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DEATH ERASE MINE/デス イレイズ マイン  作者: 堺 かずき
第2ゲーム
10/15

第10章 袋の鼠

「ヨロズ、四谷傑(よつやすぐる)引率グループ総勢二十一名、生存十七名、消滅一名、死亡三名、以上」

会社、ヨロズの十階にある社長室には、四谷傑を含めた十七名が横一列に並び、リーダーである四谷傑が代表して社長の師定に現状報告をしている。師定は四谷の報告を雑に聞きながら椅子に座って手に持つリストが書かれた紙を眺めていた。

「よく生き残った。【メルム】が起きた後にゲーム界からニンゲン界に戻ってこられるなんて、お前らは運が良い。しかし時間がない。早速だが仕事にとりかかってくれ」師定は単純作業のように決まった言葉を並べる。

「分かりました。では早速仕事にとりかかります」十七名が社長室から出て、仕事へと向かった。

「あと一グループ……十師(とし)グループがまだゲーム界から帰ってきていない」師定は椅子の肘掛けに手を置き、貧乏ゆすりをしている。

「そしてあと一人……プログラム・セキュリティ担当もまだ帰ってきていない」師定は一人の名前を見つめる。その一人はヨロズにとって今後の目標を果たすために重要なキーパーソンだ。二人のニンゲンによるヨロズ襲撃事件で電気配線がダメになってしまった。ならびに要であるノートパソコンが二人のニンゲンに奪われた。ノートパソコンを取り返したあと、二度と奪われないために、さらなるセキュリティを強化するためにキーパーソンの帰還が絶対になる。

「よう社長さん。四谷のグループが帰って来たんだな。階段で四谷たちとすれ違ったぜ」一師が社長室に入るやいなや、師定に話しかける。しかし師定は一師の話を無視して、リストに目を通している。

「まだ十師のグループは戻ってきてないのか?」一師は無視されたことに気付かず、師定に訊ねた。

「ああ、そうだ。お前は十師グループの一人だったろ?十師のグループはどうなってやがる?」師定はリストを机に放り投げ、一師の顔を見た。

「知らねえぜ。十師グループの集合の場所はゲーム界に決定したようだが、ゲーム界かニンゲン界か、どちらにしても結局はこのヨロズに集まる。だいたい俺は集団行動なんて向いてない」

「集団行動できない奴がよく入社してこれたな」師定が一師に指摘する。しかし一師は言葉を続ける。

「十師グループがニンゲン界に戻ってこない限り、オレはまともに仕事ができねえじゃねえか。せっかく一番乗りでニンゲン界に戻って来たのにオレらのグループが最後に帰ってくるなんて無駄な努力だった」

「自業自得だ」師定がまた指摘する。

「そしてプログラム・セキュリティ担当もまだ帰ってきていない」師定はため息をつきながら言った。

「なんだと⁉そいつが居なきゃヨロズは動けないじゃねえか」一師は目を見開いた。

「まあな。プログラム・セキュリティ担当は優秀だったんだが、惜しいな」師定は言った。

「オレがセキュリティを管理してもいいがな?」一師は師定に聞こえるように言った。

 しかし師定は一師の言葉に、聞く耳を持たなかった。

「あの二人はどこに行ったんだ?」一師は師定に質問した。どうやら一師の言う【二人】はミユとカイを指していたようだ。師定は意図をくみ取った。

「あいつらはどうやら町に行ったらしい。用があるんだとな」

「そうか……」一師が呟く。

「ちょっくら散歩でも行くかな」一師は社長室を出た。

「あいつは社長室に何しに来たんだ」師定は机にある一個のガスマスクを目にした。


 *


「ふう。隊長。これでようやく二体目を倒せましたね」グンは倒れた針の毛を持った黒のケモノを尻目に、構えたライフル銃を肩に担ぎながらグンに話しかける。

銃戟隊のグン、アトラスは二匹のヤマアラシ型のケモノを討伐した。カジが二体、羅奈が一体討伐し、あとは七体。

 グンはケモノと戦闘中にも助けを求める笛を鳴らし続けた。しかし二丁拳銃のカジを除き、別の銃戟隊やケモノを狩るハンターが援助に来る気配が無い。

「隊長!」グンを呼ぶ声がした。その声はアトラスの声ではなく、五人の声だった。

 グンが振り返ると、銃戟隊の隊員、トルツ、ノゾ、コルネ、ナオカ、フォートの五人が武器を抱えている。おのおのが白い息を吐きながら、浅く呼吸をしている。

「お前ら……!生きてたのか!」グンはとっくに死んでいると思っていた隊員の生還に目を見張った。

「はい!私たちは倒壊した建物の下にいたんですが、奇跡的に私たちは軽い怪我で済みました」生還した隊員の一人、フォートが言った。「軽い怪我」とフォートは言ったが、フォートの片足は血にまみれており、他の隊員に支えられながら片足で立っている重症の状態だ。

「でもまだ建物の下敷きになっている隊員が……」足を怪我しているフォートを補助する隊員、ノゾが言う。

「あと五人、建物に圧し潰されながら、生死を彷徨っています」別の隊員、トルツが付け加えてグンに報告する。

「そうか……」アトラスは隊員の報告を聞き、銃戟隊の隊員が数名生き延びていることに対して希望を感じた。

 銃戟隊が二人の壊滅状態からケモノを討伐、隊員の生存で苦境から抜け出す兆しが見えた。

 しかし隊員五名が生還したはいいものの、片足が潰れているフォートや腹部に深い傷を負って血を流している隊員、ナオカがいる。

 戦場の前線で戦えるのは多く見積もってもグン、アトラス、トルツ、ノゾ、コルネの五人。ただ二体のケモノ討伐でグンとアトラスは体力を消耗し、生還した軽傷の隊員も短い呼吸をとめどなく何度もしている。

 絶望的な状況は変わらない。

「まだケモノがいる。お前ら二人はどこかで休んでいろ」グンがフォートとナオカに言った。

「いいんですか?隊長。私たちが休憩しても……?」腹部に重傷を負っているナオカが言った。

「良いに決まってるだろ。そんな怪我でケモノが狩れるのか。逆にケモノに狩られるぞ」

「でも、隊長は……」足を負傷しているフィートが包帯に覆われたグンの両腕を見やる。

「こんなのは傷でも怪我でも病気でもない。己に構うな。さっさと休んで一刻もはやく傷を癒せ」グンは顎で建物の陰へと行くように仕向けた。

「それか銃戟隊本部に行って助けを呼んでくるか?お前は片足でしか立てないのに歩く根性があるなら、今ケモノを倒せ」

「……わかりました隊長。休ませていただきます」重症の隊員二人は休息するため、物陰へおぼつかない足取りで向かった。


 *


 僕とケモノ使いのベアストは、荒れた【ウェスト】のグラウンドのなかにいた。僕はグラウンドに散らばっている町の残骸を注意深く見ていた。

「なんでこんなに荒れたんだろう……?」僕はなんとなくそう思った。

「まるで【イカリノヒ】の後みたいね……」ベアストは呟いた。

「いかりのひ……?それって何ですか?」僕はベアストに質問した。

「【イカリノヒ】というのは……」

「ヒムト!建物のなかを見てみるぞ」セニオルは遠い場所から僕を呼んだ。ベアストの話を遮ってしまった。

「わかりましたー。いま行きまーす」僕とベアストはセニオルへと速足で向かった。


「まず、建物回りを探したんじゃが、町が荒れるようなめぼしいものは無かったんじゃ。もしかしたら建物のなかに何かがあるかもしれん」セニオルが杖を突きながら体育館の入り口へと続く階段に立った。

