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色彩魔法 ~強化チートでのんびり家族旅行~  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第7章 冒険者たちの華麗なる日常生活

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第78話 同化魔法の実力

 ライムが病み上がりなので、今日は一日のんびり家で過ごそうと思っていたが、お昼を食べた後に散歩に出かけることにした。体調はいつも以上に良いみたいで、食事の量も増えているし、体を動かしたくてたまらないようだ。


 普通の人は落ち着いて体を休めるか寝たりしないと回復しないマナだが、ライムは普通に過ごしているだけで回復する。その速度も以前より速くなっているらしく、お昼を食べる頃には竜魔法を使う前の量に戻ってしまっていた。


 竜魔法は予想通り色彩強化できなかったが、少し体験しただけでも秘められたポテンシャルはわかる。誰もいない広い場所で、思う存分体を動かしてみるのは、俺も楽しみだったりする。



「ライムとリュウセイ、前より仲良くなった、ちょっと羨ましい」


「ソラも何かして欲しいことがあったら、遠慮なく言っても構わないぞ」


「抱っこで寝てみたい、ライム気持ち良さそうだった」


「ベッドで寝る時はライムが登ってきてしまうから、昼寝したい時に膝に座って休むのはどうだ?」


「うん、それがいい、楽しみ」



 抱きかかえながら歩いていたソラが、嬉しそうな顔になってギュッと抱きついてくる。かく言うソラも、一緒に行動するようになってから、どんどん甘え上手になっている。


 ライムやソラにこうされていると俺自身も癒されるので、できる範囲ならどんなことでも叶えてやりたい。



「コールおねーちゃんも、とーさんに抱っこして欲しい?」


「えっ!? どうしてそんなこと言い出すんですか?」


「とーさんのことじっと見てたし、前もすごく嬉しそうだったから」


「前って……私はリュウセイさんに抱っこされたことって、無かったと思うんですが」


「……あっ! とーさんと内緒って約束したんだった、ごめんなさい」



 コールに抱っこされたライムが、つい二人が酔っ払ったときのことを話してしまった。いきなり服を脱ごうとした部分が伝わっていないので問題ないだろう、それでもコールは恥ずかしがるかもしれないが……



「あの時は二人とも酔っていたし、余計なことを言って混乱させたくなかっただけだから、もう言っても構わないよ、ライム」


「つまり私がリュウセイさんに抱っこされたのは、本当なんですね」


「コールおねーちゃんは、ツノも撫でてもらってたよ」


「リュウセイさんに抱きしめられながらツノを……はぅっ!」



 何を想像したのかコールの顔がボンッと赤く染まり、そのまま下を向いてしまった。その頭をライムがそっと撫でている。



「もしかして私もお兄ちゃんに抱っこされた?」


「もちろん真白も抱っこして、(あご)の下を撫でたりしたぞ」


「……っ! なんでその時意識がなかったのかなぁ、こんな貴重な体験を覚えてないなんて、私のバカバカ おたんこなす!」


「そこまで悔しがることなのか?」


「当然だよっ! それよりお兄ちゃん!!」


「どうしたんだ、大きな声を出して」


「私はやり直しを要求するっ!!!」



 真白が“異議あり!”とでも言いたげに、ビシッと人差し指を突きつけてきた。覚えていなかった事がよほど残念だったのか、普段なら絶対にやらないような行為に及んでくる姿は、少し鬼気迫るものがある。



「抱っこくらいならいつでもやるから、人を指差すような行儀の悪いことはやめるんだ」


「あっ、うん、ごめんなさいお兄ちゃん、つい興奮しちゃって……」


「コールもそんなに恥ずかしがらなくてもいいから、して欲しい時はいつでも抱っこするからな」


「あぅっ……で、では、今夜お願いします」



 コールはライムに頭を撫でられながら、小さな声でお願いしてきた。俺より少しだけ歳上なので恥ずかしいのかもしれないが、一緒のベッドで寝ているんだし割と今更な気もする。



