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8年越しの初恋に破れたら、なぜか意地悪な幼馴染が急に優しくなりました。  作者: 大森 樹


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91 卒業式①

 瞬く間に月日は過ぎ去り、あっという間に卒業式だ。私は今日で着るのが最後になる制服の袖に手を通す。


 アリスは私の身支度を手伝いながら「ご入学されたのがついこの間のようなのに、もうご卒業されるのですね。おめでとうございます」と涙ぐんでいた。


 私は一ヶ月後には結婚式も控えており、色々な準備に追われ忙しくしていた。


 お母様とお義母様と三人でたくさん相談して決めてウェディングドレスも出来上がったと連絡があったし、数日後には新居も完成する。正直新しい生活に不安もあるが、ザックと一緒ならきっと楽しいはずだ。


「おはよう、リリー。魔法学校卒業おめでとう」

「本当におめでとう。とても嬉しいわ」

「お父様、お母様おはようございます。お二人のおかげで無事卒業できます。ありがとうございます」


 私は両親にスッと頭を下げてた。二人は優しく微笑んでくれた。


「姉様、おめでとう。でも、一緒に学校に行けるのが最後だと思うと寂しいな」

「ふふ、アーサーもありがとう」


 いつも通り四人で朝食を取り、アーサーと馬車に乗り込む。学校に着くと、門でザックが待ってくれていた。


「最後だから一緒に教室まで行きたくて」

「そうね。お迎えありがとう」

「義兄さん、姉様をよろしく」


 アーサーはザックにエスコートを譲った。


「制服姿の可愛いリリーが見納めかと思うと、残念だな」

「もう、何言ってるのよ」

「結婚しても俺の前だけで着てくれてもいいよ」

「着ません。最後だと思って、しっかり目に焼き付けておくことね」

「ええー……じゃあ、今日はずっと近くで眺めとこう」

「ちょっと。離れて!歩きにくいから」


 いつものように、そんな軽口を言って笑いながら教室へ向かう。


「舞踏会前にまた迎えに行くから」

「ええ。お願いね」


 今夜は学校主催の舞踏会がある。入学式の時よりも規模が大きく、生徒だけではなく親や関係者もたくさん来るし恐らく卒業のお祝いとして陛下も顔を出されるはずだ。


 彼と手を振り別れ、自分の教室に向かうとエミリーが座っていた。私の学校生活は彼女と共にあったと言っても過言ではない。


「リリー!おはよう。学校が最後だなんて思えないわね」

「ええ、そうね。信じられないわ」

「貴方と毎日過ごせてとても楽しかった」

「私もエミリーと会えて毎日すごく幸せだった。いつも助けてくれて、仲良くしてくれてありがとう」

「これからもずっとよろしくね」

「もちろんよ」


 二人でギュッと抱きしめ合う。今日はお互い示し合わせて、お揃いの髪飾りを付けている。


「さあ、卒業式に向かいましょう」

「ええ」


 その後、滞りなく卒業式は終わり……残すは舞踏会だけになった。時間が空くため一旦自宅へ戻りドレスに着替える。


 今夜のドレスはザックが贈ってくれたものだ。濃い鮮やかなブルーで裾には沢山のビーズで刺繍がしてある素晴らしいドレスだ。それだけではなく、ネックレスや髪飾りまで全て彼からの贈り物。もちろん全て青色だ。


 お父様は「あいつの独占欲は相変わらずだな」と届いたプレゼントを眺めてため息をついていたが、お母様は「愛されてる証拠よ」と笑っていた。


「お嬢様、お似合いでございますよ」


 青のドレスを着た私を褒めてくれる。今日は卒業式ということで、少し大人っぽくヘアアレンジをしてもらった。


 迎えにきたアイザックは私を見て、蕩けるような笑顔を向けた。


「リリー、この世のものとは思えない程美しいよ」

「とても素敵なドレスや宝石を贈ってくれてありがとう」

「俺がしたいんだ。愛する人を飾るのは婚約者の特権だろ?それにリリーをこの色に染めたいのは俺の我儘だから」


 そう言って私の頬にキスをしてくれる。


「私達も後で行くから。アイザック、頼んだぞ」

「もちろんです」

「ええ、お待ちしておりますわ」


 私達は先に馬車に乗り込んだ。彼は私の隣に座り、そっと手を握った。


「卒業は哀しい?」

「少しだけ。ザックは?」

「俺は嬉しいよ。ここまで長かったから……やっと自分で働いて、結婚して君と新しい生活ができることが幸せだ」

「私も一緒に暮らせるの楽しみにしてる」


 つい恥ずかしくなって頬が染まってしまう。彼はとても嬉しそうに微笑んでいる。


「ああ、もうこのまま君と二人きりでいたいな」

「くすくす、そんなこと言って」

「だって会場では立派な侯爵令息を演じないといけないから面倒だ」


 彼は嫌そうにそう話しているが、会場に一歩入れば完璧にその役割をこなすことを知っている。


「本当の貴方は私だけが知っていたらいいわ」

「リリー……それもそうだな」


 馬車が舞踏会場に着いた。ザックと共に扉を開けると沢山の人々がこちらに注目する。ザックは特進クラスでも有名人……見られるのはいつものことだ。私達はその注目を素知らぬ顔で受け流し歩いていく。


「リリー!アイザック!!」


 後ろからエミリーの声が聞こえたので、笑顔で振り向くと婚約者のハンス様と寄り添っている彼女がいた。


「エミリー、ドレス似合ってる!素敵ね」

「リリーもとても綺麗よ」


 キャッキャと二人で盛り上がっていると、ハンス様が優しく話しかけて下さった。


「アイザック君、リリー嬢、お久しぶりだね。二人ともいつもエミリーと仲良くしてくれてありがとう」


 穏やかに微笑むハンス様は穏やかで大人な素敵な男性だ。私達も彼に挨拶をし四人で談笑する。ずっと話していたいが、お互い家のお付き合いもあるためしばらくして別れた。


「エミリーとハンス様、素敵なカップルね」

「まあ、俺達には負けるけどな」


 そう対抗するザックにくすくすと笑う。その時、ダンスの曲が流れてくる。


「愛しのリリー、お相手いただけますか?」

「喜んで」


 差し出された彼の手を取り、優雅に踊り始める。ザックは男っぽいのでダンスが苦手そうだが、さすが侯爵家令息……実は踊りが上手なのだ。彼と踊るのはとても楽しい。


「リリー、踊ってる君も綺麗だ」

「ありがとう」

「でも男どもがみんな君を見ているから妬けるよ。俺のだと見せつけておかないと心配だ」

「まあ……そういう貴方も可愛い御令嬢達から見つめられてるわよ?」

「君以外は目に入らないさ。だがこうやって美しい君と一緒に踊れるなら、舞踏会も良いものだと思えるな」

「ふふ、そうね」


 私達は二曲連続で踊って、少し休むことにした。同じ人と連続で踊るのは『特別』の証だ。ザックが飲み物を取ってきてくれる。


「リリー、卒業おめでとう。アイザック、邪魔して悪いが一緒に挨拶に行くところがある」


 お義父様がそう声をかけてきた。


「ありがとうございます」

「親父……でも心配だから、リリーと離れたくないんだが」

「大丈夫だ、そこにデュークが来てる」

「ザック、私は気にせず行ってきて。今夜はお父様とも踊ろうと思っていたの」

「わかった。すまない、なるべく早く戻るから……絶対にデューク様といるんだよ」

「ええ」


 私の頬をそっと撫でて、彼は去って行った。

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