「ここでこのケモノ達を治せるお医者様がいるといいけどね」ベアストは階段を駆けあがりながら手にあるケージを持ち上げ、二匹の状態を見る。まだ弱っていて黒のまだら模様がある。

「この町の有り様だと、ケモノの医者どころか人っ子一人いるかどうかすら怪しいかもしれんぞ。それでもいいか?」セニオルはグラウンドへ杖を使って指し、ベアストに訊ねた。

「この町にお医者様が確実にいないってわかったら、他の場所へと探します。まだお医者様がいないって決まったわけじゃないですからね」

「そうか、ならば入るぞ」セニオル、ベアスト、そして僕は体育館の入口へと入った。

 体育館の入り口には靴を脱ぐスペースがあった。そこに古びたバレーボールで使う得点板など、どこか錆びついていて古めかしいものがあった。

 そして左にAED、右には消火栓が備え付けられている。消火栓のランプは消えていた。

 僕とベアストは靴を脱ぎ、セニオルは足袋のまま、体育館のなかに踏み入れると、そこはバスケットコート一面ぐらいの広さだった。前にステージがあり、臙脂色のカーテンが垂れている。そして壁際には畳まれた布団や毛布がいくつも寄せてあった。ベアストは弱ったケモノが入ったケージをAEDの下に置いた。

 僕はステージに駆け上がって、舞台袖に行った。そこはむせるほどホコリ臭かった。特に目立ったものは無かった。ステージに戻ろうとすると、臙脂色のカーテンの下に何かがあることに気付いた。

「なんだこれ?」しゃがみ込んで何かを手に取ると、それは普段の学校の体育館では、到底転がってはいないものだった。

「注射器?」一瞬、僕は目を疑った。それは針が剥き出しになっている注射器ではなかった。よくよく見てみると、採血するような抜き取る注射器ではなくて、ワクチンを注入するような中身がある注射器だということが分かった。

「なんでこんなものがここに……?」学校には擦り傷や切り傷といった怪我を手当てするものが保健室にあるが、注射器のようなものはないはずだ。

 この注射器が何のためにあるのか、どうしてこんな体育館のカーテンの下に落ちているのか今の僕には分からない。

「ヒムト!何かあったのか?」セニオルが体育館の真ん中で僕を呼んだ。

「ちょっとこれ……」僕はステージから飛び降りてセニオルの元へと駆け寄る。

「それはなんじゃ?」

「注射器みたいです」

「チュウシャキ……?」セニオルは首を傾げた。

「チュウシャキってなんじゃ?」セニオルは僕の顔を見た。

「注射器っていうのは……注射するやつです」

「チュウシャ……なんぞや?」

「注射……身体に薬を直接いれるものです」

「薬か。そのチュウシャキに薬が入っているというわけじゃな?」

「うーん。注射器に薬が入っているかどうか怪しいです。さらにこの中に何が入っているかすらも分からないです」

「そうか……ヒムトにも分からないか……おいベアスト!」セニオルは体育館の倉庫を物色しているベアストを呼んだ。

「どうかしましたか?」ベアストは倉庫から出てきて、早足でステージへと上ってきた。

「このチュウシャキってやつ、見たことあるかい?」

「いいえ……よく分からないです」ベアストは首を傾げながら答えた。

「そうか……この中には薬が入っているらしいんじゃが、弱っているケモノにこの薬が効くかもしれん」

「いや、効果が分からない薬をあの子達に投与するのはケモノ使いとして私は怖いです」ベアストはAEDの下にいるケモノの方向へと目を向けた。

 まだ小さなケモノは弱り続けている。


 *


 まだ大きなケモノは生き続けている。

 私はケモノを討伐しないといけない。このままではケモノが町まで被害を及ぼしてしまう。

「どこ?ケモノはどこに行ったの?」私の両手には皮の手袋がはめられていて、両手に拳銃を握って辺りを探している。

「おお、カジじゃないか」男性の大きな聞き馴染みがある声がした。

「アトラスさん……!グンさんも無事だったんですね!」アトラスさんの隣にグンさんもいて、その後ろに三人の隊員がいる。

「ちょっと待て。カジが【グンさん】と呼んだか?」

「私も違和感がありました。カジが【アトラスさん】って……」グンさんとアトラスさんは腰に手を当てて向かい合って、お互い首を傾げた。

「そうだ……今はカジだ。あの、実は」

「コンティニュ―ブレス?しかも画面が光っている……?まさかメルトが起こった後でもニンゲンに乗っ取られているのか!」グンさんとアトラスさんは咄嗟に銃口を私に向けた。

「ちょっと待ってください!私は羅奈です!羅奈!」私は二丁の拳銃を腰のホルダーに入れ、両手をグンさんとアトラスさんに手の平を向けて動きを止める。

「ラナ……?まさか、ラナはカジをコンティニューしたのか?」アトラスさんが銃口を下に向けながら首をひねって考え出した。

「そうか……ラナにコンティニューブレスが巻かれていたってことはそういうことか」グンさんは銃口を上にあげて、私の左腕にある赤いコンティニューブレスを見つめながらそう呟く。

「プレイヤーがラナだったら暴走することはないだろう」グンさんは私が状況を説明しなくても自分自身で納得してくれた。

「ラナ、後で詳しい事情を聞く。まず今はケモノの討伐に専念だ」グンさんが話す。

「そうですね。時間もかなり厳しくなってますから」私は白い肌に巻き付けられている赤いコンティニューブレスの画面を見る。残り二十七分四十一秒。

「ラナ、ケモノは何匹討伐した?遠くから銃撃音が鳴っていたから何匹かは倒してるだろ」グンさんが私に訊ねた。

「カジは二匹、私は一匹倒しました」

「そうか。己とアトラスで二匹倒した。あと七体だ」

「まだ七体……」私はそう呟いた。

「だが討伐するにしても、まずはケモノを探し出さないと……うっ」

 突如、ライフル銃が落ちる音がした。

「グンさん……⁉」私はグンさんを見やると、グンさんは膝をついて、うずくまっていた。呼吸が速く、そして浅くなっている。左手で震えている右腕を抑えている。

「隊長!やっぱり隊長も陰で休んでいたほうが……」

「己がケモノから逃げる必要はない……!」グンさんは痛みを我慢しながら包帯が巻かれた腕でライフル銃を唸りながら手に取る。

「このままだと症状がさらに……」

「ケモノは悠々と破壊し続ける……己が戦わなければ、消えていった隊員に顔向けできない……!」グンさんは片膝をつきながら立ち上がる。

 すると突然、グンさんは目を見開いた。

「あそこに二体潜んでいる」

 グンさんはそう言い、さっきまで痛みで震えていた右腕が何事もなかったかのように、地面に落ちたライフル銃を両手で取り、ライフル銃を抱えて走っていく。

「ちょっと待ってグンさん!」「隊長!どうしたのですか!」私とアトラスさんはグンさんを追う。


 グンさんが足を止めた。私とアトラスさんはグンさんに追いつき、走るのをやめた。

「あっ!」右を見るとそこには二体のヤマアラシがいた。そして反対を見ると銃戟隊の隊員が今も下敷きになっている建物の残骸があった。ヤマアラシは瓦礫を踏みつけて粉々にしながら建物の残骸、さらに私達へと進んでいる。私達とケモノとの距離は百メートル、私達と建物の残骸とは五十メートルぐらい離れている。

