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第79話 果たされる約束

 晩ごはんが終わってライムの羽を拭いたり、ヴェルデがお湯浴びをする時間になったが、今日はテーブルの上でヴィオレが嬉しそうにクルクルと回っている。服や下着は身に付けていないが、ソラ特製ビキニで着飾ってテンションが上っているらしい。身長が三十センチに満たないとはいえ、ヴィオレのスタイルはかなり良いので、淡い紫色の水着姿が魅力的に映る。



「リュウセイ君どうかしら、似合ってる?」


「色もヴィオレの印象にピッタリだし、とても綺麗だよ」


「まあまあ、綺麗だなんて言われると、やっぱり照れてしまうわね、でも嬉しいわ」


「キツかったり、擦れて痛いとこ無い?」


「肌触りもよくて、少し動いてもずれたり擦れたりしないから大丈夫よ、本当にありがとうソラちゃん」


「みんなの買った水着、参考にした、裏地もちゃんと付けた」



 こうして実際に着ている姿を見ても、市販品と遜色のないクオリティーに仕上がってると思う、手先が器用な小人族の本領発揮と言った所だ。


 おかげで、これから俺の精神力も削られずに済む。小さな布で前を隠してくれるようになったとはいえ、さすがにじっと見ることは出来なかったからな。布面積はこちらのほうが遥かに小さいのに、水着という属性がつくだけで感じ方が全く異なるのは、神秘的ですらある。



「他の服なんて着るのは初めてだから、とても新鮮でいいわ」


「確かにお兄ちゃんの言う通り、ヴィオレさんって綺麗なんだよね」


「ライムの家族のなかで、いちばん大人ってかんじがする」


「水着姿だと余計に意識してしまいます」


「あらあら、そんなに言ってもらえるなら、この格好で生活してみようかしら」


「冬なのに寒くないのー?」


「私もクリムちゃんも寒いのが苦手ですから、見ているだけで震えてきそうです」



 寒いのが苦手なのは、やはり猫人族だからだろうか。確かに二人を見ていると、冬はコタツの中でぬくぬくと過ごしている姿が似合いそうではある。



「妖精は暑さや寒さを感じないから大丈夫よ、それにリュウセイ君の頭の上で過ごせば平気だしね」


「さすがにその格好で頭に登られると困るぞ」



 ヴィオレもいたずらっぽく微笑んでいるので冗談だと思うが、水着姿の妖精を頭に乗せていたら周りにどう思われるか、わかったものじゃない。



「ヴィオレさん、ヴェルデちゃん、お湯の準備ができたよ」


「ありがとう、マシロちゃん」


「ピピー」


「ヴィオレの胸大きい、腰細い、足長い、ちょっとずるい」



 手足を伸ばしてお湯に浸かるヴィオレを見ながら、ソラが小声でつぶやいているが、水着を製作する時に色々と思うところがあったんだろうか。ソラにはソラにしか無い可愛さがあるんだから、あまり気にしなくてもいいと思う。


 声をかけた方がいいか悩んだが、成長著しかった頃の真白に聞いた話だと、この手の問題はかなりデリケートらしいので、そっとしておこう。



◇◆◇



 今日はアズルが俺とライムのブラッシングを希望し、クリムはライムとソラのブラッシングで、俺の膝枕を希望してきた。ねこみみを思う存分モフらせてもらったから、かなり満足だ。



「今夜も気持ちよすぎてー、もう立ち上がれませんー」


「ライムちゃんとソラちゃんのブラッシングに、あるじさまの膝枕が加わったら最強だよー」



 二人はベッドに轟沈しているが、その姿を見たライムとソラも満足そうだ。今夜のお役目も無事終了したことだし、ブラッシングが終わった直後からコールの視線を感じるので、こちらの方から切り出してみよう。



「昼間に約束した抱っこをやってみるか?」


「はっ、はい! ……お願いします」


「ライムはかーさんに抱っこして欲しい」


「うんいいよ、おいでライムちゃん」


「クリムとアズルの膝枕、私やる」


「ありがとー、ソラちゃん」


「ソラさんの膝枕はー、温かくて大好きですー」



 それぞれがして欲しいこと、してあげたいことを仲良く分担して、思いおもいに過ごし始めた。



「それでは……失礼します」


「あまりかしこまらなくても大丈夫だぞ?」


「後ろから抱きしめられるのは、どうしても緊張してしまって……」


「肩車は割と平気だったのに、抱っこは緊張するのか?」


「こっちの方がより密着しますから」



 あぐらをかいた足の上におずおずと座ってきたコールは、かなり緊張しているみたいで体が硬い。体勢的には肩車の方が問題がありそうだが、行為に対する感じ方は人それぞれって事だろうか。



