51 祝福
ブライアンはボロボロに傷付いたお父様を冷めた目で見ている。
「貴様のような弱者の傍にいたらリリアンの二の舞になる。邪魔するなら死ね……闇の矢!」
「お前なんかが姉上の名前を口にするな……吹雪!」
氷と闇の魔法がぶつかり合う瞬間「もうやめて」と叫んで私は間に入った。驚いて目を見開く二人の顔が見える――が、二人ともすぐには魔法を解除できない。
バリアを纏った私でも二人の魔法を受け止めきれず、パーンという音とと共にバリアが解けて体が吹っ飛ばされる。
「リリーっ!」
私が壁にぶつかる寸前で、アイザックが下敷きになりなんとか抱えてくれたため……なんとか生きている。
「リリー……大丈夫か?」
「う、うん」
「間に合ってよかった。危ないことするな!死んだらどうするんだ!」
彼は私をギュッと抱きしめた。
「無事でよかった」
「アイザック、ありがとう」
「「リリー!大人しくしてろ!!」」
お父様とブライアンはほぼ同時に同じ台詞を叫び、私にかなり怒っている。
(二人、き……気が合うじゃない)
「あとお前、ふざけるなよ。どさくさに紛れていつまでリリーに抱きついてるつもりだ?殺すぞ」
「そうだ……いい加減娘から離れろ」
次は二人がアイザックをギロっと睨む。しかし、彼は見せつけるようにさらにギューっと力を込めて抱きしめた。
「リリーは離さない……彼女が女神だろうが何だろうが関係ない!俺が彼女を一生守って幸せにする」
私はそれを聞いてぶわっと頬が染まる。
「何も知らぬくせに。力のない奴が……軽々しく守るなどと口にするな」
ブライアンの体の周りには怒りで魔力が漏れ出ているのか黒いもやが見える。
「デュークよりお前の方が邪魔だな。先に逝かせてやろう。守ると大口を叩いた以上……せいぜい楽しませてくれよ」
正直、この恐ろしい魔力量の彼に今の状態で勝てるわけがない。でも私はアイザックのことが――
そこで、私は先程初めて聞いた自分の能力を思い出した。
女神の祝福
「おお、やってやるよ」
アイザックは私から体を離して、立ち上がろうとした。私は彼の首にグッと手を回し全体重をかけて顔を無理矢理引き寄せた。
「わっ」
彼はいきなりのことでバランスを崩し、私の方にぐらっと体が傾く。その瞬間を狙って、私は彼に強引に唇を押し付けた。
ちゅーっ
彼は私にされるがまま、目を見開いて固まっている。そして唇を離してもまだ呆然としているアイザックの頬にも、ちゅっと軽くキスをした。
「私わかったの……貴方が好き!私の力は貴方に使って欲しい」
「リ、リリー……!?」
彼はハッと正気に戻った瞬間、頬を真っ赤に染めていたが……すぐに自分の体の違和感に気がついたようで不思議そうに手の平をグーパーしていた。
アイザックは祝福のおかげで魔力の強化、回復どちらもしているはずだ。違和感はそれが原因だと思う。
「あの時と同じ感覚……力がみなぎってる」
「それが私の能力らしいの」
「そうか。今まで君の力に気が付いてあげられなくてごめん。俺に力をくれてありがとう」
「アイザック、お願い。私を救って」
「もちろんだ……誰よりも愛してる」
彼は私を愛おしそうに見つめキスをした。
「はっ、茶番は終わりだ。お前らが愛し合っていようが関係はない。力こそが全てだ」
「なんだと?」
「愛で救われるなら……リリアンは死なずにすんだ」
「うるさい!リリーを奪おうとするやつは誰一人許さない」
「お前に女神の祝福が使いこなせるか?せっかく貰った力を暴走させていたお前若きが?」
「同じ失敗は二度しねぇんだよ!」
「お手並み拝見だな」
アイザックは私とお父様にまとめて防御をかけ、バリアを作った。
「デューク様、見ててください。俺が勝ったらリリーとの結婚認めてくださいね」
「チッ、親の前でいちゃつきやがって……だが、リリーのこと頼んだ」
「はい」
「さあ、来い。お前が女神に相応しい男が判断してやる」
「お前は何様なんだよ!」
二人の力は凄まじく、闇と炎が激しくぶつかり合う。力はほぼ互角だ。
ドォーン バーーンッ
先程から何十分も、大規模な魔法の応酬が続いている。二人のあまりの威力に、もともとあった家はほとんど形が残っていない。
「お前のせいで、リリーと一緒に暮らす家がなくなった」
「何が一緒に暮らすだ!どうせ使わないんだから、壊す手間省けてよかったな」
「相変わらず、不愉快なガキだ」
「だが弱い割に、力の扱いが上手くなったではないか?」
「リリーの力を俺が使いこなせないわけがない」
「お前はずっと守る覚悟はあるか?死ぬ可能性があるぞ」
「どうせ彼女に一度は救っても貰った命だ。それならばどんなに危険でも、何があっても彼女のために生きるさ」
「へえ。ではお前の覚悟を試そうか」
「闇の霧」
彼が魔法を唱えた瞬間、アイザックの周りが真っ暗闇に覆われた。
「アイザックっ!!」
この黒い塊は何なのだろうか?大丈夫なの?
「アイザックっ、アイザックっ!!」
私は彼を大声で呼び続けた。