「このままじゃ、私達に突進してくる……!」私はそう言った。しかし私達が避けると、建物の下敷きになっている隊員が、ケモノに踏みつけられてしまう。

「撃て!」グンさんが叫ぶ。グンさんとアトラスさんは自身の持つ銃でケモノへ攻撃する。のちに私の後ろから、三人の隊員が来てグンさんやアトラスさんと同様にケモノへと追撃する。私も腰のホルダーから二丁の拳銃を手に取り、銃口を黒の生物へ向け、トリガーを引く。

 しかし二体のケモノは七丁の銃の攻撃を避けることなく、針に覆われた鎧で受けながら迷わず走ってくる。いまや五十メートルまでこっちに迫っている。

グオオオオォォォォ‼

 私達との距離が三十メートルの場所までケモノは走ってきて立ち止まり、咆哮しながら針を飛ばした。

「くそ、隠れるぞ!」「はっ!」私、グンさん、アトラスさん、三人の隊員は一度、数少ない建物の陰へ隠れた。

 ケモノが飛ばした針で、さらに瓦礫が散乱していく。

 ケモノは叫び終えると、針を飛ばすのをやめた。

「よし、攻撃再開だ!撃て!」「はっ!」私たちはケモノの行動を見計らい、物陰から飛び出し、再び攻撃を開始しようとした。

 グオオオオオオォォォォ‼

 ケモノは物陰から飛び出した私たちを待ち受けたのか、足音を大きく響かせながら突進してきた。残り二十メートル、十メートルと刻々と私達に近付いてきた……!

「危ない!」グンさんは一歩でも横へと動き、ケモノの突進から避けようとしながら、叫んだ。

 私は左へ避けようと横へ歩いた。

「あっ!」足元にあった瓦礫に躓き、私は体勢を崩した。

転んだ反動で音を立てながら二丁の拳銃を落としてしまった。

 体勢を立て直そうとするけど、ケモノが私に向かってやってくる。

 もう生きていられない。死を覚悟し、私の鼓膜はケモノの足音、呼吸音、雑音、何もかもの音をシャットアウトした。

 もう避けられない。残り七メートル、五メートル。

「みんな伏せろ!」

 どこからか声がした。その声はグンさんでもアトラスさんでも他の銃戟隊の隊員でもなかった。

 私は謎の声に従って、すぐさま地面に伏せた。

 謎の声がしたあと、私の上空に大きな影が通り過ぎた。

 ド――――――――――ン

 大きな鈍い音が辺りに響いた後、大量の砂埃が舞った。私の視界が砂埃で霧みたいに白くなって遮られる。すると次の瞬間、ケモノがいる方向で高い金属音が二回鳴った。

 私は金属音の方へ目をやると、人影が霧の中にあった。

「あなたは……?」私はまだ全貌が見えない一つの人影に問いかけた。その人影に私は見覚えがあった。

 一度、死を覚悟したあのとき、助けてもらった銀髪の大剣の人……

 大量のウリ坊から襲われたとき、私は死を覚悟した。そのときに助けてもらった。あの人だ。

 銀髪の男の人は大剣を肩に担ぎ直し、こっちへ振り返る。顔はまだ砂埃で見えない。

「みんな危ないところだったじゃねえか」男は笑いを含んだ野太い声をした。

「私を助けてくれたの?」私はあのときと同じ質問をした。

「当たり前だ。もう命が目の前で消えていくのを見たくないからな」

 私は銀髪の人の答えを聞き、【寒気】がした。

「あなたはだれなの?」

 あのときの銀髪の人とは【違う】。違和感を覚えた。根拠も証拠もないけど、そう感じた。少し時間が経つと、砂埃の霧が収まり、視界がだんだんとはっきりとなっていく。

「えっ?」一度、反対へ目を向けると、そこに隊員を圧し潰している建物の残骸が無かった。

 もしかして、私の上を通り過ぎた大きな影は、建物の残骸?

 そんな、あんなに重くて大きい建物なのに、たった一人で持ち上げられるはずがない……

「あっ!」銀髪の男の全貌が鮮明に見えた。

「まさか、あなたは……」

「お前は、カジ……いや、羅奈だな」

 なんで私が【羅奈】だって分かったの?普通なら見た目通り、カジって呼ぶのに……

 そうだ……!私のコンティニューブレスは光っている。

 だんだん視界が開けていく。

その時、違和感の正体が分かった。

あのときに助けてもらった銀髪の男と一緒だ。赤い機械を除いて。

 いまの銀髪の男は、今の私とカジの状態と一緒……!コンティニューしている。

 銀髪の男の身体に別のヒトの精神が入っている。

「あなたは、あなたは……」私は同じ言葉しか話せないぐらい頭が混乱していた。

 あなたのなかに誰がいるの?

 男の左腕に赤い機械が巻き付けられている。そう、その機械は【コンティニューブレス】。コンティニューブレスの画面が光っている。


 砂埃は完全に止み、視界がくっきりになった。男の容姿が鮮明に見える。男は瓦礫の上で、大剣を肩に担ぎ私達を見下す状態で立っている。

 男の後ろには二体のケモノが倒れていて、黒い光の粒子となって消えていっている。二体のケモノは銀髪の男によって討伐された。

「お前はだれだ」グンさんは男に話しかけた。

「これはこれは。銃戟隊の隊長さんじゃねえか」男はグンさんの顔を見て、そう言った。

「お前はだれだと言っている」グンさんは男に再び質問する。

「応援を呼ぶ笛の音、遠くまではっきりと聞こえてたぜ」

「な、なんだと?遠くまでって……」

「しかし遠くまで聞こえる笛の音を鳴らし続けても、なぜ他の銃戟隊や本部は隊長が率いるグループの応援に駆けつけないのか……わかるか?」銀髪の男はグンさんに質問した。

「まさか、お前が己たちの命を……!」グンさんは立ち上がり、銃口を銀髪の男に向ける。

「おっと、早とちりするな。オレが銃戟隊をやったわけじゃない。しかもオレはお前らの敵じゃない。味方だ。敵だとしたらケモノに殺されるところを見て見ぬふりして、心をワクワクさせるだろう。だがオレはまさにお前らを助けた。お前らを見逃すこともできた」

