表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8年越しの初恋に破れたら、なぜか意地悪な幼馴染が急に優しくなりました。  作者: 大森 樹


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/100

25 昔話②【アイザック視点】

 体調は戻ってきたが、まだベッドから出ようとしない俺をリリーは不思議そうに見つめている。


「もう元気なのに、どうして外で遊ばないの?何か嫌なことがあるの?」


 そう聞いてきた彼女に……俺は重い口を開いた。


「僕……魔力が少ないんだ。ハワード家の長男なのにありえない。父様はあんなに強いのに」

「え?ハワード家って魔力がないと継げないの?」


 彼女はキョトンと首を傾げている。継げないわけではないだろうが、魔法使いの名家の後継がそれではだめだろう。


「弟は魔力が強いのに……僕はなんで……」

「そうなの?じゃあ、よかったじゃない!貴方が継いで、ジョージに魔法のことはフォローしてもらおう。アイザックは好きに生きれるね」

「え?」

「何する?勉強して賢くなるか、剣を習って騎士になるとか……魔法がなくてもできることなんていーっぱいあるわよ」

「え……でもさ……」

「私だってスティアート家の長女なのに魔力なんて微々たるものよ。お父様はあんなにすごいのにさ。私達一緒だね」


 そう言って彼女はニコニコと笑っていた。


 (好きに生きれる……?そんなこと考えたこともなかった)


「じゃあ……騎士になりたいけど、僕は背も小さいし無理だと思うんだ」

「やってないのにどうして無理だと思うのよ?いっぱい食べて、大きくなって、剣の練習しましょう」

「でも……」


 この時の俺は後ろ向きで、ぐずぐずした甘ったれだった。


「でもでもうるさいわよ!じゃあ私はとりあえず、この前のウサギのリンゴを綺麗に作れるようにするわ。練習して出来ないものはない!だから私ができたらアイザックも騎士になる訓練をはじめなさい」

「わかった……」


 俺は渋々了解した。あともう一つ大問題があった。


「それに……僕は父様と母様の子じゃないらしいんだ。拾い子だって。大人がそう噂していたのを聞いちゃった」


 リリーはそれを聞いて目が溢れるんじゃないかというくらい驚いた。しかし、すぐにすっと顔を戻して首を横に振った。


「誰がそんな嘘を言ったの?貴方、おじ様にそっくりじゃない」


 彼女は珍しく……本気で怒った顔でそう言った。


「それがショックでご飯が食べられなかったのね。一人で悩んで辛かったね」


 リリーは俺の頭をよしよしと何度も撫でてくれた。そして、彼女は「すぐに解決してあげる」とニッコリと笑って部屋を出て行った。


 そして、バタバタと音を立てながら両親の手を引いて部屋に入ってきた。


「な、なんだ?リリー急に?」

「そうよ……ど、どうしたのリリーちゃん?」


 俺の両親は急に連れて来られて、とても戸惑っているようだった。


「アイザックはおじ様とおば様の子どもよね?」


 リリー!


「は?当たり前だろ」

「そうよ。なんでそんなことを?」


 二人は何を言っているんだという表情だ。


「養子じゃないわよね?」

「間違いなく実子だが……リリー、これは何の話なんだ?」


 親父のその言葉を聞いて、俺はボロボロと涙を溢した。


「アイザックはね、嫌な大人達に二人の子どもじゃない……拾ってきたって子だって言われたそうよ」


 リリーは両親に向かってはっきりそう言った。親父はくるっとこちらを向いて、泣いている俺の頬をパシッと叩いた。痛くて……ヒリヒリする。


「馬鹿野郎っ!誰だ?そんなしょうもない嘘を言った奴は。お前も……疑ってんじゃねえよ」


 そう言ってガバッと抱きしめられる。お袋も涙ぐみながら俺の手を握ってくれた。


「僕……背も低いし。魔力も少ないし……父様に似てないから……っひっく、ひっく」

「俺もお前くらいの年齢の時はチビだった。そのうちでかくなるさ。魔力はどうしようもねぇかもだけど、魔法使い以外を目指せばいいだろ」

「父様が小さかった……?」

「ああ」


 初めからちゃんと話せばよかった。そう、全ては俺の勘違いだったのだ。リリーは俺たちの様子を見て嬉しそうに微笑んでいた。


 リリーがいなければ……俺はどうなってたんだろう?


 しかも、彼女は二週間後に完璧なウサギリンゴを目の前で披露してくれた。毎日練習して、やっと作れるようになったらしい。


「やればできるでしょう?」


 彼女は得意げにそう言った。今日のはどこからどう見ても可愛いウサギだ。すごい……前はあんなにボロボロだったのに。


「アイザックも諦めずに何でもやるのよ!」

「うん、僕今日から剣の訓練する。好き嫌いもやめて沢山食べて体も大きくなる」

「そう!その調子よ。アイザックならできるわ」


 (リリー……ありがとう)


 それから、俺は本当に頑張って訓練に励んだ。走ったり、筋トレをしたり体力もつけた。だんだん泣くことも少なくなった。


 リリーの隣に立って恥ずかしくない男になりたい。リリーを守れる男になりたい。リリーに俺を好きになってもらいたい。


 それだけを目指してずっと努力を続けた。そして日を重ねる度にリリーを好きな気持ちがどんどん……どんどん大きくなっていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