表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8年越しの初恋に破れたら、なぜか意地悪な幼馴染が急に優しくなりました。  作者: 大森 樹


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/100

72 花冠

 それからは二人で他愛のない話をした。


「ねえ……ずっと気になってたんだけど、どうしてブライアンは魔法を使う時に指を鳴らすの?」

「変化魔法はレアな魔法だからな。変化するには条件がいる……それが『指を鳴らす』なんだ」

「へぇ、いろいろあるのね」


 基本的に彼は私の話を聞きつつ、上手く相槌を打ってくれるのでとても心地が良い。

 お父様より年齢が上とは思えないほど彼とはとても話しやすいし、落ち着く。


 彼は話しながら花を何本か摘み、器用に編んで花冠にして私の頭に乗せた。


「わあ、器用ね!花冠なんて子どもの時以来だわ」


 私は嬉しくてクルッと回り、ドレスの裾を少しあげて「どう?」と戯けて彼に見せる。


「可愛い」


 彼は目を細めて、愛おし気に私に微笑んだ。その表情を見て、私は急に恥ずかしくなって下を向く。


 彼は立ち上がって、私の手をそっと握った。


「そろそろ帰ろうか。きっと仕事から帰ってきたデュークが心配している」

「ええ。素敵な場所に連れてきてくれてありがとう」

「どういたしまして。()()でまた来よう」


 彼はニッと笑った瞬間パチンという音と共に、スティアート家の前に戻ってきた。


「デュークに話があるから私も家に行くよ」

「わかったわ」


 私達が玄関に入ると、すぐにアリスが出迎えてくれた。


「お嬢様お帰りなさいませ。ご無事で良かっ……あのその格好は」

「へ?」


 そう言えば、私は花冠を頭に乗せたままの浮かれた姿で帰ってきてしまった。勢いよく花冠を取り、髪の毛を整える。


「王宮でお嬢様とブライアン様が急に消えたと騒ぎになっておりまして。皆心配しておりました」

「ええっ!!」


 まさかそんな大騒動になっていたとは驚きだ。花畑で話し込んでいる場合ではなかった。


「旦那様が奥でお待ちです。ブライアン様も一緒にお越し下さい」


 あー……これはお父様怒ってるパターンだわ。


「リリー!無事で良かった。ブライアン、お前ふざけるなよ。魔力測定中に移動魔法で消えるなど前代未聞だ」

「測定は終わってた。だよな、リリー?」

「はい」


「しかも未婚の令嬢と侍女も付けずに二人きりで過ごすなどあり得ないからな!!」

「お父様、心配いただくようなことは何もありません」

「何もないのは当たり前だ!!!」

「……煩い男だな」

「大事な娘に不名誉な噂が出たらどう責任取るつもりだ」


 お父様はよほど心配だったのか、なかなかの怒りっぷりである。


「責任?私が取っていいなら大歓迎だが」

「なんだと」

「もう、二人ともやめてください」


 二人はまだ睨み合っている。


「リリー、おかえりなさい。ブライアン様、娘を送ってくださってありがとうございます」


 そんな時にお母様が彼に頭を下げてふんわり笑顔で話しかけてきた。


「エヴァ……」

「あなた、今後のことでブライアン様とお話があるとおっしゃっていたでしょう?」

「ああ」

「ブライアン様、申し訳ありませんがお時間いただいてもよろしいかしら?」


 ブライアンはお母様をチラリと目で見て、縦に頷いた。


「なら、ちょうど良かったですわ。リリー、貴方は私と話しましょう」

「はい」


 お父様達をその場に残して、私はお母様の部屋に移動した。


「お母様……心配おかけして申し訳ありません」

「彼が移動魔法を使ったのでしょう?じゃあ、リリーにはどうしようもないわ」

「でもそのまま話してたら、こんなに時間が経ってしまって」

「楽しかったみたいね。それ、もしかしてブライアン様に作っていただいたの?貴方は昔から編むの苦手でしょう?」


 お母様は私が手に持ったままの花冠を眺めている。


「そうなの。移動したら全面お花畑の綺麗な場所ですてきだったわ。あの人めちゃくちゃ器用で、ささっとこれ作ったのよ。すごいわよね」

「ふふ、リリーはブライアン様に愛されているわね。彼がそれを作ったと聞いたら皆驚くわ」


 驚く……そうなのだろうか。私にとってはブライアンは口が悪くて意地悪なところもあるが、基本的には優しくて冷静で大人な人だ。そして少し寂しそうで子どもっぽい可愛らしい部分もある。


「今から話すことは伯爵家の母としてです。貴方は婚約中の身よ。学校でもない場所で侍女も連れずにアイザック君以外の男性と二人きり……外聞が悪いことはわかりますね」

「はい」

「もし二人きりになってしまったとしても、貴方が自ら帰りたいと毅然とした態度を取らねばなりません。彼にそう言っていませんね?」

「……言っていません」


 きっと私がそう言えばブライアンはすぐに家に帰してくれていただろう。


「何かあったなんて、私もデュークも思っていないわ。でも、()()()()()()()と世間は思うのです。有る事無い事言われるのが貴族社会。貴方も子どもではないのだから、もう知っているでしょう?隙をみせてはだめ」

「気をつけます」

「わかればいいの、話はそれだけよ。美味しいお菓子があるの、一緒に食べましょう」


 お母様はニコッと笑ってそう言ってくれた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