「敵ではないことは味方であることと違う」グンさんが銀髪の男の言葉を否定した。

「たしかにそうだな。敵でも味方でもない第三勢力がオレの可能性もあるな」銀髪の男はそう言いながら後ろを振り返った。ちょうど倒されたケモノは全ての身体が黒い粒子となって消滅した。

「だが時間がない。ケモノはあと何体いる?」銀髪の男は大剣を背中に掛け、私達に訊いた。

「北東に一体、東に二体、南に一体、南南西に一体の合計五体だ。南の一体がすぐ近くにいる」グンさんが辺りを指で差しながら見回して、銀髪の男の質問に答えた。

「まじか……隊長さんは五体のケモノを把握しているのか?」

「いや、なぜか突然ケモノの気配を感じられるようになった」グンさんは目を伏せた。

「そうか……」銀髪の男は深刻そうな顔をした。

「わかった。あとの五体はオレと羅奈に任せてくれ。銃戟隊は隊員たちの救護に回ってくれ。一人でも多くの隊員を救助してくれ」銀髪の男は瓦礫から飛び降りて、私の近くに来た。突然、私の名前が出て動揺しながらも、グンさんと銀髪の男は会話し続ける。

「……わかった。一旦お前にケモノ討伐を任せる。お前ら、救助してくれ」「はっ!」グンさんの指令にアトラスさん含め四人が威勢のいい返事をした。そして五人は建物の下敷きになっていた隊員の救助へと向かった。

「羅奈、オレは東の二体を倒してくる。いいな?」銀髪の男は私に話しかけながら、グンさんが二体のケモノがいると言った東の方向へと向かう体勢になった。

「わかりました……」私はそう返答しながら、銀髪の男の動作にどこか懐かしさを感じた。

「そうだ忘れてた。羅奈、コンティニューの残り時間は何分だ?」銀髪の男は私の方に振り返り、質問した。

「残り時間ですか?えっと……」私は腕時計を見るように左腕の赤い機械の画面を確認した。

「二十一分十秒です」私は銀髪の男の質問に答えた。

「二十一分か……残り時間七分、いや八分になったら羅奈はコンティニューを解除しろ。いいな?」

「八分になったら解除って……」私は男の言葉を繰り返した。

「それまでにケモノを全部倒せなかったら、残り物はオレが倒す」銀髪の男は背中に掛けた大剣を持ち、前のめりに駆けていく。

「ちょっと待ってください!」私は離れていく銀髪の男を呼び止めた。

「どうした?」男は立ち止って振り返る。

「あなたは、誰なの?」そう質問すると、男は一瞬、俯いた。

「……今はまだ言えない」男はそう言って、駆けていってしまった。

 私は男の素性が分からないわだかまりが残りながらも、グンさんが言っていたここから一番近い、ケモノがいる南の方向へと駆けていった。


 *


「よし、五人ちゃんといるな。銃戟隊全隊員確認。アトラス、トルツ、ノゾ、コルネ。五人を安全な場所に運び出すぞ」倒れている五人の隊員はところどころ圧し潰れており、自力では一歩も動けない状況だった。

「はっ!」アトラスと三人の隊員がグンの指令に従い、それぞれ倒れている隊員に駆け寄る。

「うあっ……」グンとアトラス以外の三人の隊員が驚きのあまり、息をのんだ。

「どうした……」グンは倒れている隊員に目を向けた。

 三人の隊員の身体は目を背けたくなるほどの凄惨な姿になっていた。しかしグンは目を背けずにゆっくりと三人の隊員に近寄る。

 三人の隊員の手足が光の粒子となって消えていく。

「キマー。ケアスヤ。サリア」グンは三人の隊員の名前を呟く。

三人の隊員は意識を失っていて、グンの叫びは三人の隊員の耳に届かない。

「もう助けられないのか……!」アトラスはむごい姿の隊員を見ながら自然と拳に力を入れた。

 グンは三人の隊員の方向へ身体を向け、片膝を地面につけ、胸に手を当てながら瞼を閉じる。

「この命たちは銃戟隊、そしてみんなのために捧げた。キマー、ケアスヤ、サリア。ありがとう」アトラス、そして残りの三人の隊員は、死にゆく隊員に弔いの感情を乗せながら自らの胸の真ん中に手を当て、黙祷する。

やるせない気持ちでグンの心はいっぱいだった。

 グンは徐々に冷たく、強くなっていく風を身体で感じながら、これまでの三人の隊員との思い出が蘇らせる。しかし消えていく三人の隊員は残された隊長や戦友に向けて、最後の言葉や表情を出す気力すら無かった。

 そして、三人の隊員の身体は全て光の粒子となって空に消えた。

「キマー、ケアスヤ、サリアは銃戟隊の一員としてケモノの討伐を全うしてくれた……そしていま、混濁した世界から救われることができた。キマー、ケアスヤ、サリアの願いが叶うまで銃戟隊は存続する」グンさんはうっすらと瞼を開き、目の前に倒れていた三人の

隊員がいなくなったことを目に焼き付けた。

 グンさんは長い息を吐き、立ち上がる。

「さあ。前に向かおう」グンさんがそう言うと、隊員たちは重く閉ざされた瞼を開けていく。

「キマー、ケアスヤ、サリア……」アトラスは消え行った三人の名前を呼んだ。


「エカトリ、イクズを運ぶぞ」グンは生き残った二人の運搬を四人に指示した。

「はっ」威勢の良かった隊員の返事も、三人を一気に失ったため、おぼろげになってしまった。

エカトリとイクズは建物の下敷きになって奇跡的に生き残ったとはいえ、意識がない状態だった。エカトリはあまり外傷が無いようで、イクズは腕が血まみれで潰れていた。さらに頭から赤い液体が流れている。

「己はエカトリを背負って隊員たちが休んでいる場所へと運ぶ」グンは地面に膝をつき、外傷があまりないエカトリの腕を掴み、肩に回す。

「コルネ、ノゾは担架を持ってイクズを運べ。アトラス、トルツは救急箱を持って、負傷した隊員を手当てしていけ。己はエカトリを運ぶ」グンは隊員に指令していく。

「はっ」四人の隊員はグンの指令に答える。

 グンは隊員の返答を確認し、エカトリを運ぼうとした。

「うっ……!」

 突然、グンは体勢を崩し、倒れ込んでしまった。

「隊長!大丈夫ですか⁉」アトラスはグンに駆け寄る。

「ううっ……」グンは突然の痛みでアトラスの質問に答えられず、呻いた。

「ここは僕がエカトリを運び込みます」トルツはグンの症状の悪化を見て、エカトリの腕を肩に回し、エカトリの身体を背負った。

「頼んだ」アトラスがトルツに呼びかけると、トルツは頷き、走っていった。

「隊長。私達が尽力するので隊長は休んでいてください」アトラスはグンの肩を組んだ。

「すまない……」グンはアトラスに付き添われながら建物の壁に寄りかかり、楽な体勢をとった。アトラスは立ち上がり、辺りを見回した。

「担架と救急箱……」アトラスが呟いた。

 元々、救急箱と担架は銃戟隊の武器と一緒に、建物の倉庫に置いてあった。しかしイノシシ型のケモノによって建物が崩壊し、また大剣の男によって建物の屋上の倉庫が破壊された。

