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8年越しの初恋に破れたら、なぜか意地悪な幼馴染が急に優しくなりました。  作者: 大森 樹


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96 結婚式①

 まるで二人の門出をお祝いしているかのように澄み渡った青空。結婚式にはぴったりの天気だ。


 今日、私はスティアート家を出てハワード家に嫁ぐ。今朝早く起きて、リリアンとトーマスのお墓に結婚の報告に行った。


 昨夜はお父様とお母様に今まで育ててもらった感謝を述べて、二人はそれぞれ「幸せになりなさい」と私を抱きしめてくれた。そしてハワード家に嫁いでもいつまでも「私達の娘」だと言ってくれて嬉しくてつい泣いてしまった。


 もちろんアーサーともゆっくりと二人でお茶をして、たくさん話をしてとても楽しく充実した時間を過ごせた。


 そして、今は家族四人で最後の朝食を取っている。幸せな時間になるはず……だったのに、いつも通り優しい微笑みのお母様に比べて、男性陣二人は沈みきって暗い表情だ。なんで!?


「お父様、アーサー?あの、最後なのですからもう少し明るく楽しく食べたいのですけど」


 二人は私の方をバッと見てうるうると目を潤ませた。


「可愛い君が嫁ぐ日が本当に来るなんて!ああ、もうこのまま時が止まればいいのに」

「そうだよ。姉様!最後だなんて。最後だなんて、信じたくないよ」


 大の男がうっ、うっと目頭をおさえている。


「あの……新居すぐそこですよ?」


 まるで辺境に嫁ぐレベルの哀しみ方だが、五分もかからず会いに来れる距離に住むのだ。私は苦笑いしてしまう。


「距離は関係ない!大事な娘が他の男のものになるなんて……今からでも結婚を取りやめさせたい」

「姉様が家にいないなんて、やっぱり想像できない」


 ――全く困ったものだ。助けを求めるようにチラリとお母様を見る。


「昨日、二人ときちんとお別れできたと思っていたのですけれど……お母様、これはどういうことでしょうか?」

「男の人はね、女の前で格好つけたがるけどいざなるとだめなのよ。ふふ、可愛いわよね」

「可愛くないですよ。結婚式当日なのにこんなの困ります……」


 お母様は「そうね」と、ふぅ、とため息をついた。


「二人とも!リリーが困ってるわ。ほら、これから綺麗なリリーを見ないといけないのよ。ご飯食べましょう」

「エヴァ……でも」

「デューク、リリーのためにあなたは誰よりも格好良い父親でバージンロードを歩かなきゃだめでしょ!しっかりしてください」

「そうだな」

「ええ」


 お母様はにこっとお父様に微笑んだ。


「アーサー、あなたもリリーの隣に並んでも見劣りしないくらい素敵な弟でいないと恥ずかしいわよ?式場までエスコートするのは貴方の役目なのよ?」

「そうですよね。姉様が恥ずかしくないように僕がしっかりしないと!」

「ええ、その通りね」


 お母様はアーサーにもニコニコ微笑んだ。


「リリー!とびきり素敵な父親になるから」

「姉様!完璧にエスコートするから安心して」


 ――さすがお母様。二人の扱いは完璧だ。


「ありがとう。二人とも今日はお願いね」


 私も微笑むと、さっきまでの暗い雰囲気が嘘のように楽しく朝食を食べることができた。


 そして家を出る時は使用人達がズラッと並んでお見送りをしてくれた。


「お嬢様、本日はおめでとうございます。アイザック様といつまでもお幸せに」


 みんな笑顔でパチパチと拍手をしてくれて、私は涙が出そうになる。


「ありがとう。みんな……お世話になりました」

「お嬢様、名残惜しいですがそろそろ向かいましょう。私は式場でヘアセットのお手伝いしますからすぐに追いかけますので」

「ええ、アリス待っているわ」


 私は笑顔で手を振って、さっきとはまるで別人かのようにキリッとした姿のアーサーにエスコートされながらスティアート家を出た。


♢♢♢


 式場に着くと沢山のスタッフに囲まれ、あっという間にウエディングドレスを着せられ、お化粧をされ、完璧にヘアセットをされた。


 美しいレースがふんだんに使われたドレスは、動くとふわふわと羽のように動いてこの世のものとは思えぬほど綺麗だ。


「お嬢様、とても……とても美しいです」


 アリスは涙を浮かべて私を眺めている。


「みんながセットしてくれたおかげよ」


 着替えが終わったその時「旦那様のご準備も整われました」とザックが控え室に入ってきた。


 今日のザックは髪をかきあげ、豪華な礼服をビシッと着こなしており……格好良い。私の色であるラベンダーのチーフとタイをしてくれているのも嬉しい。


「ザック、とっても似合ってて素敵よ」


 私は思ったことを素直に伝えた。それなのに、彼は私を見ても何も言ってくれないため不安になる。もしかしてドレス似合ってないのかな?好みじゃないとか……?


「……しい」

「え?」

「美しいな……まるで俺だけの女神(ヴィーナス)がこの世に舞い降りたかのようだ」


 あまりに過ぎた褒め言葉に、私の頬は真っ赤に染まる。彼は私の近くに来てそっと頬を撫でる。


「いつも綺麗だが、今日のリリーはとびきり綺麗すぎて驚いた。こんなに美しい君と結婚できる俺は本当に幸せ者だ」

「ありがとう。私も貴方と結婚できて幸せよ」


 彼は嬉しそうに目を細めて、小声で「口付けしたいが、今したらリップが落ちるね。本番にとっておく」と囁いた。


「じゃあ、またあとで」


 ザックはスタンバイするために先に式場に向かって行った。


「お嬢様は本当にアイザック様に愛されていらっしゃいますね。彼のもとに嫁がれるなら、私は安心です」


 そう言ったアリスは私にとびきりの笑顔を見せた。

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