「頭を撫でても構わないか?」


「はい、どうぞっ」



 まだまだ緊張気味のコールに手を伸ばし、黒くてつややかな髪にそっと触れる。少しビクッとされたが、撫でているうちにリラックスしてきたらしく、背中をそっと預けてきた。


 男女の体格差が大きい鬼人族の女性は、日本人だと中学生くらいの身長しか無い。十八歳のコールにこんな感情を抱くのは失礼だが、両親が揃って出張に行った時に寂しがっていた妹を慰めていたことを思い出して、懐かしさと愛おしさに心が支配される。



「コールおねーちゃん気持ちよさそう」


「私も昔はよくこうしてもらってたから、コールさんの気持は凄くわかるよ」


「はふぅ……普通に撫でてもらったり、ツノを触ってもらうより安らげます」


「気に入ったんなら、やって欲しい時は遠慮なく言っていいからな」


「ふわぁ……毎日でもお願いしたいです……」


「あらあら、リュウセイ君の夜のお仕事がまた増えたわね」



 夜のお仕事って少しいかがわしい感じがするんだが、抱っことなでなでをしてるだけだぞ。真白に言わせると普通のスキンシップらしいが、世間ではそうは見えないんだろうか。もしかして、かなり(洗脳)されてしまっているのかもしれない。


 ……真白、恐ろしい子。



◇◆◇



 コールの遠慮が無くなるまで撫でたり後ろから抱きしめたり、少しやりすぎなくらいにスキンシップを続けてみた。本人も思う存分堪能できたようで良かったが、それを見ていた真白が自分にも兄の愛を分けてくれ、などと言い出した。



「年頃の男女がこうしているのは、少しおかしいんじゃないかと思い始めたんだが」


「なに言ってるのお兄ちゃん、こんな些細なことに疑問を持ってたら、その先には進めないよ」


「マシロは正しい、抱っこは正義」


「かーさんやおねーちゃんたち、すごく嬉しそうだし、ライムもみんな一緒にするほうがいい」


「リュウセイさん、私も悔い改めました、抱っこは至高です」


「あるじさまは難しく考えすぎだよー」


「クリムちゃんは考えが無さ過ぎですけどね」


「もー、アズルちゃんは、すぐそうやって私のこといじめるんだからー」


「でも抱っこに関しては、クリムちゃんの意見に賛成です」


「やっぱりアズルちゃんは私の味方だー」


「俺の味方はいないのか?」


「「「「「「「「・・・・・」」」」」」」」



 ライムたちはおろか、ヴェルデとヴィオレまで黙ってしまった、どうもここには俺の味方はいないらしい。



「ちなみに真白、その先とやらには何が待ってるか説明してくれ」


「それはここでは言えないよ」


「どういう事なんだ?」


「だって、みんなに言っちゃうと背徳感とか、秘め事感が無くなっちゃうもん」


「……真白」


「や、やだなーお兄ちゃん、そんな“お前は自分で何を言ってるのかわかってるのか? 俺に一体何をやらせるつもりなんだ”って言いたげな顔をしないでよ」


「……………」



 くっ……

 ズバリ当たってるだけに何も言えない。



「マシロさんが、どうやってリュウセイさんの表情を見分けているのか、私にはさっぱりわかりません」


「あるじさまとマシロちゃんって、結婚してる人たちより夫婦っぽいよねー」


「ご主人さまとの絆がどれだけ深くなっても、マシロさんには勝てる気がしません」


「マシロは物語に出る最後の敵(ラスボス)、倒さないと先に進めない」


「とーさんとかーさんは強敵だね!」


「本当にあなた達は見ていると面白いわ」


「ピッ!」



 どこまで本気なのかはわからないが、真白が俺に何を求めているのかは大体わかる。だが、俺は今のこういった距離感が、とても心地よい。そんな俺の顔を見て、真白がいつもの安心できる笑顔を浮かべてくれる。



「私はこのパーティー(家族)が好きなんだ。お兄ちゃんと娘のライムちゃん、それにコールさんやヴェルデちゃんにクリムちゃんとアズルちゃん、それにソラちゃんやヴィオレさんとずっとずーっと楽しく暮らしていきたいの。それが私の夢なんだよ」


「かーさんは今といっしょがいいの?」


「だから今とっても幸せなんだ、ライムちゃん」


「俺の考えてたことを全て言われてしまったから、もう怒る気も無くなったよ」


「でもね、お兄ちゃん、家族はもっと増やしても大丈夫だからね!」



 最後で台無しじゃないか……


 とはいっても、異世界でこんな家族に出会えたのは、運命のようなものを感じる。この先パーティーが大きくなる時も、そうした縁にひかれた人が来るなら、まだまだ増えてもいいと思う。


最後に出てくるやり取りは、有名なアニメ映画のワンシーンから拝借させていただきましたが、オチは全く違いますのでご安心下さい(笑)


次回からまた物語が大きく動き出します。

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後日談もよろしくお願いします!

色彩魔法あふたー
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