「あそこに救急箱が……!」金属製の救急箱が、建物の瓦礫の下に紛れてあった。

アトラスは救急箱を取ろうと瓦礫を退けると、緑色をした何かが見つかった。

「担架だ……!」アトラスは緑色の棒を一気に引き抜く。

「コルネ!ノゾ!担架があったぞ!」アトラスは二人の隊員を呼んだ。二人の隊員はアトラスに駆け寄った。

「これでイクズを運んでくれ」アトラスは持っていた担架をノゾに担架を託し、救急箱を持って、傷を負った六人の元へと急いだ。

 コルネとノゾはイクズの元へと走り、担架を広げて、イクズの横に置いた。

「せーので持ち上げるぞ」コルネはそう言いながらイクズの背中を持ち、ノゾは足を持った。

「せーの」二人はイクズの身体を担架に乗せた。

「せーの」そして担架の持ち手を同時に持ち上げ、傷を負った六人の元へ急いだ。

 

隊長であるグンを含めた総勢二十二名の銃戟隊の小隊は、意識不明がエカトリとイクズの二人、腹部に深い傷を負っているナオカ、片足が重症化しているフォート、意識があるものの戦闘不能であるイラア、ラクト、ケミ、アサク、ケリヤ、リブッパの六人、合計十人が負傷者である。そして目立った怪我をしておらず、ケモノ討伐が可能な隊員がグンとアトラス、そしてトルツ、ノゾ、コルネの五人の隊員だ。十五人の隊員が一命を取り留めた。残念ながらキマー、ケアスヤ、サリアの三人は死亡し、光の粒子となって突如消えてしまった隊員が羅奈と出会う前に二人、出会った後に二人の計四人。そしてグンは症状が悪化するばかりであった。


 *


「この建物にはチュウシャキしか無かったな」セニオルとベアスト、そして僕はウェストの体育館を後にし、校舎へと続く渡り廊下に来た。

「そうですね。外が荒らされていましたから、この建物にも被害があるのかと思いました」ベアストは両手にケージを持って歩いている。

「次はこの建物ですね」ベアストが見上げたのは三階建ての校舎。

ウェストには三つの建物がある。左に体育館、真ん中と右に校舎がある。真ん中の校舎は本館、右の校舎は北校舎と体育館の入口に貼ってあった学校案内に書いてあるのを見つけた。

左の体育館と本館の間にはソテツが伸び伸びと他の樹木とは違い、一際高く育っている。

「アサヒでも体育館でなくて普通の教室で生活しているから、人がいるとしたら教室がある建物かもしれないですね」僕はセニオルとベアストに話しかけた。

「そうじゃな。しかしケモノの医者でなくても人一人いなさそうじゃが」

「そうですね」ベアストは相づちをする。

 すると突然、僕の耳にタッタッタッとだれかの足音がした。

「ちょっとヒムトくん⁉」ベアストの声に脇目もふらず、僕はだれかの足音を追った。

 だれかの足音は本館ではなく、特別な教室がある北校舎へと進んでいった。

「待て!」だれかの足音は僕の声を無視して、止まることなく僕との距離を開いていった。

 この足音は間違いなく人だ。確信がある。

 だれかの足音は本館を突き抜け、北校舎へと進んだ。僕も本館を突き抜ける。

 背中が見えた。男の子だ。男の子は北校舎に入ると二階へと続く階段を駆け上がっていった。僕が渡り廊下を半分走った時、男の子は階段の踊り場で折り返し、姿が見えなくなってしまった。しかしまだ足音は断続的に鳴っており、まだ追いつける。

「ヒムトくん!どうかしました?」僕の後ろからベアストが追っかけてくる。

「待っておくれ!」セニオルは高齢で老いているのか遅れてベアストのあとを追っている。

「男の子を見つけたんです!その子に話を聞かないと!」僕は後ろのベアストにちらちらと振り返りながら喋る。子どもは僕たちから逃げるようにどんどんと先に行く。このままでは男の子を見失ってしまう。

 僕が渡り廊下を渡り終えたあと、階段に男の子の足音が響かなくなってしまった。

「三階には行ってない」僕はそう推測した。男の子が階段を駆け上がるスピードであればまだ階段を踏む足音が鳴っているはずだ。

 僕は木製の手すりを掴みながら一段飛ばしで階段を駆け上がる。

 二階へと着き、延びている薄暗い廊下の方へと目をやった。廊下の両側に教室が並んでいる。

すると廊下には後ろを気にしながら走っている男の子がいた。廊下は僕と男の子との距離は三クラス分の間がある。

「ちょっと待って!」僕は男の子に声を掛ける。しかし男の子は走ることをやめてくれない。

 僕は再び走り出した。

 両側に教室が流れている。ノコギリやトンカチ、ボール盤がある技術室、ミシンや布がある被服室など特定の教科に特化した特別な教室が並んでいる。

 僕が廊下の半分の距離を走ると、男の子は廊下の端までたどり着き、階段がある左側へと曲がり走っていった。

「まずい……!」男の子の姿が見えなくなり、一瞬の焦りを感じた。男の子が三階に上がったのか一階に下がったのか現状分からない。

 僕は一秒でも速く男の子の姿を再び捉えなければ。

 僕は廊下の端まで走り切り、すぐさま階段へと目をやる。

「あれ……見失った……」僕は短く浅い呼吸をしながら落胆した。男の子の足音も聞こえなくなっていた。

「ヒムトくん!」後ろからベアストの声が聞こえて、僕は振り返った。ベアストは両手にケージを持ちながらこちらに走っている。

「子どもはどうしました?」ベアストが質問する。

「見失いました。でもまだ近くにいるはずです。たぶん僕がいきなり走って行ったから男の子はびっくりして逃げたんだと思います」

「そうですか……では男の子を探しましょう」ベアストはケージを床に置く。

「ヒムトくんはその子たちを見ていてください。私が探しに行きます」そう言ってベアストは三階への階段へ走っていった。

「ちょっと待っておくれんかのう……」セニオルが遅れて杖を突きながら僕に向かってくる。

「ベアストが男の子を探して三階に行きました。僕は一階に行き男の子を探してきます。セニオルさんはベアストのケモノを見ていてくれませんか?」

「お、おうわかった」セニオルが僕へとたどり着くと、僕は一階の階段へと走った。

「しかし若い者は体力があるのう……ちっとわしに分けてくれんかのう?」セニオルはそう呟いた。


 *


 モニターには大剣を持った銀髪の男が走る姿を映し出していた。暇だった俺は脱力しながらモニターの映像を眺める。男が向かう先には、二匹のケモノが寄り添い合うように十字路の真ん中に身を丸まらせていた。


