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色彩魔法 ~強化チートでのんびり家族旅行~  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第7章 冒険者たちの華麗なる日常生活

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第83話 ラチエットの提案

この章の最終話になります。

 やはり不動産業というのは信用を重んじる職業らしく、ラチエットさんもカスターネさんも、あっさり宿泊許可をもらうことが出来た。まだ若い俺たちが、そんな職業の人を連れてきたことに驚かれたが、ライムが“ラチエットおばちゃんとカスターネおばーちゃんに、一緒に来てってお願いしたの”と言うと、サムズ・アップしながら了承してもらえた。さすが俺たちの娘だ。


 お昼は時間がなかったので簡単なものですませたが、真白とコールはカスターネさんと厨房に行って晩ごはんの仕込みを始めている。ソファーに座った俺の膝にソラが腰掛け、左右にはクリムとアズルがいて、ライムは向かいに座ったラチエットさんの膝に乗せてもらって、ごきげんだ。



「あなた達の出会いって、どんな物語より刺激的ね」


「あるじさまは運命の人なんだー」


「こうしてご主人さまとお話ができる姿に生まれ変われたのは、とても幸せです」



 寄り添ってきてた二人の頭を撫でると、体の前に回していたしっぽがユラユラと揺れ、とても喜んでいることを教えてくれる。せっかくなので、そのままねこみみもモフらせてもらった。



「リュウセイたちに家族にしてもらった、色々なものを見て旅ができる、私も幸せ」


「次は王都に行く予定なのよね」


「ライムとおなじ竜人族のことを、いろんな場所できいて探してくれてるんだよ」


「この街も竜人族の目撃情報があって来たんだが、森の奥らしくて手が出せないんだ」


「私たちの職業柄、その街に住んでいる人の情報は入って来やすいのだけど、王都でもエルフ(もりびと)族は、ほんの数人しか居なかったはずよ」



 定住してるエルフに協力を仰ぐのは無理がありそうだし、やはり冒険者活動をしている人を地道に探すしかないだろうな。



「私たち花の妖精でもある程度なら案内できるんだけど、本格的に探索しようと思ったら無理があるわ」


「最悪迷って抜けられなくなっても、転移魔法で脱出はできるが、当てのない挑戦を何度もするわけにはいかないから難しいな」


「森は後回し、街で情報集める、それしかない」


「どこかを拠点にして、色々な街に出かけるのが一番確実か」


「ライム、北にある温泉もいってみたい!」



 温泉は必ず行きたい、これは最優先事項だ。

 温泉付きの家があれば、パーティーの拠点にしたいくらいだからな。



「色々な街に行くなら、やっぱり王都が一番便利ね。定期便の乗合馬車も各方面に出ているし、本数も一番多いわ」


「さすがこの国で一番大きな街だねー」


「便利なのはいいと思いますが、私たちそんな大きな街で暮らしていけるのでしょうか」


「確かにアズルの懸念もよくわかる、色々と物価も高そうだしな」


「一部の食料品は高かったり、高級品が多いからそう感じてしまう事もあるのだけど、普通の物はそうでもないのよ。むしろ流通量が多いから、他より安かったりもするわ」



 日本で住んでいた場所も地方都市だったので、都会の物価は高いなんてイメージがあったが、実際は違うみたいだ。



「宿泊費心配、ここと比べてどう?」


「安い場所から高級なところまで、選択肢はたくさんあるわね。でも、自分達の家を手に入れてしまうって方法もあるわよ」


「とーさんが言ってた、パーティーの拠点って場所?」


「そうよ、ライムちゃん。おばさんの家は、他の人に住む場所を紹介するお仕事をしてるの」


「確かに拠点はどこかに作りたいと思っていたが、ある程度の資金はあるとはいえ、さすがに王都は厳しくないか?」


「命を救ってもらったお礼もしたいし、長年不動産業を続けてきた家だから、物件も豊富に取り扱っているわ。良かったらみんなと相談して、検討してもらえないかしら」


「俺たちは自分にできることをやっただけだから、お礼とか別に構わないんだが」


「その言葉を聞いてますます何かしてあげたくなったわね、私の気持ちだから受け取ってもらえると嬉しいわ」


「リュウセイ君、自分たちの家なんてとても面白そうだわ、ぜひ話を聞いてみましょう」


「ライムもいろんなお家みてみたい」


「どんな家があるのかなー」


「今みたいに一緒に寝られる部屋は欲しいですね」


「家族の家、凄くいい響き」



 どうやら話の流れ的に、王都で拠点の候補を探してみることになりそうだ。いつかそういう場所は欲しいと思っていたが、もしかするとその時は意外に早く訪れるかもしれない……



◇◆◇



 食事の時に真白とコールにも拠点のことを相談してみたが、二人とも賛成してくれた。トーリに来てからこうした一軒家で暮らす生活を続けてきたので、それを手放したくないというのは良くわかる。


 ラチエットさんに、自分たちの希望する設備や部屋の揃った家が、どれくらいで手に入るか聞いてみたところ、手持ちの資金で何とかなりそうだったのも決め手になった。


 後片付けを終えた後、全員でリビングに移動して食休みをしているが、やはり話題は今日の料理のことだ。



「今日のスープとっても美味しかった、ライム、赤いのも白いのも好き!」


「今日のスープは、わたくしが商家で奉公させていただいていた時に、教わったものでございます」


「赤いスープは私たちの家族も全員好きだったのよ、特に夫が大好物でよく頼んでいたわ」



 野菜と肉の入った赤い色のスープは、さすがに時間をかけているだけあって、よく煮込まれていて絶品だった。大きな野菜と肉がそのままの形で入っているので、見た目のボリュームも満点の上、スープとパンの相性が素晴らしく、みんな夢中で食べていた。



