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色彩魔法 ~強化チートでのんびり家族旅行~  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第4章 新たな冒険者活動の始まり

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第46話 クリムとアズル

 ヴェルデに左手の甲をつつかれ魔法一覧を表示してみると、“色彩強化”が“色彩強化×2”に変化していた。単純に考えて、これは効果が二倍になったんだろう。



「お兄ちゃん、何かわかった?」


「俺の強化魔法の効果が上がったみたいだ」


「それって、治癒の力も強くなるんですか?」


「恐らくその可能性は高い」


「お兄ちゃん、私にかけてみて」



 アズルは何を話しているのかわからないようで唖然とこちらを見ているし、クリムは一度体験しているが説明無しで使っているので、同じように会話の内容は理解できないみたいだ。



カラー(色彩)ブースト(強化)



 魔法を表示してくれた真白の左手を取って呪文を唱えてみるが、そこに表示されたのは[治癒+浄化]のままだ。



「変わらないね」


「もしかすると、新しい呪文が必要なのかもしれない」



 効果が二段階あったとして、常に最上位が適用されるというのは使い勝手が悪すぎる。きっと効果を選択できるように、別の呪文が必要になるんだろう。



ダブル(2倍)カラー(色彩)ブースト(強化)



 思いついた新しい呪文を真白に唱えてみると、そこに書かれていた魔法が[治癒+浄化+再生]に変化する。文字通りこれは再生魔法なんだろう。体の失った部分を元に戻す霊薬があるなら、魔法でそれを再現しても世界の(ことわり)から逸脱はしないはずだ。



「真白、これならいけるかもしれない」


「うん! きっと大丈夫だよ」


「あの、先程から何のお話をしてるんでしょうか?」


「私にも使ってくれた強くなる魔法の話?」


「そうだよ、お兄ちゃんが強くしてくれた私の魔法で、アズルちゃんの足を元に戻せるかもしれない」


「ホントですか!?」「ホントなの!?」


「魔法を使ってみてもいいかな?」


「はい、お願いします」



 真白はアズルの左足に手を添えると、一度深呼吸してから呪文を唱える。



リジェネレーション( 再 生 )



 より明確なイメージを想起するためや、若い頃に考えた呪文が恥ずかしかったりする人は、新しいものを使ったりするが、真白もそれに(なら)って別の呪文にしたようだ。


 今までのヒールだと傷の塞がる様子がはっきりと見えたが、再生魔法の場合は失った足の部分がその形に光りだす。欠損部分を元に戻すというのはかなりのマナを消費するようで、ずっと集中しながら治療を続けている真白の額にも汗が滲んできた。


 そうしてしばらく続けていたが、白い光に包まれていた部分が徐々に見えてくると、そこにはきれいな素足が蘇っていた。



「……うそっ………これって夢じゃないよね?」


「アズルちゃん、足がもとに戻ってるよ!」


「ちゃんと動く?」


「違和感とか無いか?」



 真白と俺の言葉で指を曲げたり足首を動かしているが、見た目に異常はないみたいだ。そのままクリムに支えられながら起き上がると、ペタペタと寝ていた毛布を踏んでみたり、片足で立ってみたいする。



「今までと同じです、何の違和感もありません」


「わぁーーーん、よかったよぉーアズルちゃぁーーーん!」


「心配かけてごめんねクリムちゃん」


「アズルちゃんが元気になってくれたから、そんなのどうでもいいよー」



 アズルとクリムはお互いに抱き合って涙を流している、俺も真白を抱きしめながら頭を撫でてねぎらいの言葉をかける。ヴェルデは俺の頭の上で機嫌良さそうに鳴き声を上げ、コールも近くに寄ってきて真白の背中を撫でてくれた。



「真白、マナは大丈夫か?」


「さすがに再生魔法はかなりマナを使うみたい、私の元の量でもギリギリかな」


「こんな奇跡のような魔法ですから、仕方ないですよね」


「頻繁に使う魔法じゃないが、よく考えて行使しないと肝心な時に使えないなんて事態になりかねないな」


「あ……あの、ありがとうございました、このご恩は必ずお返しします」


「本当にありがとー」


「クリムちゃん、言葉づかい」


「だってー、本当に嬉しいんだもんー」


「お礼なんていいよ、私は出来ることをやっただけだし、それにこれはみんなの力だからね」


「村の人たちも来てくれたみたいだから、とりあえず俺たちも移動しよう。アズルは靴が無くなってしまったから歩きづらいだろうし、良ければ俺が運ぼうか?」


「えっと……お願いしてもいいですか」



 少し恥ずかしそうに上目遣いで見てくるアズルのしっぽがユラユラと揺れている。犬人族の子供は嬉しいと左右に勢いよく揺れていたが、猫人族の場合はどういった感情表現なんだろう。


 コールより少し背の高いアズルをお姫様抱っこしてみたが、体重も軽くそれほど苦にならない。俺の胸に手を当てて心臓の鼓動を感じてるんだろうか、じっと目を閉じて大人しくしている。