「あるじさまに初めて会った時に、抱っこして眠らせてもらったけど、すごく気持ち良かったからねー」


「私も大怪我した時に、ご主人さまにああして抱っこしてもらわなかったら、思い出して泣いていたかもしれません」


「あらあら、リュウセイ君の膝は争奪戦になりそうね」


「ヴィオレずっとリュウセイの頭の上にいる、だから参加できない」


「その代わり、ここは私とヴェルデちゃんで独占よ」


「ピピッ!」



 ソラとヴィオレの二人が楽しそうに、誰が抱っこの権利を真っ先に獲得するか話し合っている。今まで揉めたことはないし、自然な流れでみんなが満足できるような割り振りに決まるだろう。寝る時の並び順がいつもそうだから、その点は心配していない。



◇◆◇



 海に突き出た岬を大きく回り込んで反対側まで来てみたが、そこは小さな湾のようになっていた。砂浜も遠浅で泳ぐのにもいい場所かもしれない、海水浴の候補地として覚えておこう。



「こっちの方は来たことなかったけど、人も居ないしいい場所だね」


「岬を越えるのにかなり歩くことになるが、泳ぐのにもいい場所だな」


「夏になるのが楽しみだね、コールおねーちゃん」


「水着を着るなんて初めてですけど、頑張ります」


「みんなで泳ぐのも競争しようねー」


「泳ぎ方は教えて下さいね、ご主人さま」


「泳ぎなら任せてくれ、伊達に何年も続けてないからな」


「私、砂浜でのんびりしたい」


「砂を使って、お城とか動物を作るのも面白いよ」


「面白そう、マシロそれ教えて」


「ライムもやってみたい!」



 南の方に来ているとはいえ、今の時期にここで長時間遊ぶのは少し辛い。とりあえず当初の目的だった、ライムの魔法でどれだけ動けるか、コールとクリムとアズルの三人に協力してもらいながら検証しよう。



「ここなら誰かに見られる心配はないし、そろそろ始めようか」


「やったー、がんばろうね、とーさん」


「ここなら思いっきり動けますね」


「足場も悪いからいい鍛錬になるよー」


「投げたり転ばされたりしても安全ですから、ご主人さまも思いっきりやって下さい」


「怪我をしたら私に言ってね、すぐ治すから」


「しっかり見てる、何かわかったら教える」


「危なそうだから、私も離れることにするわ」



 ヴェルデとクリムとアズルに二倍の強化魔法をかけ、ライムと手を繋いで同化する。光の帯になったライムが肩車の状態になると、また俺の感じている世界が変わった。



『まずは向こうの端まで全力で走ってみるよ』

『よーい、どん!』



 ライムの号令で強く足を踏み出すと、柔らかい砂地にも関わらず一気にスピードが上がる。周りの景色が車に乗った時のように流れていき、一斉に走り出した三人との距離がどんどん開いていくのを、後ろを振り向かなくても感じられる。



『とーさん、すごく気持ちいい』

『ここまで速いと、空気を切り裂きながら走ってるみたいだな』



 肩に乗ったライムは体の一部のようになっているので、どれだけ体を激しく動かしても落ちる心配がない。それにライムにも、俺の体を自分で動かしている感覚が得られるらしい。体格が全く違うので、成長した大人の体を動かす感覚というのが、とても楽しいようだ。



『みんなの所に戻って、今度は模擬戦をやってみようか』

『うん、おねーちゃんたちと一緒に体を動かしたい』



 砂浜の端で反転して元の場所へ向かって走っていくと、ちょうど中間くらいで三人と合流できた。



「リュウセイさん、その身体能力はデタラメすぎますよ」


「大人の竜人族って、全員それくらいの力があるのかなー」


「まさかここまで差ができるとは思っていませんでした」


『この体だと砂地を走ってるという感じがないから、ちゃんとした地面の上だともっと差は縮まるかもしれないが、俺もこれだけ違いが出たのには驚いたよ』

『とーさんと二人なら、おねーちゃんたちにも負けなかったね』


「次は戻って模擬戦だよー」


「今度こそ頑張ります!」


「あの、本当に三対一でいいんでしょうか?」


『どれくらい感覚が鋭くなってるか確かめるためだから、少し無茶なくらいがいいと思うんだ』

『かーさんもいるから、思いっきりやってもいいよ』



 四人で速度を合わせながら元の場所に戻り、中心に俺を置いて三方に別れる。前にいるのがクリムで、斜め後ろにはアズルとコールがいる。死角から二人に攻撃されることになるが、見えないことへの不安は全く無い。



