表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8年越しの初恋に破れたら、なぜか意地悪な幼馴染が急に優しくなりました。  作者: 大森 樹


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/100

34 再会

 街中を歩いていると、急にドタドタという騒がしい音がして数人の逃げる男を「待て!」と追い掛ける騎士達の姿が見えた。


「リリー、俺の後ろにいろ」

「うん」


 アイザックは壁際に私を寄せ、前に立ってくれている。私は不安で彼の服をギュッと握った。するとその手を包み「大丈夫だ」と微笑んでくれた。


 犯人の何人かは騎士に捕まったが、まだ刃物を持って暴れ回っている男がいる。周囲からきゃーと悲鳴が聞こえて来る。


「しょうがない……リリー、絶対動くなよ」


 アイザックはそれだけ言って、犯人の前に出て行った。


「おい、いい加減にしろ」

「なんだ!お前は」

「お前のせいで彼女が怖がってんだよ。邪魔だ」


 彼は一瞬で犯人の刃物を持った腕を掴んで、腹に蹴りを入れて体を倒し、背中側に手を回して拘束した。


 あまりに無駄のない華麗な動きに、街民達は「わーっ」と賑わい「お兄さんすごい」と、みんなが拍手を送っている。


 アイザック……格好良い。胸がドキドキする。彼が魔法使いとして強いのは知っていたが、体術もこんなにできるんだ。


 彼は近くにいた騎士団に犯人を引き渡し、すぐにこっちに戻ってきた。


「アイザック!すごいね。急に前に行っちゃうから驚いたけど」

「一人にしてごめんな。いや、あれくらい大したことないから」

「格好良かった」


 私が思ったことを素直にそう言うと、アイザックはぶわっと頬が真っ赤に染まった。照れてるのだろうか?


「リリーにそう言われると……嬉しい」


 さっきの彼はものすごく格好良かったのに、今はなんだか可愛らしい。そのギャップについふふふ、と笑ってしまった。その時……


「アイザック、手間をかけたね。ありがとう」


 ――その声を私はよく知っている。


 私はゆっくりと顔を上げてその声の男を見た。なんで……なんで、よりにもよって今日サムに会ってしまうんだろう。


「あれ?リリーも一緒にいたんだな」


 彼は私を見て嬉しそうにニカッと笑った。その笑顔を見るだけで、反射的に泣きそうになるのを必死に堪える。


「サムさん……お久しぶりです」


 アイザックも驚いているのか、それ以上は喋らなかった。


「ああ、久しぶり。元気そうだね。あいつ俺の隊が追ってた窃盗団でさ。アイザックが捕まえてくれて助かったよ。君は強くなったな」

「いえ……大したことないですから」


 サムはアイザックと話した後、私の前に来ていつものように屈んで目線を合わせてくれる。


「リリー……毎日のように現れていた君が、最近全く来ないから体調でも悪いのかと心配してたんだ。変わりなかったかい?」


 そうだ……彼は舞踏会でのことを知らない。だから、なぜ私が急に彼の前に現れなくなったのかがわからないのだ。恋人との逢瀬を私に見られていたことも知らないはず。


「うん……元気よ」


 まずい。全然元気じゃない声が出てしまった。こんな言い方をしたらきっとサムは変に思う。


「リリー?そんな元気がないなんて君らしくないな。何か悩みがあるんだろ?俺に話してごらん」


 そう言って彼はいつものように私の頭を撫でようとした。


 (やめて!他の女の人が好きなのに私に触らないで。……優しく心配もしないで)


 頭に触れる直前に、サムの手をアイザックが掴んだ。


「サムさん……俺達今日デートしてる」

「え?」

「だからさ……サムさんには悪いけど、今後リリーに気安く触れるのやめてくれない?俺が嫌なんだ」


 サムはそう言われて驚いた表情をした。その後、少し寂しそうに微笑んだ。


「そうか。悪い、俺が無神経だったな」

「……狭量ですみません」

「いや。そう思うお前が当たり前だ。リリー、会えてよかった。君の幸せを祈ってる」


 彼は私にそう言った後、「リリーを頼むな」とアイザックの肩をポンと叩いて去って行こうとした。


 私は……サムの元に駆け寄り、背中に抱きついた。驚いた彼は振り向こうとしたが、私はそのままで聞いてと制止する。


「私、サムのことずっと大好きだった。一人の男性として!でも貴方には私ではだめだって、やっとわかったの」

「リリー……」

「ずっと迷惑かけてごめんなさい。サムも貴方が愛する人と幸せになってね。私も……それを遠くから祈ってる」


 私は泣かないと決めていたのに、自然とポロポロと涙が出てくる。


「いつか……ちゃんと妹として会いに行くから。今は……ごめんなさい。お願いだから、振り向かないでこのまま行って」

「黙っていて悪かった。そうだ、俺には愛してる人がいる。なのに慕ってくれる君を……妹として手放したくなくて、俺は誤魔化して真正面から君と向き合うことから逃げた。ごめんな、俺が全て悪い。リリーの気持ちはとても嬉しかった、ありがとう」


「さようなら」


 私がそう言うと彼は、振り返らずにそのまま街中に消えて行った。


「リリー……」


 アイザックが呼んでいる。ゆっくり振り向くとギュッと強く抱きしめられた。


「……っく、ひっく……ちゃんと自分からさよならって言えたよ」

「ああ」

「哀しいけど、スッキリした」

「そうか……よかった」


「君がサムさんに走って行った時は焦った」

「どうして?」

「サムさんに気持ちが戻るかもって……生きた心地がしなかった」

「……新しい恋をするって決めたもの」

「俺と?」

「ふふっ、どうかな」

「ほら……うん、って言ってみて?」

「ふふふ……嫌よ」


 彼がよしよしと頭を撫でてくれる。不思議……アイザックに触られるとすごく落ち着く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