「アズルちゃんいいなぁー、お兄ちゃんにお姫様抱っこしてもらうなんて羨ましいよ」


「真白は寝る前に抱っこするから我慢してくれ」


「やったー、もういくらでも我慢しちゃうよ」


「私も頭とツノを撫でてほしいです」


「今日はコールのおかげで随分助かってるし、どんなお願いでも聞くから遠慮なく言ってくれ」


「えへへ、嬉しいな」


「ピピー!」


「ヴェルデもたっぷりお湯浴びしような」


「ピーッ!!」


「私も頭なでてもらってもいいー?」


「もちろん構わないぞ、クリム」


「やったー」


「こうしていると何だか懐かしい気持ちになって落ち着きます、眠くなってきそう」


「疲れたなら寝てて構わないからな」


「……はい」



 本当に眠かったらしく、すぐに俺の腕の中で寝息を立て始めた。起こさないようにそっと運びながら、住人の避難と家畜の保護を優先してもらっていた村の若い男性たちと合流し、魔物討伐の説明をした。村の恩人だとか救世主だと言われたクリムは、少し恥ずかしそうにしている。



◇◆◇



「とーさん、かーさん、コールおねーちゃん、ヴェルデちゃん、みんな大丈夫だった?」


「ただいまライム、魔物はそこに立っているクリムが倒してくれたよ」


「お耳としっぽのあるおねーちゃんだ、とーさんが抱っこしてるのはだれ?」


「この子はアズルといって、怪我をして母さんに治療してもらった後に疲れて寝てるんだ」


「クリムおねーちゃんとアズルおねーちゃんだね。ライムっていいます、よろしくお願いします」


「うわー、すごく可愛い子だねー。私はクリムっていうんだ、よろしくねー」



 村の人たちが避難しているという場所まで連れてきたもらうと、ライムが真っ先に出迎えてくれた。クリムと挨拶を終えた後に真白に抱っこされて甘えまくってるので、離ればなれの状態で魔物と戦っていたのが不安だったんだろう。


 ひとまずアズルをちゃんとした場所で寝かせたいので、村長さんに挨拶をして空き家まで案内してもらった。村長も避難していた村の人もとても喜んでくれていたが、俺の腕の中で眠っているアズルに気を使って程々で開放してくれたのは助かった。



◇◆◇



「このままだと水を汲みに行けないね」


「そうだな、どうしたものか」


「おねーちゃんたちも、いっしょのパーティーになる?」


「この二人はまだ冒険者登録してないし、出会ったばかりであまり話もしていないから、まずは目をさましてもらわないとわからないな」


「もうリュウセイさんから離れないような気がします」


「どうしていきなり懐かれたのか、思い当たるフシがないんだが」


「お兄ちゃんだから仕方がないよ」



 案内された家に入ってアズルを床に寝かせようとしたが、すぐ起き出してきて俺に抱きついて眠り始めた。クリムもそれに触発されたのか一緒になって寝始めたので、俺は胡座(あぐら)をかいた膝の上に二人の女の子を乗せて抱きしめるように支えている状態だ。



「クリムさんもここが落ち着くと言ってましたね」


「ライムとおんなじだね」


「この二人とは初対面のはずだし、ますます謎だな」


「……私とクリムちゃんは、昔から同じ夢をみるんです」


「ずっとずっと小さかった頃の夢なのー」



 いつの間に起きてきたのか、アズルとクリムがこちらを見上げ、俺の胸に耳を当てるような格好で話し始めた。



「私たち二人は小さい頃に捨てられたみたいなんです」


「お腹が空いて喉が渇いて、お母さんのおっぱいが飲みたくて、水の音がする方に行ったんだー」


「本能的に乾きを癒せるものがあるとわかって近づいていったんですが、そこは大きな段差になっていました」


「そのまま二人で下に落ちちゃって、途中にあった出っ張りに必死にしがみついたんだよー」



 そのシチュエーションには明確な覚えがある、俺の中にある予感が湧いてくるが、真白もこちらを見て何か訴えるような顔になっている。



「でもどんどん力が入らなくなって、目の前が霞んでもうだめだって思ったんです」


「その時、上から大きな人が覗き込んで“いま助けてやる”って言ってくれたんだー」


「そしてクリムちゃんを持ち上げて隣りにいた女の人に渡した後に、私も助けられました」


「私も一緒に抱いてもらったんだけど、気持ちよくて安心して寝ちゃったんだよねー」



 それで予感が確信に変わった、真白も驚いた顔をして瞳を少し潤ませている。ずっと心配していたから、こうして再会できたのが嬉しいんだろう。その気持ちは俺も同じだ。



「クリムとアズルはあの時川に落ちそうになってた仔猫だったのか」


「お二人に救われたのは、これで二回目ですね」


「こうして眠らせてもらったのは、あの時と同じだねー」


「お兄ちゃん良かったね」


「あぁ、一緒にこの世界に来てるかもしれないと思って探していたんだ、まさかこんな形で再会するとは思ってなかったよ」


「でも、こうしてお話できるからとっても嬉しいよ」



 どうして仔猫だった二人が、猫人族としてこの世界に飛ばされてきたのかはわからないが、とにかくこうして再び巡り会えたことは嬉しい。二人を抱きしめながら頭を撫でると、嬉しそうに顔を擦り寄せてくれる。


 いきなり懐かれてしまったのも、この場所が落ち着くと言われたのも全て解明した。それがわかった以上、この二人とはこれからも一緒にいたいと強く思った。


勘のいい読者の方は予想通りだったかもしれませんが、異世界転移者と異世界転生者が邂逅しました。

二人のプロフィールの追加は、49話更新後までお待ち下さい(魔法やら何やらの都合が…)

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後日談もよろしくお願いします!

色彩魔法あふたー
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