「よし、ケモノ二体発見」銀髪の男はそう言って、すでに持っていた大剣を肩に担ぎながらヤマアラシのケモノへと駆けていく。大剣は左右対称で幅広い剣だ。

 グオオオオォォォォ‼

 一体のケモノは向かってくる銀髪の男を確認し、立ち上がって針を飛ばす。

「おっと。お前らは針を飛ばすんだな」銀髪の男は飛んでくる黒の針を大剣で一本ずつ払い落としながら黒の巨体に進んでいく。

 しかし、男が進めば進むほど飛んでくる黒の針の数が増え、勢いも増して迫ってくる。

「払うにはキツくなってきたな」銀髪の男は大剣を逆手に持ち変えて、大剣の側面をケモノに向け、大剣を盾にして突き進む。大剣は黒の針をはじきながら、へこむことなく銀髪の男の身体を守る。

「頭に一発、剣をいれよう」銀髪の男は呟いた。ケモノは赤い瞳で銀髪の男を捉える。

グオオオオォォォォ‼

 一体のケモノは針を飛ばすのをやめ、銀髪の男に突進する。

「来たか」銀髪の男は大剣を盾にすることをやめ、ケモノに突進する。

 銀髪の男は大剣の柄を片手から両手に持ち替え、大剣を真上に持ち上げる。

 ケモノがだんだんと近付いてくる。

 銀髪の男は黒の巨体に臆することなく、勢いを止めずに突き進む。

「……スマッシュ‼」銀髪の男は大剣を振りかぶり、ぶつかってくるヤマアラシのケモノの鼻を捉える。

 鈍い音が響く。ケモノは銀髪の男に体当たりすることなく、男の目の前で腹這いになって倒れる。黒の針が粒子状になって空へと散らばっていく。

「一体目」銀髪の男はそう言いながら、足を止めずに二体目へと刃先を向ける。

 もう一体のケモノは真っ赤な瞳を倒れたケモノに向けて、身体を固まらせているように見える。

「二体目」銀髪の男はケモノの様子を気にすることなく、ケモノの身体に刃を入れた。

 ケモノは銀髪の男の攻撃に抵抗することなく、息の根が途絶える。

 二体のケモノは黒の粒子となって消えていく。

「次は北東の一匹だ」男はそう言って北東へと走って行った。


「なぁんだ。大したことない剣士じゃねえか。面白そうだと思って見てた俺がバカだった」銀髪の剣士は、力任せで剣を振るっていて太刀筋がちゃんとしていない。

 男の行動は俺の暇つぶしにならなかった。俺は眠る姿勢になって、左手にただの無機物を握りながら目を閉じた。


 *


 セニオルは教室の中から二脚の木製の椅子を出し、二匹の小さなケモノが入ったケージを一つの椅子に乗せた。

「よっこらせ」セニオルはもう一つの椅子に座った。そしてケージの中を覗く。二匹のケモノはすやすやと眠っている。ケモノの皮膚は黒いまだら模様がまだ残っている。

「こいつらは【ハイグル病】じゃろうな……」セニオルは呟きながら杖を握っている手に力が入った。

「セニオルさーん!」

「おおっベアスト。男の子は見つかったか?」

「いえ、三階には誰もなにもありませんでした」

「そうか……」

【ウェスト】の状況を知るには、陽向人が見つけた男の子に訊くしかなさそうだった。

キュッキュッ!

突然、椅子の上に置かれたケージの中から鳴き声が響いた。

ガゴンゴトン

ケージが小刻みに椅子の上で動いている。

「どうしたんじゃ?」再びセニオルがケージの中を覗くと、ネズミのケモノがケージの内側に体当たりしていた。

キュッキュッ!

ケモノは小さいながらも耳に障るような高い鳴き声をあげながら、何度も身体をケージに打ちつける。もう一匹のケモノはケージが動いていてもまだ寝ている。

ドーン

ケモノが入ったケージが椅子の上から落ちた。運が悪いことに落ちた衝撃でケージの扉が開き、ネズミのケモノは逃げるように廊下を走っていく。

「ちょっと待って!」ベアストは小さなケモノを追って廊下を走る。ネズミのケモノは一気に廊下の端まで行き、立ち止まって高い鳴き声を懸命に響かせている。

 キュッキュキュッ!

 そのケモノはどこか一定の方向に向かって鳴いている。

「どうしたんだろ?」ベアストはネズミのケモノに追いつき、ケモノの不可解な行動に気に留めるが、ケモノの身体を手で優しくつかむ。

 キュッキュー……

 ネズミのケモノは身体を掴まれて、大人しくなった。

「なにかの症状かな?」ベアストは弱っていたケモノが、突然奇行に走ってしまったのだと予想した。ベアストはケモノを手のひらに乗せ、身体を観察するが、何も分からないままだった。

「はぁ……はぁ……。ケモノ使いはケモノをしっかり管理しなければいかんじゃろ」セニオルはそう愚痴を言いつつも、コツコツと杖を突きながらケージを持って走ってきた。

「すみませんセニオルさん。つい先走っちゃって……」ベアストはセニオルに頭を何回も下げながら謝る。そして手のひらのケモノをケージの中に戻そうとしたが、何か違和感に気付いた。

「あれ?もう1匹のケモノもいなくなってる…」ベアストはそう呟いた。

「ベアスト!セニオルさん!」ベアストとセニオルは声がした方向へ目を向けると、陽向人が一階と二階を繋ぐ階段の踊り場にいた。

「来てください!【ウェスト】の人たちが見つかりました!」陽向人は肩で息をしながら言った。陽向人の左手にはイノシシのケモノが収まっていた。どうやらもう1匹のケモノもケージが落ちたときに逃げ出したらしい。

「本当か!陽向人!」セニオルは陽向人に訊いた。

「ただ、大変なんです!」陽向人はそう言って、一階へと降りていった。

 セニオルとベアストは顔を見合わせ、ケージを持ちながら陽向人の後を追った。


 *


グアアアアアアア

 散らばったケモノの大群を倒すために私はグンさんの言う通りに南に向かっていると、突然、ケモノの鳴き声が寒空に響いた。

「そっちにいるの⁉」私はすぐさま鳴き声の方へと方向転換し、腰のホルダーにある拳銃を一丁取り出しながら、走る。

 道に転がっている瓦礫を乗り越えながらも駆けていく。

 グアアアアアアアアア

 ケモノの咆哮が続く。

 建物の陰から覗いて警戒しながらケモノの方へと進む。アスファルトの道路やコンクリートの建物の所々にケモノの針が突き刺さっている。

 グアアアアアアアアアアアアア

 泣き声がどんどん大きく聞こえてくる。ケモノに近付いている証拠だった。

「この建物の向こうにケモノがいる」いまのところケモノは針を飛ばしていないようだった。しかしもし正々堂々とケモノに立ち向かうと、針が飛んできて邪魔でまともに戦えない。さらに戦闘が長引くと瓦礫が落ちてきたり地面に針が刺さっていたりと、足場が不安定になって不利になる。