『それじゃぁ、遠慮なくかかってきてくれ』

『いつでもいいよ!』


「はい」「いくよー」「行きますっ!」



 こうして立っているだけで、コールとクリムとアズルが気合を入れて構えたのがわかる。三人同時にジリジリと間合いを詰めてくるが、まず動いたのはコールだ。


 斜め後ろからこちらの間合いに飛び込んで、腰めがけて腕を打ち当てようとする。ヴェルデの補助効果が乗った力とスピードで打ち込み、こちらの体勢を崩すつもりみたいだ。俺は体をずらして紙一重で避けると、空を切った腕を軽く払って背後を取り、その背中を少しだけ押した。


 コールは急に自分の方向を変えられ、背中を押された勢いのまま砂の上でたたらを踏んで、ぺたんと座り込んでしまった。


 攻撃が不発だったとはいえ、コールが作ったスキをクリムとアズルが見逃すはずはない。さすがに双子だけあってアズルが足払いを仕掛け、クリムは死角に回り込んでパンチを、同じタイミングで繰り出してくる。小さなジャンプで足払いを(かわ)したが、後ろからアズルの(こぶし)が迫ってくる。


 そのまま体を折り曲げてパンチを躱し、空振りして突き出された腕を取って、背負投げの要領でクリムの体を前方に放り投げた。身軽なクリムなら大丈夫だろうという判断だったが、空中でくるりと回転してきれいに着地を決めた。両手をシュタッと上に伸ばしている辺り、十点満点だな。


 しかしこれで終りではない、ビブラさんの教えを受けているアズルは、攻撃が失敗した後も次の動作を開始していた。体を半回転して立ち上がると、その勢いのまま腰めがけて回し蹴りを繰り出していた。横に飛んで避けてもいいが、身体能力と思考速度が上がった状態でついつい悪戯心(いたずらごころ)が出てしまい、そのままアズルの方に踏み込んだ。


 回し蹴りは軸に近い部分だとほとんど威力がないので、当たった衝撃はわずかなものだ。驚いた顔をして体勢を崩すアズルの腰に手を回して、そのまま倒れないように抱きしめる。



「ごっ、ご主人さま、戦闘中にこれは反則です」


『しかし、あのままだと倒れていたぞ?』

『倒れたら痛いよ?』


「あー、アズルちゃんだけずるいー、私も抱きしめてほしいよ、あるじさまー」


「私の時は支えてくれなかったのに、リュウセイさん酷いです」



 つい出来心でやらかしたのでクリムとコールが拗ねてしまった、今夜のブラッシングと抱っこで許してもらおう。



◇◆◇



 真白にマナの残量を確認してもらいながら、もう一度模擬戦をやってみたが、やはり俺の圧勝だった。人型種族の頂点に立つという竜人族の強さを、全員が身を以て思い知った。


 本来なら、ただの人族である俺がこの動きをすれば、骨や関節にダメージを受けたり、筋肉が断裂してしまうだろう。そうならないのはライムの力で俺の体が守られているから、それがソラの推測だった。言うなれば同化の状態は、竜人族のパワードスーツを着て動いているといった感じか。


 こんな規格外の力を使うようなことは無い方が良いが、家族を守る力を得たというのはとても大きな意義がある。それに二つの力が一つになるのは何か意味がある、そんな気がする。


真白は某有名RPGをプレイしていた模様(笑)

(もしくは兄のプレイを見ていたか……)

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後日談もよろしくお願いします!

色彩魔法あふたー
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