ええ」


 門に着いた私達を使用人達が「旦那様、奥様、おめでとうございます」と頭を下げて出迎えてくれる。


「奥様……」


 その呼び方に照れてしまう。そうよね。今日かは私は奥様なのよね。ザックも「旦那様」と呼ばれて気恥ずかしそうだ。まだ若い私達はこれから二人で少しずつ慣れていくしかない。


「皆、出迎えありがとう」

「とても嬉しいわ」


 私達はお礼を言い、中に入る。ハワード家からは執事のジルとメイドのドロシーが来てくれている。


「ここがお二人の寝室です。ちなみに続き部屋になっていて右が旦那様、左が奥様のお部屋です」


 寝室は大きなベッドが一つあり、落ち着くシンプルな作りになっていた。


「リリーの部屋見てみて?」

「ええ」


 私はドキドキしながら、扉を開けるとそこは私の好みぴったりのお部屋になっていた。


「うわぁ!すごい。素敵なお部屋」

「気に入った?」

「とっても!」


 喜んでいる私を見てザックもとても嬉しそうにしている。


「旦那様は奥様のために、家具だけではなく壁紙までご自分で考えていらっしゃったんですよ」


 ジルがそう教えてくれた。全部ザックが考えてくれたんだ……嬉しい。


「ジル!そんなことリリーに言わないでいい」

「申し訳ありません。出過ぎた真似を」

「いいえ、教えてくださってありがとう。ザックが私のことを考えてくれてこの部屋を用意してくれたのね。とっても嬉しい……すごく気に入った」


 ザックは「当たり前のことだ」と頬を染めて照れていた。


「じゃあ、リリー!そろそろ二人でゆっくり……」


 ザックがそう言った途端にジルは彼の肩をガシッと持ち、ドロシーとアリスは私の肩をガシッと持った。


「えっ?」

「何っ?」


 私達二人とも驚いて声をあげる。


「旦那様?ゆっくりする時間などありませんよ。やること沢山ありますからね」

「さあ!奥様は旦那様よりさらに忙しいですよ。全身ピカピカにするんですからね」


 二人はそれぞれの使用人に別々の部屋に連れて行かれた。

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