 ケモノが私に気付く前に少しでも有利な状況を作り上げないといけない。

グアアアアアアアアアアアアアアアア

 ケモノの咆哮は鳴り止まない。時間と手間がかからないケモノの倒し方を考えるが、いいアイデアが思いつかない。コンティニューブレスを見ると、残り時間十四分。

「時間がない。動きながら考えよう」私は両手で持っていた一丁の銃を構え直しながら、物陰から飛び出して銃口をケモノに向け、トリガーに指をかける。

 しかし、私は指先に力を入れず、銃を撃たなかった。

 グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

 巨体のケモノは両側を巨大な建物に、前を舗装された崖に囲まれて行き場を失くしており、後退りすることなく、私に背を向けてずっと崖に向かって鳴いている。

「なにか……変」ケモノの違和感に気付いてはいるものの、何が変なのか分からない。

 グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

 まるでヤマアラシのケモノは崖の上に呼びかけているみたいだった。ケモノの咆哮で道路や舗装された崖はひび割れていて、両側の建物が今にも倒れてきそうだった。それでもケモノは咆哮をやめない。

 グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

 ケモノが咆哮をさらに大きくして、針を飛ばし始めた。針が四方に散り、左右の建物、崖に突き刺さっていく。私は咄嗟に後退りし、身の安全を確保する。

 すると突然、ケモノの両側の建物がケモノに目がけて崩れてくる。もしも建物が落ちてきて、身体に当たったらケモノでもひとたまりもなく死んでしまう。

「危ない!」私は思わず叫んだ。

 グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

 ケモノは建物が崩れてくることに気付かず、咆哮しながら針を飛ばし続ける。

 ドーーーーーーーーーーーーーーーン

 左右の建物が崩れ落ち、ケモノの咆哮が止まった。建物から砂埃が舞い上がり、視界が無くなる。


 砂埃が止み、目を開けると建物の下敷きになったケモノが黒の粒子になって消えていく。

「なんだろ……この気持ち」私がケモノを討伐するはずが、ケモノは勝手に死滅していった。本来、時間をかけることなく倒せて喜ぶことなのに、私は素直に喜ぶことが出来なかった。

 ドゴーーーーン

 遠くで轟音が鳴り響いた。

「ケモノかもしれない。行かなきゃ」私は休む暇もなく、すぐに音がした方向へ向かった。


 *


 ドゴーーーーーーーン

 木々が並び立つ森の中を走っていると、さらに長い轟音が鳴り響いた。私は腰のホルダーから一丁の拳銃を取り出しながら轟音の元へと走った。すると、森の中に違和感を覚えた。私はその違和感におそるおそる近づいてみると、木々が倒れていて、空からの光が降り注ぐ場所があった。その場所は一か所だけでなく、道のようになっていた。

 私は木の陰に隠れながらその道を観察していると、倒れた木に黒の針が刺さっていることに気が付いた。

「もしかしてケモノが倒していったの……?」私はそう呟きながら道へと歩いた。道のところどころに折られた木の根元が残っていて、それに黒い液体が付いている。黒い液体はたぶんケモノの血だろう。私はその生々しさにめまいがした。

 周りにケモノがいないか確認しながら、静かに道の上に立ち、左を見ると道が真っ直ぐ伸びていて、アスファルトの道路が見え、ケモノの姿はなかった。右を見ると、道は緩やかにカーブしていて先が見えなくなっている。

「この先にケモノが……?」私はゆっくりとケモノが作り上げた道の上を歩く。

 なぜケモノが木々を倒していったのだろう。

 ケモノは破壊する習性があるから木々を倒していったと思えば、それはそれで納得できるかもしれない。

 でも……。

 上手く言葉にできない。

 もしも私がケモノの大群の一人だったら……。


「ケモノが本当にいた……」私はケモノを見つけ、呟いた。私は木の陰に隠れながらケモノの様子を見る。

ふと残りプレイ時間が気になり、コンティニューブレスの画面を見ると、残り時間十五分と表示されていた。しかし銀髪の男との約束で、残りのプレイ時間は七分だ。

拳銃を握っていた手に力が入る。

ケモノは倒した木々をベッドのようにして横たわりながら、息も絶え絶えになっている。ぎこちないまばたきをすると、赤い眼が潤い、雫となって液体が溢れている。ケモノの腹部からは黒い液体が流れ落ちている。

銃口をケモノへと向ける。

 視界の色が薄く見える。

腕を伸ばし、銃を構える。

ケモノの濃く黒い体毛が薄く見える。

引き金に指を引っかける。

焦げ茶色の木々も灰色っぽく見えてくる。

息を吸い、呼吸を止める。

まるで視力がだんだん失われているみたいだ。

「ケモノを倒したくない……」

 私は現実で二度もケモノを倒してきたはずなのに、倒したくないと思ってしまう。

 もう目の前のケモノは命を失いかけている。

 まだ目の前のケモノは命を取り戻している。

 刻一刻と時間は過ぎているのに、残り時間は少ないのに、いずれ消えていく命なのに。

「殺さなくちゃダメなの……?」


 ドゴーーーーーーーン。

 目の前が黒に染まった、轟音と共に。

「これで四体目。あと一体」

 そこには銀髪の男が大剣でケモノの身体を切り裂いていた。

 ケモノの身体は黒の粒子となって消滅していった。

「羅奈。ケモノ一体倒したか?」男は私の苦悩を踏みにじりながら、さらに握りつぶす。

「私は一匹倒したけど……」私の心の中がモヤモヤする中、男の質問に答えた。

「そうか。それじゃあここら辺のケモノは全て討伐したんだな」男はそう言いながら大剣を背中に収める。

「なんで殺す必要があったの?」

「なんでって……何がだ?」男は私の質問に疑問を抱く。

「なんで今にも死にそうなケモノを殺す必要があったの?」私はさっきの質問に言葉を付け足す。すると男は首を傾げる。

「……ケモノだからに決まっているだろう?」男はすぐに答えた。

「ケモノだからって、もう消えそうな命にとどめを刺していいの?」

「……ケモノは何でも破壊する危険な存在だ。このまま生かしておけば何をするか分からない」男は私の視線を逸らした。

「それに、どうせ死ぬんだったら早く殺したって何も変わらないだろう……」男はため息を吐いた。

「ケモノだって生き物だよ?一秒でも長く生き続けたいって思うでしょ……」

「じゃあ危険なケモノは野放しにしていいってことか?」男は冷ややかな目で私を見た。

「そういう訳じゃ……」男の言葉に反論ができなかった。

「もういい。ケモノ討伐は終わった。羅奈のコンティニュー時間は何分残っている?」男は大剣を持ち直して、最後の一体がいる方向へと足を向ける。私がコンティニューブレスの画面を見ると十二分二十七秒と表示されていた。

「十二分二十七秒です」私は男の質問に答えた。

「そうか。想定以上にコンティニュー時間が残って安心した」男はそう言った。

「銃戟隊を避難させろ。ここから離れた場所へ逃げるんだ」男は言葉を続けて、私へ見返り言った。

「分かりました……」私は男の言葉に渋々、承諾した。

「それと、銃戟隊の隊長には十分注意して見ていろ。オレはまだやらなきゃいけないことがある」男はそう言った。

「銃戟隊の隊長ってグンさんのこと?」私は呟いた。グンさんを注意する……?