「あれは特別な材料とか調味料を使ってるのか?」


「違うよお兄ちゃん、あの料理は全部この家にあるものだけで作ってるから、カスターネさんの腕がすごいんだよ」


「マシロさんも私がお教えすることが無いほど、料理の腕はお持ちですよ」


「そんなことないですよ、私がスパイス(香辛料)を使う時は足し算ですけど、カスターネさんは掛け算ですから、教わることは一杯あります」



 カスターネさんが料理補助の魔法を持っている恩恵もあるかもしれないが、それに加えて経験や知識も豊富なんだろう。この世界にあるスパイスの使い方をさらに極めれば、真白の作る料理やカレーも一段と美味しくなるな。



「私ももっと料理の腕が欲しいです」


「コールは元々器用なんだし、最近作ってくれるようになった一品料理もかなり美味しいから、焦らず続けていけば良いと思うぞ」


「リュウセイさんにそう言ってもらえるなら、じっくり頑張ってみます」



 膝の上に座っているコールの頭をそっと撫でると、嬉しそうに背中を預けてきた。そのままツノも触っていると、吐息を漏らしながら目をつぶり、じっとしたまま手の動きに身を委ねてくれる。



「様々な種族が仲良くしているのは不思議だったけど、こうしている姿を見ると納得できるわね」


「ラチエットさんも、あんまり気にしてないよねー」


「今日も私たちと手を繋いで、一緒に歩いてくださいましたし」


「なでなでも気持ちいい、とっても好き」


「家っていうのはどんな種族の人達にも必要だから、全ての人に同じように接するのが当たり前なのよ」



 目の前に座ったラチエットさんの膝にはソラが座っていて、左右にクリムとアズルが寄り添っている。優しい手付きで頭を撫でてもらっているソラは、とても気持ちよさそうだ。



「あなた達は出会ってすぐ仲良くなって打ち解ける天才ね」


「ピピー」


「ソラおねーちゃんもダンジョンに一緒に行った次の日に、パーティーに入ってもらったんだよ」


「私も会ったその日に一緒に旅をしたいって言ったものね」


「ライムもバニラとすぐ仲良くなったな」


「また会いにいこうね、とーさん」


「私とカスターネも、あなた達と出会ったばかりとは思えないわ。なんだか、ずっと一緒に暮らしてきた子供や孫みたいに感じてしまうの」


「わたくしも、こうして皆様に囲まれて幸せにございます」



 カスターネさんの膝にはライムが座り、真白はその隣で腕を抱き寄せながらくつろいでいる。今の状況は、みんなの甘え上手な部分が、遺憾なく発揮されている状態だ。ラチエットさんがそう感じているのも、こうしたスキンシップのおかげだろう。



「そうそう、あなた達は王都までどうやって行くつもりなの?」


「一度アージンまで転移を使って、そこから徒歩で向かおうかと思ってるんだ」


「みんなは船の旅とか大丈夫?」


「船、乗れるの!?」


「私の幼馴染がこの街で旅客船業をやってるの、その人に船便の手配ができないか、お願いしてみようと思ってるのよ」


「凄い、乗ってみたい」



 ソラがキラキラとした目つきで、ラチエットさんを膝の上から見上げている。俺も船旅の経験はないので、もし手配ができるなら乗ってみたい。



「船の予約って難しいと聞いてるんですが、構わないんですか?」


「実はね予約って直前で解約されたりするの、それで空きが出たところを教えてもらって利用するのは、旅に慣れた人は良く使う手なのよ」


「無理やり予約を取るんじゃなく、空いた席を優先的に回してもらおうということか」


「その通りよリュウセイさん。いつになるかわからないけど、そう遠くないうちに全員で利用できる空きは出ると思うわ」


「それでしたらお願いしてもいいですか」


「わかったわマシロさん、私に任せてちょうだい」



 (こぶし)を握りしめながら腕を直角に曲げ、その二の腕にもう片方の手を添えて気合を入れるラチエットさんは、頼れるお姉ちゃんのポーズみたいでちょっとお茶目だ。



「かーさん、お船に乗るの楽しみだね」


「お母さんもお父さんも船の旅ってしたことないから、一緒に楽しもうねライムちゃん」


「海の上ってどんな感じなのかなー」


「きっと揺れますから、落ちないように気をつけないといけません」


「船の構造、間近で見られる、色々探検する」


「はふぅ……船に乗れるなんて夢みたいです」


「船旅をする花の妖精なんて面白いわ、貴重な体験ができそうね」


「明日からいつでも出発できるように、準備を進めておかないといけないな」



 朝市で食材を買い揃えたり、作り置きを用意してヴィオレに収納してもらう計画を進めていく。そんな俺たちの姿を、ラチエットさんとカスターネさんは嬉しそうに見守っていた。


ご注文は一軒家ですか?(笑)


次回から王都を中心とした章が始まりますが、移動中もイベントが発生しますのでご期待下さい。

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後日談もよろしくお願いします!

色彩魔法あふたー
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