「あの、それってどういう……」私はグンさんをどんな風に注意するのか男に質問しようとした。

「そうか……まだ羅奈はオレを信用してないみたいだな」男は私の表情や言葉から不信感を感じ取ったのか、そう言いだした。

「そりゃ急に出てきて信じてくれだなんて虫が良いな」男はそう呟いた。

 そして、男は言葉を続ける。

「オレは【もう一人の陽向人】と繋がってる」

 その時、私は思わず固まってしまった。

「これでオレを信用してくれるか?」男は私に質問しているが、私は固まってしまっている。

「とにかく時間が無い。オレはここを離れる」男は私の返答を待たずにどこかへ行ってしまった。

 私の心には色んなモヤモヤが残ったままだけど、悩んでる間に今日の残りプレイ時間がどんどん減ってしまう。

 私はコンティニューブレスを操作して、コンティニューを解除する。

 私の視界が真っ暗になって、私の精神がカジの身体から離れていく。


 私は意識が戻って、瞼を開ける。すると視界には緑髪のカジの立ち姿があった。カジは瞼を閉じていて、コンティニュー解除に気付いていない様子だった。

「カジ」私はそう叫びながらカジの元へと駆け寄った。

 カジは私の声に気付いて、目を開けて私の方へと見やった。その瞬間、私はカジの違和感に気付いた。

「ラナ!ケモノ討伐が終わったんだ」カジは私の目を見て、言った。

私は二匹しかケモノを倒せていなくて、銀髪の男が六匹のケモノを討伐したことを、カジに隠すつもりはなかったけど言い出せなかった。

「そうしよう」カジはそう肯定した。

私とカジは銃戟隊の皆さんのところへと向かおうとした。

「ちょっと待って」カジは私を呼び止める。

「討伐終了したってことは、もうリフレを呼びに行ってもいいんだよね?」カジはそう言った。

「そうだね。カジはリフレ君を呼んできてくれる?」私はそうお願いした。

「分かった。行ってくる」カジはそう言って、颯爽と私の前から消えていった。

私はコンティニュー解除したとき、カジの顔を見ると、ほっぺに涙が流れた跡があった。カジが泣いたと思ったけど、コンティニューする前にはカジのほっぺに涙が流れた跡はなかった。私はコンティニュー中に、いつの間にか泣いてしまっていたようだった。


「グンさん!」建物の壁にもたれて座っているグンさんを見つけて、私はグンさんへと駆け寄る。

「おお。ラナか」グンさんは短い呼吸をしながら、私を一目見た。

「ケモノの大群は全て討伐し終えたのか?」グンさんは私に訊いた。

「はい。ほとんど私が討伐したわけじゃないですけど……」

「そうか。あの男がやったのか。男はどうした?」グンさんはそう言って、私に訊ねた。

「あの人は、『やらなきゃいけないことがある』って言ってどこかに行ってしまいました」

「そうか」

「そういえば、あの人は『銃戟隊を避難させろ。ここから離れた場所へ逃げるんだ』って言ってました」

「何?あの男がそう言っていたのか?」グンさんが私に訊ねた。

「はい。たしかにそう言いました」私は返答した。

「その言葉はいつ言っていた?」またグンさんは私に訊ねた。

「えっと、ケモノを全部倒したとき……」私はそう答えた。

「だとすれば、己たちは【何から】逃げるんだ……?」グンさんはそう言った。

 たしかに銀髪の人はケモノが討伐完了した時に『銃戟隊を避難させろ。ここから離れた場所に逃げろ』って言ったけど、ケモノがいなくなったのに何から逃げるんだろう?

「隊長!」遠くからグンさんを呼ぶ声がした。私は声の方向へ見やると、アトラスさんが

「そうか……本部は今どうなっているんだ……」グンさんはそう呟いた。

「隊長。今は本部より隊員の手当てや回復させる方が先かと……」アトラスさんがグンさんに向けて喋る。

「分かっている。しかし今ここにある一箱の救急箱だけでは到底手に負えない」

「確かにその通りですが……」グンさんとアトラスさんは、建物の陰で傷を負った隊員がほかの隊員に手当てを受けている姿を眺める。

「本来ならば重傷を負った隊員は本部に送り、傷の回復を待つが、本部がどうなっているのか分からないのであれば、ここに留まるしかない」グンさんはそう言った。その言葉に私は反応する。

「ここから近い町に行きましょう」私は提案した。

「隊員さんがこんなに怪我をされていて、ここは寒いし、またケモノが襲ってくるか分からないし、外で休んでいても気が休まらないと思うんです。銀髪の男が【ここから逃げろ】とも言っていましたし」私は動けている隊員さんや軽傷の銃戟隊の皆さんに伝えた。

「私もラナの意見に賛成。銃戟隊は知らないかもしれないけど、町には怪我の手当ての道具がある。私もアサヒで手当てされて、元気にやれてる」カジはリフレ君を連れてきながら、私の言葉を肯定してくれた。たしかに今の町、昔の学校には保健室があって、そこに怪我を処置する道具がある。大体の怪我の処置ができる。

「ケガ人を背負うのが大変なら、私が手伝ってあげる」カジが言葉を続ける。

「ねぇ、いいでしょ?銃戟隊隊長」カジはグンさんに訊く。

「……アトラス。ここから近い町はどこだ?」グンさんは遠回しにカジの言葉を受け入れるような言葉を口に出した。

 アトラスさんはグンさんの指示に従って、ポケットに手を入れ、古びた紙を出し、地図を広げた。

「北西一キロに【ウェスト】、南東二キロに【アサヒ】があります」アトラスさんはグンさんに報告した。

「ならば己たちは【ウェスト】に行くか」グンさんはそう言った。

「……そういえば、陽向人が【ウェスト】に行くって言ってました。もしかしたら今、【ウェスト】にいるかもしれません」私はグンさんに言った。

「陽向人に連絡してみます」私はスマホを取り出して、陽向人に電話をする。

 プルプルプルガチャ。

「もしもし陽向人?」

「羅奈か」

「うん、いま陽向人ってウェストにいる?」

「そう、ウェストにいる」

「そっか。銃戟隊の何人かが大きな怪我をしていて、そっちで手当てできないかなって思って」

「うーん」陽向人は少し困った声を出した。

「いまウェストに来ない方がいい」

「え?なんで……?」

「上手く説明できないけど、ウェストは手当てができない状況で……」陽向人がそう答えてくれた。

「そっか、ごめん。またこっちで考えてみる。陽向人、無理しないで」

「羅奈も無理するなよ」

「じゃあね」そう私は言って電話を切った。


「どうだったか?」グンさんは私に訊いた。

「ダメみたいです。陽向人がウェストは手当てできない状況だって」

「そうか」グンさんはそう言って目を俯いた。

「じゃあアサヒに行くしか無い」カジがそう言った。


 *


「そっか、ごめん。またこっちで考えてみる。陽向人、無理しないで」

「羅奈も無理するなよ」

「じゃあね」羅奈との電話が終わり、僕は目の前の状況を再確認する。

 ここは理科室だ。理科室に僕とセニオル、ベアスト。そしてウェストの住民である七人が背中に深く【黒い傷】を負った老人を絶望の目で見ていた。


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